古代,中世の官司・官人の一つ。(1)奈良・平安時代に,ある事柄を担当する官司,あるいは官人の意味で用いられた言葉。《令集解(りようのしゆうげ)》賦役令・車牛人力条の〈古記〉は〈事に関わるの司,これを所司というのみ〉と説明する。特定の官司の官人を指した用語ではない。(2)寺院の寺官である三綱(さんごう)(上座(じようざ),寺主(じしゆ),都維那(ついな))のこと。三綱の下に組織された専当(せんとう),中綱(ちゆうごう)などを下所司という。(3)鎌倉幕府の侍所(さむらいどころ)や小侍所の次官のこと。源頼朝によって侍所の長官である別当に和田義盛,所司に梶原景時が任命されたのが始まり。のち別当職は執権北条氏が兼帯し,所司には北条氏の家人である御内人(みうちびと)が任ぜられた。小侍所の所司も小侍所別当の家人が任ぜられた。(4)室町幕府の侍所の長官である頭人(とうにん)のこと。所司の下には代官である所司代,小所司代などが組織された。(5)安土桃山~江戸時代における京都所司代。禁中および京都の警衛,朝廷との折衝などの重要な権限をもっていた。
執筆者:稲葉 伸道
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一般には官庁の役人の呼称。鎌倉幕府では侍所(さむらいどころ)・小侍所の副官の職名。初代侍所所司は源頼朝の側近の有力御家人梶原景時。北条氏が侍所別当を独占するようになると,北条氏得宗家の被官が所司に就任,鎌倉後期には得宗家の家令長崎氏がほぼ世襲した。小侍所も別当は北条氏が独占,所司はその被官が勤めた。室町幕府では侍所に別当はおかれず,長官が所司とも頭人ともよばれた。小侍所では別当・所司の呼称はなくなり,長官はたんに小侍所といわれた。寺院では上座(じょうざ)・寺主(じしゅ)・都維那(ついな)の三綱(さんごう)を所司と称した。
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…寺内の僧尼を統轄し,庶務を処理する僧職。上座(じようざ),寺主(じしゆ∥てらじゆ),都維那(つゆいな∥ついな)(維那)の3者で,所司ともいう。すでにインドや中国南北朝で寺院の統轄者として,上座または寺主,もしくは都維那が置かれた。…
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[中世]
幕府侍所頭人(所司)の代官。所司代は鎌倉時代には知られていないが,南北朝期になると1343年(興国4∥康永2)に都筑(つづき)入道(頭人細川顕氏),1363年(正平18∥貞治2)に若宮左衛門尉(頭人京極高秀)などの名がみえ,侍所の命をうけて洛中の謀叛人や放火殺害人の追捕に当たっている。…
※「所司」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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