振る(読み)フル

デジタル大辞泉 「振る」の意味・読み・例文・類語

ふ・る【振る】

[動ラ五(四)]
からだの一部を、また物の一方の端をもって上下・左右・前後に何度も繰り返すようにして動かす。「ハンカチを―・る」「腕を―・って歩く」「犬がしっぽを―・る」
手を動かして握ったものを下方に投げる。また、勢いをつけて振りまく。「さいころを―・る」「塩を―・る」
割り当てる。仕事や役割を与える。「大役を―・られる」
文字のわきに記号・読みがななどをつける。「ルビを―・る」
相手の求めを退ける。はねつけて相手にしない。「女に―・られる」
得た地位・立場などをあっさり捨てる。また、しようとする意志を捨てる。むだにする。「重役の地位を―・る」「一生を棒に―・る」
動かして方向を少しずらせる。進む向きをある方向に変える。「舵を右に―・る」
勢いよく担ぎ動かす。「みこしを―・る」
本題に入るきっかけとして話す。話を導き出そうとする。「落語家まくらを―・る」「司会者が話題を―・る」
10 為替・手形などを発行する。「為替を―・る」
11 神体を移す。
三笠山に―・り奉りて、春日明神と名づけ奉りて」〈大鏡・道長上〉
12 入れかえる。置きかえる。
「行く春は行く歳にも―・るべしといへり」〈去来抄・先師評〉
[可能]ふれる
[下接句]命を棒に振る尾を振る大手おおでを振る・顔を振る・かしらを縦に振るかしらを横に振るかぶりを振る首を縦に振る首を横に振る采配さいはいを振る先棒を振る尻尾しっぽを振る身代を棒に振る無いそでは振られぬ棒に振る脇目わきめも振らず
[類語]振るう

ぶ・る【振る】

[動ラ五(四)]接尾語が独立の動詞として用いられるようになったもの》えらそうに見せる。もったいぶる。気どる。「―・った態度」「―・って言うのじゃないが」
[接尾]《動詞五(四)段型活用》名詞や形容詞語幹などに付いて、そのようにふるまう、それらしいようすをする、などの意を表す。「学者―・る」「先輩―・る」「えら―・る」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「振る」の意味・読み・例文・類語

ふ・る【振】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「ふる(震)」と同語源 )
  2. 物の一端を持って何度も往復するようにはやく動かし、他の一端をゆり動かす。ふるう。
    1. [初出の実例]「韓国の 城の上に立たし 大葉子は 領布(ひれ)甫羅(フラ)す見ゆ 難波へ向きて」(出典:日本書紀(720)欽明二三年七月・歌謡)
  3. 全体を、前後または左右に数回すばやく動かす。
    1. [初出の実例]「さすがにあなかま、あなかまと、ただ手をかき、面をふり、そこらの人のあぎとふやうにすれば」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  4. まき散らす。散布する。散らしかける。
    1. [初出の実例]「魚鳥ともに、無塩を切、塩をふり」(出典:庖丁聞書(室町末か))
  5. 配り当てる。配当する。分担させる。当てる。つける。割りつける。配分する。
    1. [初出の実例]「火きりとて、〈略〉人々の奏するを、前左衛門佐基俊君のもとへふるとて」(出典:顕輔集(1155頃))
    2. 「傍にちゃんとデルと仮名が振(フ)ってある」(出典:三四郎(1908)〈夏目漱石〉六)
  6. 神霊を移す。遷座する。
    1. [初出の実例]「鹿島遠しとて、大和国三笠山にふり奉りて、春日明神と名づけ奉りて」(出典:大鏡(12C前)五)
  7. みこしを勢いよくかつぎ動かす。神輿・神宝などを荒々しくかつぐ。
    1. [初出の実例]「奉神輿」(出典:禁秘鈔(1221)下)
  8. ( のような動作をするところから ) 嫌って相手にしないようにする。すげなくする。特に男女の間で、冷淡にする。遊女が客の意に従わない。
    1. [初出の実例]「いかで、さつれなくうちふりてありしならん」(出典:枕草子(10C終)八六)
    2. 「我江戸にてはじめの高雄に三十五までふられ、其後も首尾せず、今おもへば惜ひ事哉」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)三)
  9. 失う。捨てる。また、勝負などで、初めから勝とうとする意欲を捨てる。
    1. [初出の実例]「今日の相撲を、振ってやらざなるまいわいの」(出典:浄瑠璃・関取千両幟(1767)二)
  10. 勇みたたす。ふるいたたす。はげます。→ふりおこす
  11. 入れかえる。置きかえる。交換する。ふり換える。
    1. [初出の実例]「おなじ事に侍れば、一句ふりたりとおぼえ侍と申き」(出典:俳諧・梟日記(1698)七月一二日)
  12. 動かして方向を少しずらせる。一方にかたよらせる。基準の状態から左右どちらかに位置を変える。
    1. [初出の実例]「もう一寸程、右の方へ振(フ)って見て貰ひたい」(出典:歌舞伎黄門記童幼講釈(1877)五幕)
  13. 薬・茶などを、煎じ出す。たてる。
  14. 柵・塀・垣などを設ける。設置する。
    1. [初出の実例]「山手には二重三重の柵をふり」(出典:浄瑠璃・最明寺殿百人上臈(1699)含み状)
  15. 歌舞伎の演技で、六方など踏んで花道をはいるときなど、手で種々の形をとる。
    1. [初出の実例]「鳴り物変って、花道を駄右衛門、振(フ)って入る」(出典:歌舞伎・独道中五十三駅(1827)二幕)
  16. 江戸時代、供先を務める奴が、手を動かして伊達(だて)の形をしてみせる。
    1. [初出の実例]「御前が近い、せりあはず、下馬前をしてふりませい」(出典:浄瑠璃・薩摩歌(1711頃)上)
  17. 陰部を露出する。ふんどしをせずにいる。
    1. [初出の実例]「坊主といふ者はをなごのやうな、いもじしてをるもんぢゃさかい、ふってをるもおなじことで」(出典:滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)一二)
  18. 謡曲の曲譜で、ある曲調にすることを示す。現在のフリまたはマワシに類する曲調にするものか。
    1. [初出の実例]「クル松の煙の、フル波寄する、江口の里に、ハル着きにけり着きにけり」(出典:世阿彌筆本謡曲・江口(1384頃))
  19. せり市などで、せる。
    1. [初出の実例]「サア買たり、ふるぞ」(出典:浄瑠璃・伊達錦五十四郡(1752)三)
  20. 為替・手形などを発行する。
    1. [初出の実例]「此金を名古屋にて東京へ為替に振りてもよろし」(出典:会社弁(1871)〈福地桜痴〉為替会社)
  21. 将棋で、飛車を定位置から横に移す。→振飛車
  22. 本題に入るきっかけとして話す。話を導き出そうとする。「落語家がまくらをふる」「司会者が話題をふる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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