数理哲学(読み)すうりてつがく(英語表記)philosophy of mathematics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

数理哲学
すうりてつがく
philosophy of mathematics

数の哲学ともいう。数学の対象となる事物理性の認識対象としてだけとらえ,その根拠を研究する思弁的学問。数学の対象となる個々の事物は,感覚の能動的あるいは受動的対象としての特性をもつものではなく,単に形式的,論理的,公理的構造あるいは関係をもつものとされる。したがってこの哲学における第1の研究対象は,純粋に形式的論理的構造,あるいは関係とは何であるかということになる。このような研究によって,初めて,人間の理性は,数学的抽象作用およびこれを通して考察する思惟の対象の真の本性を,連続や不連続の性質およびそれらの相互関係を,実数および虚数を含む数系列の概念を,超限数 (無限数) の概念を,あるいは非ユークリッド的な空間の意味などを,確固不動のものとして,みずからのうちに保つことができる。さらに数理哲学は,数学的なものと物理的なものとの関連,あるいは数学とその他の科学領域との関連を研究し,またその文化史的価値をも研究対象とする。

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世界大百科事典 第2版の解説

すうりてつがく【数理哲学 philosophy of mathematics】

数理哲学とは文字どおり数学の哲学であり,数学の方法,対象,命題などについての哲学的考察をいう。その歴史は古代ギリシアにおける哲学の勃興と起源を共にする。これは,古代ギリシアにおける数学と哲学の生起が同時であるというヨーロッパの学問の特異な性格に起因するところが大きい。ヨーロッパの数学は論証数学という他に類を見ない特性をもっている。これが数学と哲学を不可分に結合し,数理哲学を哲学の重要部門たらしめたのである。

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大辞林 第三版の解説

すうりてつがく【数理哲学】

数学的対象の存在や数学的認識の本質や基礎・方法などを研究する哲学。二〇世紀初頭、集合論のパラドックスの発見以後、現代数学の基礎論の展開と緊密に連携して飛躍的な発達を遂げた。数学の哲学。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

数理哲学
すうりてつがく
mathematical philosophy

数学に関連する事柄を研究する哲学の一分野。数学的対象、たとえば数は、五感では直接触れることのできない、抽象的な存在である。しかし、数学は、五感で触れられる事象の分析に用いられて大きな効果をあげ、また工学のように具体的な事物を扱う技術においても盛んに応用される。このことを不思議に思う哲学者は昔から多く、たとえばピタゴラスやプラトンもこの不思議を解き明かすことを試みているが、その際、議論は神秘主義に近づくことがあった。また、数学の理論の公理論的性格がきわめて重要なものであることは、19世紀以降、数理哲学者によって繰り返し説かれたが、すでにアリストテレスは、この性格について適確な議論を残している。
 現代論理学は、数学の諸概念が集合論のなかで整然と統合されることを示し、とくに基本概念としては、論理記号のほかには、集合とその元(げん)との間の関係を示すものだけあれば十分であることを示した。このことに感銘を受けたラッセルは、哲学的な問題もまた、集合論での概念分析に似た手法で解けると考えた。このように、数学に範をとって哲学を展開するやりかたも数理哲学といわれるが、ときにはこれは「数学主義的哲学」ともよばれる。
 集合論の内部にはしかし矛盾が発見された。これも一つのきっかけとなり、集合の存在を否定し、直観によって構成されるものだけを数学的対象として認めようとする立場の数学がある数の信奉者を得るようになった。この立場は「数学的唯名論」とよばれる。これに対し、集合の存在を前提するのが大多数の数学者の心情ではないかと思われるが、この心情に添った立場は「数学的実在論」とよばれる。両者の争いに中世の普遍論の現代版をみる哲学者もいる。
 実在論的に集合の存在を認める立場の者も、「では集合とはどんなものか」という問いに対し、ことばのうえでは完全な解答を与えられないことを認めなくてはならない。不完全性定理などのおかげで、集合論の公理系には、本質的に異なったモデルが多数存在することを認めなくてはならないからである。こうして集合は、カント哲学の「物自体」に似た地位にたつことになる。以上の例でわかるように、数理哲学には哲学全体での根本問題の多くが影を落としている。[吉田夏彦]

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