柏餅(読み)カシワモチ

デジタル大辞泉 「柏餅」の意味・読み・例文・類語

かしわ‐もち〔かしは‐〕【×柏餅】

しんこ餅を平たく楕円形にのし、小豆あんや味噌あんを入れて二つ折りにし、カシワの若葉で包んで蒸した菓子。端午の節句の供物とする。 夏》「手づくりの―とて志野の皿/秋桜子
二つ折りにした布団にくるまって寝ること。
[類語]餅菓子菓子大福大福餅草餅栃餅桜餅道明寺葛切り葛餅葛桜わらび鶯餅求肥ぎゅうひ求肥飴ぎゅうひあめ素甘すあま柚餅子ゆべし

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精選版 日本国語大辞典 「柏餅」の意味・読み・例文・類語

かしわ‐もちかしは‥【柏餠】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 蒸した上新粉の餠で餡(あん)を包み、柏の葉でくるんだ菓子。主として五月五日の節句に供する。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「五郎兵衛かか、かしわもちくれる、称心あん念仏」(出典:天正日記‐天正一八年(1590)七月二三日)
  3. ( その形がに似ているところから ) 一枚の蒲団にくるまって寝ること。
    1. [初出の実例]「四の蒲とん敷いつ着て寝つ柏もち 置火燵では蛍をやふく〈如柳〉」(出典:俳諧・篗纑輪前集(1707)一)

柏餠の語誌

( 1 )古代には、カシワの葉は食器として使用されており、その古い生活の名残ともいう。古くから行なわれていたチマキにならってカシワの葉で包むものとして発達し、は中世末頃から作りはじめられたか。
( 2 )カシワの葉は東北地方に多いが、西日本には少ないので、俗にサンキライと呼ばれるサルトリイバラの丸葉を代用する地方も多い。長野県や奈良県の一部では朴(ほお)の葉が用いられている。
( 3 )中の餡は、ふつう小豆餡を用いるが、味噌を入れたものもある。白味噌は砂糖がふんだんに使えなかった時代には甘味料としての役割があった。包む葉の裏と表で餡を区別することもあり、ふつう小豆餡は葉の裏を見せ、味噌餡は葉の表を見せるように包む。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「柏餅」の意味・わかりやすい解説

柏餅
かしわもち

餅菓子の一種。楕円(だえん)形扁平状の新粉餅でみそ餡(あん)や小豆(あずき)餡をくるみ、二つ折りにしてカシワの葉で包み蒸した餅。端午の節供には粽(ちまき)とともに供物(くもつ)に用いる。江戸時代は、東海道白須賀宿(しらすかしゅく)と二川宿(ともに静岡県)の中間猿馬場(さるがばば)の茶店に、名物の柏餅があった。『万葉集』に「家にあれば笥(け)に盛る飯を草枕(くさまくら)旅にしあれば椎(しい)の葉に盛る」とあるが、古代は堅い葉が簡便な食器として使われた。ツバキササ、サクラ、カジ、カキ、ナラの葉なども用いられている。とくに「かしは」が葉椀(くぼて)、葉盤(ひらで)の類とされ、膳夫(かしわで)がそれをつかさどる人とされたのは、カシワの葉がしなやかで、食べ物を盛るのにはもっとも都合がよかったからである。しかし柏餅の記録は椿餅(つばきもち)ほど古くない。推定されているところでは中世以降で、端午の節供に柏餅を食べる慣習は、江戸時代初期からである。1680年(延宝8)の『俳諧向之岡(はいかいむこうのおか)』には、柏餅にちなんで「餅なりけふ世人はをみがく玉がしは」としゃれた一句が収載されている。一方『天正(てんしょう)日記』の7月23日に「五郎兵衛嬶(かかあ)、かしはもちくれる」とあり、この菓子が端午の節供以外にもつくられたことがわかる。また、お盆の供物に使う地方もある。

 男子の節供である5月5日に柏餅が使われたのは、夏の新葉が出るころに古い葉が落ちる、つまり跡継ぎができたという意味で一家繁栄を祈り、祝う心情がこめられている。中身の餅に小豆餡を入れるのは室町時代のまんじゅう以後のことだが、みそ餡のほうは、原型を平安時代の花びら餅までたどることができる。さらに古い形は奈良時代の伏兎(ふと)(唐菓子飳(ふと))であった。その花びら餅に似ている柏餅の形が、前記のように判じ物的な江戸川柳(せんりゅう)をつくらせたのである。

[沢 史生]

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改訂新版 世界大百科事典 「柏餅」の意味・わかりやすい解説

柏餅 (かしわもち)

餅菓子の一種。5月5日の端午の節供に,ちまきとともに供えられる。〈かしわ〉は上古食物を包んだりおおったりした植物の葉の総称で,炊葉(かしぎば)の転じた語とされるが,そうした点で柏餅は古態をとどめる食物といえる。ただし,文献に名が見えるのは浅井了意の《東海道名所記》あたりかららしい。同書では,遠江白須賀から三河二川に至る間の猿が馬場の条に,〈柏餅,こゝの名物なり。あづきをつゝミし餅,うらおもて,柏葉にてつゝミたる物也〉としている。現在の柏餅は,上糝粉(しんこ)を湯でこねたものを20~30分蒸してから,すり鉢にとってつく。これに少量の片栗粉か葛粉(くずこ)を水溶きして加えてさらにつき,それを1個分ずつにちぎり,二つ折りにしてあんを包み,強火で5~6分蒸し,冷めたところをカシワの葉で包む。カシワの葉は湯に通してから水につけ,あくを抜いておく。あんは小豆あんとみそあんとがあり,ふつう,小豆あんのものは葉の裏を出し,みそあんのものは表を出して包む。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「柏餅」の解説

かしわもち【柏餅】

和菓子の一種。上新粉で作った平たい楕円(だえん)形の餅(もち)を二つ折りにして挟み込むようにあずきあんやみそあんをくるみ、かしわの葉に包んで蒸したもの。5月5日の端午(たんご)の節句に供える。◇かしわの木は、新芽が出るまで古い葉が落ちずに残っていることから、子孫繁栄の願いを込めたものとされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「柏餅」の意味・わかりやすい解説

柏餅
かしわもち

餅菓子の一種。米の粉を練り,小豆あんまたは味噌あんを入れて2つ折りにし,柏の葉に包んで蒸したもの。柏の葉は古来食器や菓子器として使われていた。奈良朝時代に唐菓子の一つとして伝来した。一般的になったのは室町時代の末期 (15世紀) から。端午の節供にちまきとともに供えられるようになったのは江戸時代中頃といわれる。

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百科事典マイペディア 「柏餅」の意味・わかりやすい解説

柏餅【かしわもち】

江戸中期ごろから端午の節供餅として作られるようになった。現在では【しん】粉(しんこ)を練り,アズキ餡(あん)をはさんで二つ折りにして蒸し,さめてから湯通ししたカシワの葉などで包む。みそ餡のものもある。

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