鎌倉時代、当地や市川を含む一帯は
一方、法華寺とならび当寺の前身となった本妙寺は大田乗明の館から発展した。大田氏は富木氏よりは上層に位置した武士と考えられ、応永四年(一三九七)六月八日の日尊譲状(顕実寺文書)にみえる「八幡庄曾谷郷大田名」との関連が推則されている。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
千葉県市川市中山にある日蓮宗の大本山。山号は正中山。一般に中山法華経寺または中山の鬼子母神とも呼ばれている。当寺は,日蓮の檀越(だんおつ)の富木常忍(ときじようにん)(日常)が出家して,邸を寺とした法華寺と,同じく日蓮の帰依者である大田乗明(じようみよう)の邸跡に建てられた本妙寺とからなり,両寺一主制がとられていたが,戦国時代に合体して法華経寺となった。大寺院としての基礎を確立したのは南北朝期の初めで,千葉胤貞流一族の保護のもとに,3代の日祐(にちゆう)(1298-1374)が目覚ましい伝道活動を展開したことによる。南関東をはじめ東北,九州にまで教線を伸長させ,中山門流として日蓮宗の一翼を担う勢力を固めた。一時疲弊したが,徳川家康の意を受けた堺出身の日珖たちによって盛運に向かった。第2次大戦後,日蓮宗から独立して中山妙宗を号したが,やがて復帰して日蓮宗霊跡寺院として位置づけられている。境内の聖教殿(しようぎようでん)には,《立正安国論》《観心本尊抄》をはじめとする日蓮の真筆遺文77点が収められている。これらは量・質ともにすぐれ,国宝,重要文化財に指定されている。ほかにも古文書類が多く,とくに日蓮聖人要文集紙背文書は貴重である。これは下総国の守護のもとに集まった文書を日蓮が利用して仏書の要文をしたためたものである。このほかにも,五重塔,法華堂,四足門(以上重要文化財)などの伽藍や寺宝にすぐれたものが多く,日蓮宗ではもっとも文化財に恵まれた寺である。古くから木剣加持(ぼつけんかじ)による祈禱法が伝えられ,日蓮宗の加行所(けぎようしよ)が開設されて,宗門の祈禱僧を育成している。11月1日から2月10日までの100日にわたる,粗衣粗食と水行を行いながら祈禱の伝授を受ける修行は,荒行(あらぎよう)として広く知られている。祈禱の本尊として崇めるのが《法華経》を擁護する鬼子母神で,蓄財・子育てなどの現世利益の祈願がなされる。とくに鬼子母神堂が設けられ,毎月8の日には縁日の法要が催され,鬼形(きぎよう)の鬼子母神の開帳と祈禱でにぎわう。
執筆者:中尾 尭
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千葉県市川市中山にある日蓮(にちれん)宗の寺。正中山(しょうちゅうざん)と号する。本尊は大曼荼羅(だいまんだら)。日蓮宗五大本山の一つ。東京都池上(いけがみ)の本門寺と並んで関東の大本山である。下総(しもうさ)国守護千葉頼胤(よりたね)に仕える富木常忍(ときじょうにん)が、1282年(弘安5)日蓮が入滅すると自邸を寺として法華(ほっけ)寺と称し、自ら出家して名を日常(にちじょう)と改め、初代貫首(かんじゅ)となった。第2代貫首となった日高(にちこう)は中山にある太田乗明(じょうみょう)の館(やかた)跡に本妙寺を創建し、ここに住みながら法華寺の貫首を兼ねた。本妙・法華両山一主制はこのときに始まるが、両寺が一寺となって法華経寺となるのは1545年(天文14)のころらしい。第3代貫首日祐(にちゆう)以降、豪族千葉胤貞(たねさだ)の一族の外護(げご)に支えられて発展。日蓮作と伝えられる鬼子母神(きしもじん)像は子育ての守護神として信仰を集めている。所蔵の日蓮真筆『立正安国論(りっしょうあんこくろん)』1巻、『観心本尊抄(かんじんほんぞんしょう)』1巻、春日山蒔絵(かすがやままきえ)箱は国宝。日蓮上人(しょうにん)自筆遺文(いぶん)56巻、五重塔、法華堂、四足門(しそくもん)、祖師堂絹本着色十六羅漢像は国重要文化財。
[田村晃祐]
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…やがて,近世初頭から盛んになる日蓮宗修法の本尊として鬼子母神が定められ,しかも独特な忿怒形(ふんぬぎよう)の鬼形として造顕された。鬼形に総髪合掌形と有角抱児形があるが,中山法華経寺系の修法が中心になったため,総髪合掌形が広まった。さらに旧来の天女形も作られ,鬼形は破邪調伏,天女形は安産子育てとされた。…
※「法華経寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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