六訂版 家庭医学大全科 の解説
流行性髄膜炎(急性脳脊髄膜炎)、その他の化膿性髄膜炎
りゅうこうせいずいまくえん(きゅうせいのうせきずいまくえん)、そのたのかのうせいずいまくえん
Epidemic cerebrospinal meningitis (Acute cerebrospinal meningitis), Other suppurative meningitis
(感染症)
流行性髄膜炎は通常、
どんな病気か
髄膜炎には細菌性と無菌性があり、細菌性のなかに、髄膜炎菌によって起こる髄膜炎菌性髄膜炎と、その他の細菌によって起こる細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)があります。
髄膜炎菌には多くの血清型がありますが、そのうちA、B、C、Y、W135が多く、A、B、Cで全体の90%以上を占めます。髄膜炎菌性髄膜炎の患者さんを診断した医師は全員、1週間以内に保健所に届け出ることになっており、2008年10人(2009年1月6日現在報告数)、2007年17人、2006年14人、2005年10人、2004年21人が報告されています。
アフリカではとくにA型が多いのですが、アフリカ中央部の髄膜炎ベルトと呼ばれる地域ではW135型の流行が認められており、また中東では、イスラム教徒のメッカ巡礼で感染発症する人が多いことから、これらの地域へ行く場合には髄膜炎菌性髄膜炎ワクチンの接種がすすめられます(国内では市販されていない)。
一方、それ以外の細菌性髄膜炎は全数報告は義務づけられておらず、全国約500の基幹病院を受診した患者さんだけが報告されていて、年間報告数は200~300人です。全国では、この何倍も患者さんが発生していると考えられます。
年齢ごとに原因病原体の頻度は異なり、生後3カ月未満ではB群
症状の現れ方
年長児、成人では発熱、嘔吐、頭痛に加えて、意識障害、けいれん、運動失調を伴うことがあります。診察所見では、
新生児期では低体温、無呼吸、
そのほか、
検査と診断
髄液および血液の細菌培養が重要です。
血液検査では、白血球数の増加(重症例では時に減少)、CRP値の増加、重症例では血小板の減少、血液凝固機能の異常を伴い、DIC(播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群)を合併することがあります。
治療・予防の方法
適切な抗菌薬を一刻も早く、十分量点滴で投与します。培養の結果が出るまでは、年齢、発生状況などから原因菌を推定し、薬剤
予後は一般に悪く、肺炎球菌では15.3%、Hibで3.8%、髄膜炎菌性髄膜炎で7.5%が死亡するといわれています。発症年齢、抗菌薬投与までの時間、細菌の種類、病気の進行速度によって予後は変わりますが、後遺症を約30%に残します。
肺炎球菌については、小児に予防ワクチンが接種されている国もありますが、日本で接種可能な肺炎球菌ワクチンは23
なお、日本で7価結合型の肺炎球菌ワクチンの臨床治験は終了しているので、承認されれば国内でも接種可能となります。
Hibワクチン(ヒブワクチン)は、2008年12月19日以降、国内でも接種可能となりました。
病気に気づいたらどうする
入院施設のある小児科あるいは内科を至急受診してください。
関連項目
多屋 馨子
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報