精選版 日本国語大辞典 「潤」の意味・読み・例文・類語
うる・む【潤】
〘自マ五(四)〙
① 打たれたり、つねられたりした跡が、青黒く色づく。あざになる。また、寒さで皮膚が紫色になる。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※木工権頭為忠百首(1136頃)恋「形見にとうるむばかりもつみしかな人にすみれの花と知る知る」
② 果実が熟して、緑色から赤色に変わる(日葡辞書(1603‐04))。
③ 色つやが薄れる。あざやかでなくなる。
※俳諧・猿蓑(1691)四「灰捨(すて)て白梅うるむ垣ねかな〈凡兆〉」
④ しめりけを帯びる。
(イ) しめりけを帯びて曇る。玉、漆、目などについていう。
※邪宗門(1909)〈北原白秋〉魔睡・夢の奥「ものなべてさは妙(たへ)に女の眼ざし あはれそが夢ふかき空色しつつ にほやかになやましの思はうるむ」
(ロ) 目やそのまわりが涙でぬれる。転じて、涙がにじむ。
※浮世草子・好色万金丹(1694)三「目もとに泪(なみだ)一雫(ひとしづく)うるめば」
(ハ) 泣いて声がはっきりしなくなる。涙声になる。
※人情本・春色恵の花(1836)二「こゑうるみてなみだぐむ」
うるおい うるほひ【潤】
〘名〙 (動詞「うるおう(潤)」の連用形の名詞化)
① 水気を帯びること。しめり。湿気。水分。
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「和を餐め沢(うルホヒ)を飲み、道を味ひ風を欽(つつしめ)ば」
② めぐみ。恩沢。恩恵。
※書紀(720)神功皇后五〇年五月(北野本訓)「天朝(みかど)の鴻沢(みウルヲヒ)遠く弊邑(いやしきさと)に及び」
③ 金品を得て余裕のできること。ゆたかになること。また、その財力。
※玉塵抄(1563)一七「富貴はいきた時のことぞ。死で黄泉にうづまれてはうるをいにならぬぞ」
④ しっとりとした趣。情趣。情味。みずみずしい情感。
うるみ【潤】
〘名〙 (動詞「うるむ(潤)」の連用形の名詞化)
① 色つやが薄れて濁ること。また、その濁り。
※千曲川のスケッチ(1912)〈島崎藤村〉三「田の水もうるみが多くなってねえ」
② しめりけを帯びること。また、そのしめりけ。目についていうことが多い。
③ しっとりした趣。うるおい。
※青草(1914)〈近松秋江〉七「窓から潤味(ウルミ)もない明りが射してゐた」
④ 酒を醸造するとき、炭酸ガスを含んだ泡が透明でなく、くもりのあること。また、清酒の濁ったもの。
⑤ 「うるみしゅ(潤朱)」の略。〔万金産業袋(1732)〕
⑥ 「うるみいろ(潤色)」の略。
ほと・びる【潤】
〘自バ上一〙 ほと・ぶ 〘自バ上二〙
① 水分を含んでふくれる。水でやわらかくなる。ふやける。
※伊勢物語(10C前)九「皆人、乾飯のうへに涙おとしてほとびにけり」
② 大きな顔をする。のさばる。増長する。
※浄瑠璃・都の富士(1695頃)一「何国(いづく)の浦の牛の骨馬の骨やら知れぬ身の、ほとび過たる推参」
③ 色香におぼれる。情交の深みにはまる。
※評判記・役者評判蚰蜒(1674)序「君をこひ茶のたてばもしらで思ひそめつけのちゃわんの、かたじうけないとほとび」
うるお・す うるほす【潤】
〘他サ五(四)〙
① 水気を含ませる。ぬらす。しめす。ひたす。
※白氏文集天永四年点(1113)四「烏膏唇を膏(ウルホシ)、唇泥のごとし」
② 恩恵や徳を広く及ぼす。
※大乗広百論釈論承和八年点(841)「沃(ウルほす)に如来の正教の酥を以てし」
③ 豊かにする。富ます。
※三国伝記(1407‐46頃か)四「仍て富祐屋を潤(ウルヲシ)福徳身を
(ウルホセリ)」

うるい うるひ【潤】
〘名〙 (四段動詞「うるう(潤)」の連用形の名詞化) うるおうこと。うるおい。
※百座法談(1110)三月一二日「されど春の雨にあひて、やうやうそのうるひにあひぬれば」
うるま・す【潤】
〘他サ五(四)〙 涙でぬらす。涙をにじませる。また、泣きそうになって声をつまらせる。
※化銀杏(1896)〈泉鏡花〉四「『私ゃもう其時は…』とお貞は声をうるましたり」
うる・ける【潤】
〘自カ下一〙 水などにつかって、ふやける。うるおう。
※洒落本・筬の千言(1812頃)下「露のアヱ余り長へりして、足ァうるけて、足袋ァはまろめつや」
ほとぼ・す【潤】
〘他サ四〙 ほとびるようにする。ふやけさせる。水にひたす。ほとばかす。ほとばす。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
ほと・ぶ【潤】
〘自バ上二〙 ⇒ほとびる(潤)
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