翻訳|calorimeter
カロリーメーターともいう。熱量を測定する装置の総称。測定の方式によって二つに分類される。(1)熱容量のわかっている物質の温度変化から測定するもの。これには水熱量計,金属熱量計などがある。(2)潜熱のわかっている物質の質量あるいは体積変化から測定するもの。これには氷熱量計,蒸気熱量計がある。
(1)では温度変化の測定が重要な問題で,ベックマン温度計,抵抗温度計などの精密級温度計が用いられる。固体・液体物質の燃焼熱の測定に使用されるボンベ熱量計(あるいはボンブ熱量計)も水熱量計の一種である。この熱量計は,試料を密閉耐圧容器(ボンベ)中で高圧酸素のもとで完全燃焼し,その熱をボンベの周囲の水に伝え,水の温度上昇と質量から熱量を測定する。ボンベ熱量計のボンベは1848年アンドルーズT.Andrewsにより考案されてからベルトロP.E.M.Berthelot,パールS.W.Parrなどの改良を経て現今に至っている。現在ではその材質として18-8クロムニッケル鋼,モネルメタル,インコネルなどが用いられ,燃焼時の変圧および試料中の硫黄分などの燃焼によって生成する酸の腐食に耐えるよう考慮されている。ボンベ熱量計のボンベ以外の構造はいわゆる水熱量計で,測定時熱量計を外界温度から遮断するか否かによって断熱熱量計,非断熱熱量計に区別される。現今多く使われているのは断熱熱量計である。図1は日本で固体・液体燃料,食品,飼料などの熱量の測定に使用されている燃研式断熱ボンベ熱量計である。この熱量計では,内外二つの水槽の水温を同一に保つことによって断熱の目的を達している。試料はボンベの中で約25kgf/cm2の酸素のもとで,電気点火によって燃焼される。そのとき発生した熱は内槽の水温を上昇させるが,その温度は内槽にあるベックマン温度計で測定する。点火によって内槽水の温度が上昇するのに合わせて外槽へは外筒によって加熱された温水を加え,温度を同一とする。測定中内槽と外槽の温度が等しければ室内温度に無関係に熱量計算ができるわけである。熱量の計算は,試料量,内槽水量,上昇温度から算出する。この熱量計の自動化されたものも,一般に市販されている。
(2)の方式の熱量計では,微小な温度の測定を必要としないので,簡単な装置で精密な値を得やすく,比熱などのような少量の熱量の測定にはよく用いられる。図2は,R.W.ブンゼンの氷熱量計で,氷が融解する際に熱を吸収すると同時に体積が減少することを利用して比熱などの微小熱量を測定する装置である。ガラス製の管に純粋な水を満たし,測定前にガラス管の内部にドライアイスなどの寒剤を入れて管の周囲に氷を付着させておく。物体の比熱を測定するには,その物体を任意の温度t℃に熱してガラス管中に落下させる。そのとき物体の温度はt℃降下して最後には0℃になるが,それと同時に外管内の氷は熱量を吸収して一部が溶け体積を減ずるから,それを水銀の移動量によって測定する。氷と水の比体積はそれぞれ1.09075cm3/g,1.00021cm3/gであるから,全体積の1cm3の減少について氷の融解量は11.044gでその融解熱79.40×11.044=876.9calから熱量を計算することができる。図3は,燃料ガスなどの燃焼熱の測定に使用するユンカース式流水型熱量計である。この熱量計では,燃焼室内でガスバーナーによって試料ガスを燃焼し,そのとき発生した熱を燃焼室周囲に流れる流水に伝えてその流水量と水の入口,出口温度の差,試料ガス量から熱量を測定する。
最近,集中冷暖房,地域冷暖房が普及し,冷水,温水から熱供給量を知るため熱量流量計が使用される。この熱量計の測定原理は流水型熱量計とほぼ同様で,冷水または温水の供給入口温度,出口温度および流量を測定し,供給熱量を機構または電子回路で演算し,積算値を示すものである。このほか微小熱量の測定用の熱量計は実験用として数多くの種類が市販されている。
執筆者:佐々木 正治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
物理的または化学的変化に伴って出入りする熱量を測定する装置の総称.物理的変化としては,物質の温度上昇の際に吸収する熱量(熱容量)の測定に用いられるほか,液体に吸収された放射線エネルギー測定の基準的な方法としても用いられる.化学的変化としては,一般の化学反応における反応熱のほか,溶解熱,希釈熱,混合熱,湿潤熱,吸着熱などの測定に広く用いられる.これら化学的変化に用いられる熱量計の原理は,放出または吸収された熱量による反応系(試料,反応容器,かくはん器,温度測定素子,検定用電熱線などを含む)の温度変化を,反応の前後にわたって精密に測定する.反応系の熱容量(熱量計の熱当量あるいは水当量ともよばれる)をC,試料の物質量をn,測定された温度変化をΔTとすれば,試料1 mol 当たりの熱量QはQ = CΔT/nで与えられる.別法として,反応容器の周囲を液-固2相が平衡にある物質(例:水-氷)で囲み,反応容器から伝達された反応熱による相変化に伴う体積変化を測定する方法(定温熱量計)もある.しかし,一般には反応容器と周囲との間の熱交換をできるだけ小さくすることが望ましい.その化学反応が液体中で行われる場合は,かくはん器,温度測定素子,検定用加熱電線を備えた円筒形金属製容器中に試料を入れ,これをさらに1 cm 程度の空気層を隔てて同心円状の中間筒中に置き,これを定温の水槽中に沈める.反応容器としてデュワー瓶を利用することも多い.温度測定にはベックマン温度計,白金(または銅)抵抗温度計,サーミスター,銅-コンスタンタン熱電対などが用いられる.反応を行う2物質の混合には,一方の物質をガラス製アンプル中に封入したものを破壊するなどの方法がとられる.熱当量の測定は,検定用電熱線に一定量の電流を一定時間通じ,ジュール熱による温度上昇を測定して求める.特殊な構造をした熱量計として,有機化合物の燃焼熱の測定に広く用いられるボンベ熱量計がある.また,反応系の周囲を真空とし,外界との熱交換をなるべく小さくする場合も多い.いずれの場合も,器壁,電気導線などを通じて多少とも外界との熱交換は避けられないから,測定された温度変化にはこれらの補正を必要とする.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
熱量を測定する装置で、比熱、潜熱、反応熱などの測定に用いられる。カロリーメーターともいう。
測定系に圧力変化のない定圧熱量計と、密閉容器のように圧力変化はあっても一定容積のもとで測定が行われる定容熱量計に分類される。気体の燃焼熱を測定する炎熱量計は前者に属し、液体および固体燃料の発熱量を測定するのに広く用いられるボンブ熱量計は後者に属する。
[成澤芳男]
熱量計は測定原理の違いにより次の3種に大別される。(1)試料のもつ熱量または試料の反応により発生した熱量を、熱容量既知の物体と混合してその温度上昇を測定するもの(金属熱量計、液体熱量計、炎熱量計、流水熱量計、ボンブ熱量計)。(2)試料の熱量を潜熱既知な、たとえば氷と水の二相平衡系に吸収させ、その相変化した量を測定するもの(氷熱量計、蒸気熱量計)。(3)試料に一定量の電気エネルギーを加え、試料の温度変化(比熱の場合)、相変化量(潜熱の場合)を測定するもの(流動熱量計)。
(1)のものでは温度変化の測定がもっとも重要で、そのためベックマン温度計、熱電対(つい)または抵抗温度計などの精密温度計が用いられる。加熱と温度測定を電気的に行う各種の電気熱量計が知られているが、電気熱量計が精度はもっとも高い。
熱量測定においては、熱量計の温度変化に伴って熱量が外部に漏出し、誤差の原因となるので種々の改良が行われている。これには、(4)熱量計の周囲を金属製の円筒または氷槽にて断熱シールドし、熱量計の温度変化に応じ断熱シールドの温度を調節して熱量計と等しい温度に保ち、熱量計から熱が漏出しないようにするもの(断熱熱量計)。(5)電気的な方法で、試料の発生する熱量と大きさが等しく符号反対の熱を発生させ、熱量計を一定温度に保ち、一方、熱量計の周囲も一定温度に保って熱量計からの熱の出入りを防ぐもの。最近は吸熱の反応熱測定にこれを適用しているものが多い。(6)まったく同じ材料で二つの熱量計をつくり、一方で熱量未知の反応をさせ、他方で電気的エネルギーを加えて二つの熱量計をつねに同一温度に保ち、電気的エネルギーの量から熱量を測定するもの(双子型(ふたごがた)熱量計)。
以上の熱量計のうち、(2)、(5)を等温熱量計と総称し、(6)を除くほかのものを非等温熱量計という。
[成澤芳男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…温度上昇の測定には熱による起電力の発生を利用した熱電対,または熱による板の電気抵抗の変化を利用したボロメーターの原理を利用する。また,放射照度の測定でなく,例えばレーザーのパルスのような短時間の発光の,初めから終りまでの全エネルギーを測定する形式のものもあり,これは一種の熱量計である。【大場 信英】。…
※「熱量計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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