(読み)タライ

デジタル大辞泉 「盥」の意味・読み・例文・類語

たらい〔たらひ〕【×盥】

《「てあら(手洗)い」の音変化》湯水を入れ、顔や手足などを洗うための容器洗濯行水などに用いる平たいおけ。洗面器より大型のもの。古くは多く取っ手がついていた。
[類語]バケツ水桶溜め桶手桶洗い桶湯桶風呂桶水槽

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精選版 日本国語大辞典 「盥」の意味・読み・例文・類語

たらいたらひ【盥】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「てあらい(手洗)」の変化した語 )
  2. 水や湯を入れて、顔や手足を洗うのに用いる平たい容器。古く、多くは、持つための取っ手が二つ付いていた。現在は、主として洗濯に用いる比較的大型のものをさし、木製・金属製・硬質ビニール製などのものがある。
    1. 盥<b>①</b>〈松崎天神縁起〉
      松崎天神縁起
    2. [初出の実例]「手洗 径一尺五寸。深五寸」(出典:延喜式(927)三四)
    3. 「女の、手洗ふ所に貫簀(ぬきす)をうち遣りて、たらひのかげに見えけるを」(出典:伊勢物語(10C前)二七)
  3. 馬を洗うのに用いる大だらい。馬盥(うまだらい・ばだらい)
    1. [初出の実例]「馬船新調、たらひ同前」(出典:三好筑前守義長朝臣亭江御成之記(1561))
  4. 宗教的な清めのため水を入れておく容器。
    1. [初出の実例]「洗盤(タラヒ)集会天幕とその壇の間に置ゑて」(出典:旧約全書(1888)出埃及記)

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普及版 字通 「盥」の読み・字形・画数・意味


16画

[字音] カン(クヮン)
[字訓] たらい・てあらう

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
水+(きょく)+皿(べい)。は左右の手、皿は盤。盤中で両手を洗う形。〔説文〕五上に「手を澡(あら)ふなり」という。列国期の盤銘に「盥盤」と銘するものがあり、盤を以て沐浴した。顔を洗うことを(かい)、髪を洗うことを沐、足を洗うことを洗という。

[訓義]
1. たらい、水器、沃器。
2. てあらう、すすぐ。
3. 浣と通用する。

[古辞書の訓]
名義抄〕盥 タラヒ・テアラフ・クチススク

[語系]
盥kuan、澣(浣)huanは声義近く、盥は名詞、澣は動詞的な語である。

[熟語]
盥浣・盥耳・盥事・盥・盥手・盥水盥洗盥漱盥澡盥濯盥滌・盥盤盥盆盥沐・盥浴
[下接語]
盥・観盥・巾盥潔盥・侍盥・盥・手盥・清盥・洗盥・薦盥・盥・濯盥・滌盥・沃盥

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改訂新版 世界大百科事典 「盥」の意味・わかりやすい解説

盥 (たらい)

洗顔,手水(ちようず),洗濯などに用いる,水や湯を入れる容器。古くは鉄漿(かね)つけにも用いた。〈たらい〉は〈手洗い〉がなまった言葉で,古くからさまざまに使用されてきたが,現在ではもっぱら洗濯や水浴用の大型のものをいい,洗顔用は洗面器とよんでいる。中世までは主として角盥(つのだらい)が使われていた。これは木製黒漆塗りの円形で,左右に2本ずつ角のような長い柄がついている。角は持ち運ぶときの把手であると同時に,手水を使うときここに袖をかけて濡れるのを防いだという。近世になると耳盥となる。これは角盥よりやや小型で,左右に半月形の把手がついている。角盥も耳盥も𤭯(匜)(はそう)/(はんぞう)とよぶ水注ぎとセットになっている。一方,このころには桶盥が出現し,簡便でしかも大小さまざまな桶盥は以後の盥の主役となり,洗顔や洗濯ばかりでなく行水用としてもさかんに使われるようになった。桶盥は現代までつづくが,このほか金盥やホウロウ(琺瑯)製の盥,また最近では合成樹脂製の盥もある。
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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【洗濯】より

…《扇面法華経冊子》には,木を刳り抜いた桶を用い,足ぶみ洗濯をする場面が描かれ,《信貴山縁起》でも井戸端で踏み洗いする姿がみられることは興味深い。洗濯たらい(盥)の出現もこのころからで,手洗い用,洗顔用であった桶が,井戸端洗濯に移るとともに大型となって洗濯に転用されているが,後世のたらいのような結桶(ゆいおけ)はまだ出現していない。仕上げに関しては《大鏡》太政大臣兼通の巻に,熨斗(のし)が登場し,夜具を暖めているところから,衣服の仕立てや洗濯物の仕上げにも使用されていたと推察できる。…

※「盥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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