知恵・智慧・智恵(読み)ちえ

精選版 日本国語大辞典 「知恵・智慧・智恵」の意味・読み・例文・類語

ち‐え ‥ヱ【知恵・智慧・智恵】

〘名〙
① (智慧) 仏語。
(イ) =ち(智)
法華義疏(7C前)一「若弁二智名義、権智亦言方便智、実智亦言智慧
※米沢本沙石集(1283)一〇末「聖財に七あり、信と戒と慚と愧と多聞智恵(チヱ)捨離と也」
(ロ) (prajñā の訳語) 六波羅蜜の一つ。=え(恵)〔翻梵語‐二〕
物事道理をさとり、是非・善悪をわきまえる心のはたらき。物事の筋道を知り、前後をよく考え、計画し、正しく処理していく能力。また、それを有する人。
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「このつきて去にし師、法などうけつくして、賢きちゑなりければ、いとかしこき人にて、皆うつしとりて行ふをも」
※あさぢが露(13C後)「ちゑさいかくのすぐれたまへれば、よはひはるかにおとり給へれど、かれを師とたのみたてまつりて」
③ 才知のはたらき。すぐれた機知、工夫、やりくり、思いつきなど。才覚
※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)九「七いろのしまに、やいろのふねをつなぐも、これもにょにんのちゑ」
※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「商売に油断なく弁舌手だれ智恵才覚、筭用たけてわる銀(かね)をつかまず」
④ (sophia wisdom の訳語) 学問、知識を積み重ねただけのものではなく、人生の真実を悟り、物事の本質を理解する能力、または知識を正しく使用できる実践的な英知。たとえば、プラトンでは理性的霊魂のもつ徳で、魂の気概的部分と情欲的部分を指導する実践的な能力。
[補注]②の用法では、学問、知識など教養を身につけた状態をいう「ざえ」「才覚」「才学」などに対して、より精神的な面での知力をさしたものと思われる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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