デジタル大辞泉
「矩」の意味・読み・例文・類語
かね【×矩】
1 「曲尺」に同じ。
2 模範となるもの。
「凡そ人たるもの、徳善才智、及び身体の事、みな自己を以て―となして」〈中村訳・自由之理〉
3 垂直であること。直角であること。
「(川ニ対シテ)―に渡いて押し落とさるな」〈平家・四〉
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かね【矩】
- 〘 名詞 〙
- ① =かねじゃく(曲尺)①〔壒嚢鈔(1445‐46)〕
- ② まっすぐなこと。直線。また、直角。
- [初出の実例]「かねに渡いて推し落とさるな。水にしなうて渡せや渡せ」(出典:平家物語(13C前)四)
- ③ 規矩。模範となるもの。のり。
- [初出の実例]「大将は大工の棟梁として、天下のかねを弁へ、其国のかねを糺し、其家のかねを知る事、棟梁の道也」(出典:五輪書(1645頃)地の巻)
- 「凡そ人たるもの、徳善才智、及び身体の事、みな自己を以て度尺(カネ)となして」(出典:自由之理(1872)〈中村正直訳〉四)
く【矩】
- 〘 名詞 〙
- ① 曲尺(まがりがね)。
- [初出の実例]「円を絵くには、䂓を用ゐ、方を度るには、矩を法とし」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉二)
- ② 外惑星が黄経差九〇度の位置にあること。またはその時刻をいう。プラス九〇度の場合を東方矩、東矩、上矩、マイナス九〇度の場合を西方矩、西矩、下矩などという。
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普及版 字通
「矩」の読み・字形・画数・意味
矩
人名用漢字 10画
(旧字)
10画
(異体字)
14画
[字音] ク
[字訓] さしがね・のり
[説文解字]
[金文]
[字形] 形声
声符は(巨)。はの初文で、さしがねの形。〔説文〕五上にをその正字とし、「或いは木・矢に從ふ。矢なるは其の中正なり」とする。その矢の部分は、金文ではをもつ人の形に作る。規矩と連用し、規は円を作るぶんまわしをいう字であるが、今は定規のように用いる。
[訓義]
1. さしがね、かねざし、まがりがね、定木。
2. 方形、かどあるもの。
3. のり、さだめ、きまり、おきて、つね。
4. 幅と広さ。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕 ノリ・スミ 〔字鏡集〕 ノトル・ノリ・マサニ
[熟語]
矩形▶・矩券▶・矩坐▶・矩尺▶・矩周▶・矩縄▶・矩則▶・矩度▶・矩歩▶・矩方▶・矩墨▶・矩▶・矩▶
[下接語]
遺矩・応矩・規矩・儀矩・旧矩・憲矩・高矩・鉤矩・修矩・順矩・縄矩・塵矩・前矩・度矩・半矩・歩矩・方矩・踰矩・由矩・霊矩
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矩 (く)
quadrature
地球から見て,惑星が太陽から90度離れて見えるときのことで,外惑星に限られる現象である。外惑星の黄道上の見かけの動きは太陽よりも遅いので,合を過ぎると外惑星は太陽の西側に位置する。西側で太陽から90度離れたときを上矩(または西方矩)と呼ぶ。さらに時間が経過して衝を過ぎ,太陽から西側へ270度離れた位置,すなわち太陽の東側90度の位置に達したときを下矩(または東方矩)と呼ぶ。上矩のとき,外惑星は真夜中に東の空に昇り,夜明けごろ南中する。下矩のときには,日没のころに南中し,真夜中西の地平線に沈んでいく。
執筆者:湯浅 学
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矩
く
地球からみて惑星が太陽の東または西に直角方向に見えるときをいう。内惑星である水星と金星は直角に見えることはなく、外惑星に限られる。太陽の東に90度になったときを上矩(じょうく)、西に90度になったときを下矩(かく)という。上矩のころには惑星は日没のころに南中し、また下矩のころには日の出のころ南中するが、これは月の上弦、下弦と同様である。外惑星の太陽に対する位置は、合(ごう)、下矩、衝(しょう)、上矩の順に変化する。
[村山定男]
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矩
く
quadrature
外惑星あるいは月が,地球から見て,太陽と直角の方向にくること。惑星や月が地球から見て,東にある場合を東方矩または上矩,西方にある場合を西方矩または下矩という。月の場合は特にそれぞれ上弦,下弦という。
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矩(天文)【く】
地球から見て外惑星が太陽から90°離れた位置にあるときをいう。太陽の東(西)方にあれば東(西)方矩といい,このとき惑星は夕方(夜明け)に南中する。
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世界大百科事典(旧版)内の矩の言及
【曲尺】より
…(1)直角定規を兼ねた金属性のものさし。直角をだすための木工用の道具を古く中国では矩(く)といい,帯状の薄い金属板を直角に曲げた形に作ってあり,これに目盛をつけたものであり,かねざし,曲り尺ともいい,矩尺,鉄尺などとも書いた。長短2本の枝から成り,1尺2寸ないし1尺6寸程度の長さの長枝(ちようし)(長手(ながて))とその半分程度の長さの短枝(妻手(つまで))とから成り,幅は5分,厚さは2厘ないし3厘であり,古くは真鍮(しんちゆう)や鋼で,最近はステンレス鋼で作られる。…
※「矩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」