日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫テルル蒼鉛鉱」の意味・わかりやすい解説
硫テルル蒼鉛鉱
りゅうてるるそうえんこう
tetradymite
蒼鉛の硫テルル化物。三方蒼鉛カルコゲン化物trigonal bismuth chalcogenidesという名称で総称される一群の層状構造をもった蒼鉛硫化物の一員。セレン置換体河津(かわづ)鉱との間は化学組成上連続する。自形は限られた産地からしか報告されていないが、底面と傾斜の強い錐面(すいめん)からなる正三角錐台。基本的には底面と3個の錐面からなるが、四重の双晶をなすことがある。浅~深熱水性鉱脈型金・銀鉱床、接触交代型(スカルン型)多金属鉱床などに産する。日本では福岡県田川郡香春(かわら)町三ノ岳(さんのだけ)からの産出が知られている。
共存鉱物は自然金、自然蒼鉛、ヘッス鉱、マチルダ鉱、ペッツ鉱、テルル鉛鉱、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、灰重石、輝水鉛鉱などである。同定は淡鋼灰色の外観と条痕(じょうこん)があること、底面に完全な劈開(へきかい)があること、劈開片がたわむこと、非常に低い硬度があることである。英名はギリシア語で四連を意味するτετρδυμος(tetradymos)に由来する。四重の双晶が存在することにより命名された。
[加藤 昭]