福島県中通り北部にある盆地。阿武隈川の中流部にあたり,西側は奥羽山脈と吾妻火山,東側は阿武隈高地に囲まれ,北東から南西方向を長軸とし,中央部が狭くなった繭状をなしている。西縁の半田断層,台山断層,吾妻断層などと,東縁の梁川(やながわ)線などの構造線にはさまれた複雑な地溝盆地である。盆地南西部では西側の奥羽山脈から流下する産ヶ沢(うぶがざわ)川,松川,天戸(あまと)川,白津川などによる複合扇状地が発達し,その扇頂付近には扇状地面を切って形成された低い眉状断層崖が見られる。これは断層山地の前面に扇状地が形成されて,その下に埋没した断層が再び活動して生ずる扁平な眉形の断層崖で,扇状地断層崖ともよばれる。盆地南西部では西からの河川による扇状地形成が盛んなため,阿武隈川の流路が東部に押しやられてそのはんらん原は狭いが,北東部にあたる伊達市の旧保原(ほばら)町,旧梁川町付近でははんらん原が広く,特に右岸ではS字状に屈曲した旧河道が各地に残り,その一部は細長い水田となっている。
盆地床の各地で縄文時代の遺跡が発見されており,条里制遺構も残され,奈良時代の寺院跡も発掘されている。江戸時代初期には西根堰が開削され,阿武隈川左岸地域の開墾が進んだ。近世には一帯で養蚕が盛んとなり,幕末以降,養蚕・蚕種業が特に発達し,蚕当計(温度計)も考案された。この傾向は昭和10年代まで続き,当時は盆地床の大部分が桑園となったほどであった。第2次大戦中に桑園が減少し,戦後は果樹園に変わり,現在では県内の果樹園の約60%がこの盆地に集中している。行政的には福島市のほか伊達市北西部,桑折(こおり)町,国見町の区域が含まれているが,県庁のある福島市が中心をなす。伊達市西部は桃とリンゴ,福島市瀬上(せのうえ),宮代付近はリンゴ,松川扇状地は梨の産地である。また福島市街地の北にある信夫山の中腹では一部にユズの栽培がみられる。旧保原・旧梁川両町付近では戦後始められたメリヤス工業が盛んである。
執筆者:大澤 貞一郎
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福島県中通り北部にある盆地。東部を阿武隈川(あぶくまがわ)が北流し自然堤防上はかつては桑園に利用されたが、近年はリンゴ、モモなどの果樹園にかわった所もある。西の奥羽山脈の山裾(やますそ)には産ヶ沢(うぶがさわ)、小川、松川、荒川などの扇状地が広がり、一部は活断層で切られている。松川扇状地扇央の笹木野原(ささきのはら)付近は、明治以降に開拓され、現在はナシ園が広がる。この盆地は標高が低いこともあって、中通りでは春の到来がもっとも早い。盆地の中心は県都の福島市。
[安田初雄]
…福島県東部から宮城県南部を流れる川。白河市西方にある三本槍岳(1917m)東斜面に発し,奥羽山脈と阿武隈高地の間を北流,福島盆地北東隅から阿武隈高地北部を峡谷をなして北東流し,宮城県亘理(わたり)郡亘理町荒浜で仙台湾に注ぐ。幹川流路延長239kmは東北では北上川に次いで第2位,全流域面積5400km2は北上川,最上川に次いで第3位の大河川である。…
※「福島盆地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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