稲荷鮨(読み)いなりずし

精選版 日本国語大辞典 「稲荷鮨」の意味・読み・例文・類語

いなり‐ずし【稲荷鮨】

〘名〙 煮しめた油揚げを袋状に開き、それに酢飯を詰めた食品。近世末頃から流行した。信田鮨(しのだずし)。おいなりさん。きつねずし。いなり。《季・夏》
随筆守貞漫稿(1837‐53)五「天保末年江戸にて油あげ豆腐の一方をさきて〈略〉飯を納て鮨として売巡る。〈略〉号て稲荷鮨或は篠田鮨と云」
[補注]「狂歌・近世商賈尽狂歌合」の屋台の絵(→◆図)には、俎の上に庖丁があり、詞書には「一本が十六文 ヘイヘイヘイありがたひ〈略〉一と切が四もん サアサアあがれあがれ」とある。注文に応じて細長い稲荷鮨を切って売ったのであろう。

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デジタル大辞泉 「稲荷鮨」の意味・読み・例文・類語

いなり‐ずし【稲×鮨】

煮つけた油揚げの中に鮨飯を詰めたもの。しのだずし。きつねずし。おいなりさん。 夏》
[類語]握り鮨散らし鮨五目鮨ばら押し鮨巻き鮨手巻き鮨海苔巻き鉄火巻き河童巻き茶巾鮨れ鮨姿鮨

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改訂新版 世界大百科事典 「稲荷鮨」の意味・わかりやすい解説

稲荷鮨 (いなりずし)

甘辛く煮た豆腐の油揚げを袋状に開き,酢飯を包んだもの。稲荷神の使女(つかわしめ)とされるキツネが油揚げを好むとするところからの称で,信太(田)(しのだ)森の〈葛の葉狐〉にこじつけて〈しのだずし〉とも呼ぶ。《守貞漫稿》によると,発祥地は尾張の名古屋で,江戸では天保(1830-44)の末ごろから,鳥居の絵をかいた行灯に灯を入れた稲荷ずし売りが夜の町々を売り歩いたという。当時は酢飯にキクラゲかんぴょうを具としてまぜていたが,いまではシイタケニンジン,さやエンドウ,れんこんなどを加えることが多い。ちなみに,昔話に出てくるキツネの好物ネズミの油揚げである。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「稲荷鮨」の解説

いなりずし【稲荷鮨】

すし一種。油揚げを甘辛く煮て袋状に開き、すし飯を詰めたもの。すし飯にしいたけ・にんじん・ごぼう・いりごまなどを加えることもある。◇稲荷の神の使いとされるきつねが油揚げを好むとされることから。「しのだずし」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の稲荷鮨の言及

【すし(鮓∥鮨)】より

…魚貝などを米飯といっしょに漬けこみ,乳酸発酵させた貯蔵食品。または,酢で味をつけた飯に魚貝,野菜などを配した料理。前者はすしの原形とされるもので馴(な)れずし(熟(な)れずし)と呼び,現在の日本で代表的なのは〈近江(おうみ)のフナずし〉であろうが,東南アジアから中国の一部にかけてかなり広く行われているものである。後者は握りずしに代表されるもので,日本独特の米飯料理である。すしは,鮓,鮨,寿司,寿志,寿しなどと書かれるが,鮓と鮨のほかはすべて江戸中期以後に使われるようになった当て字であり,また,〈すもじ〉〈おすもじ〉というのは室町時代から使われた女房ことばである。…

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