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脳卒中(脳血管発作) のうそっちゅうのうけっかんほっさ(Cerebral Apoplexy)

家庭医学館の解説

のうそっちゅうのうけっかんほっさ【脳卒中(脳血管発作) (Cerebral Apoplexy)】

◎破綻(はたん)する脳動脈
 脳は、4本の脳動脈(左右2本の内頸動脈(ないけいどうみゃく)系と椎骨動脈(ついこつどうみゃく)系)を介して送られてくる血液から、酸素と栄養素の供給を受け、これをエネルギー源として活動しています。
 4本の脳動脈は、頭蓋内(ずがいない)でいくつにも枝分かれして細くなり、脳のすみずみにまで血液を供給します。
 これらの動脈のどこかに破れる、つまるなどの破綻が生じて血液が流れなくなると、その動脈から血液の供給を受けていた脳実質(のうじっしつ)(脳そのもの)が障害され、手足のまひや感覚障害言語障害失語症(しつごしょう)などのほか、意識障害呼吸困難のために生命に危険をおよぼす症状が現われてきます。このような状態を脳卒中(脳血管発作)といいます。
 おもに高血圧、糖尿病(とうにょうびょう)、心臓病、高脂血症(こうしけっしょう)、多血症(たけつしょう)、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)、脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)、がんなどが基盤となっておこります。
◎脳卒中を2種類に大別
 脳卒中はおこり方によって、頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)と脳梗塞(のうこうそく)(脳軟化症(のうなんかしょう))の2つに大きく分けられます。
■頭蓋内出血
 脳動脈が破れて周囲に血液があふれ出るものです。脳動脈が破れても、血管が収縮し、血液が固まるので、出血はまもなく止まりますが、あふれ出た血液が固まって血腫(けっしゅ)となり、周囲の脳組織を破壊したり、圧迫したりするため、さまざまな神経症状が現われてきます。
 頭蓋内出血はさらに、①脳実質に出血する脳出血脳溢血(のういっけつ))と、②脳の表面近くのくも膜下腔(まくかくう)に出血するくも膜下出血(まくかしゅっけつ)に分けられます。
■脳梗塞(脳軟化症)
 動脈の内腔が血栓(けっせん)(血液のかたまり)によってつまり、その先へ血液が流れなくなってしまうものです。したがって、つまった部位より先の脳は、酸素不足、栄養不良におちいって障害を受け、さまざまな神経症状がおこってきます。
 脳梗塞は原因となる血栓の生じ方により、さらにつぎのように分けられます。
脳血栓(のうけっせん)(症)
 動脈硬化(どうみゃくこうか)によって脳動脈の内腔に血栓が生じ、血管を閉塞させるものです。そのおこり方や出現する神経症状、成因、治療方法、予後などが異なるため、最近では、太い脳動脈がつまるアテローム血栓性脳梗塞(けっせんせいのうこうそく)と、脳の深部にある細い動脈がつまるラクナ梗塞(こうそく)に分けて呼ばれています。
②脳塞栓(のうそくせん)(症)
 脳以外の部位(心臓のことが多い)に発生した血栓などが脳の動脈まで流れてきて、突然、内腔をつまらせてしまうものです。
◎脳卒中の前兆となる症状
 脳動脈の内腔が血栓によってつまり脳卒中の症状が現われても、血流が再開して症状が24時間以内(20分以内のことが多い)に自然に消える一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)(「一過性脳虚血発作」)は、脳梗塞の前兆としてもっとも重要な症状です。
 脳の動脈硬化が強く高血圧の治療を受けている人で、血圧が下がりすぎたときにも、同様の症状(脳循環不全)がみられることがあります
脳卒中(のうそっちゅう)の診断(しんだん)
脳卒中(のうそっちゅう)の応急手当(おうきゅうてあて)
脳卒中(のうそっちゅう)の治療(ちりょう)

脳卒中(のうそっちゅう)の診断
◎問診(もんしん)が診断の決め手
 診断の手がかりは、問診です。
①どんな状況で発作がおこったか。
②顔や手足のまひ・しびれや感覚のにぶさなどの感覚障害、ろれつが回らなかったりことばが出ないなどの言語障害、呼びかけても反応が悪いなどの意識障害はおこっているか。
③頭痛・吐(は)き気(け)・嘔吐(おうと)・めまいなどをともなうか。
④その後症状がどのように変化したか。
高血圧症、糖尿病、心臓病、がんなどの脳卒中の基盤となる慢性の病気(危険因子)をもっているか。
 以上のことを聞くだけで、脳卒中の種類やその程度まで、おおよそ見当をつけることができます。
 意識障害や言語障害などのために、本人がこれらの情報を直接、医師に伝えられないことが少なくありません。発作(ほっさ)をおこしたときに近くにいた家族や倒れているのを発見した人など、いちばん状況を知っている人がつき添い、医師に報告するのが最良です。
 病院に着くと、入院手続きに追われがちですし、医師も手当や検査につきっきりになるため、口頭で伝えられないこともあります。病状の経過を簡潔なメモにして医師に手渡すことも勧められます。
◎検査に欠かせない画像診断
 脳卒中が疑われた場合は、診察後にまずCTが行なわれます。CTは、脳の中を輪切りにして撮影できる装置で、脳卒中の種類、脳の病変の部位や程度を診断できます。脳出血なら発病直後に、脳梗塞(のうこうそく)なら発病数日後には病変を見ることができます。
 CTは、短い時間で撮影ができて、脳卒中の診断には欠かせない検査ですが、小さな病巣、脳幹(のうかん)(中脳(ちゅうのう)、橋(きょう)、延髄(えんずい))や小脳(しょうのう)病変はわかりにくいため、さらにMRI(磁気共鳴画像装置)を行なうと、CTではわからない部位の診断が可能になります。
 MRIは、撮影方法を変えれば、脳血管を画像にすること(MRIによる脳血管撮影)ができ、比較的太い血管の閉塞や脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)を診断できます。
 脳梗塞の発症後6時間以内で、脳血管閉塞部位の血栓(けっせん)を溶かす治療や脳神経外科で手術を前提とする場合は、従来からの脳血管撮影が必要です。
 脳血管撮影は、脳に行く動脈に造影剤を注入し、X線で撮影して脳血管の状態を調べる検査です。脳の血管病変が確実にわかるので、脳卒中の原因や今後の治療方針を決定できます。
 このほかに、全身状態を調べるために尿検査、血液検査、胸・腹部X線検査、心電図検査などの一般的検査も、同時に行なわれます。

脳卒中(のうそっちゅう)の応急手当
◎予後に影響、早く医師の診察を
 脳卒中をおこしたときは、できるだけ早く医師に診(み)てもらう手段を講じることが必要です。なぜならば、治療開始までの時間が、その後の後遺症(こういしょう)などの予後に大きく関係してくるからです。
 かかりつけの内科医がいれば、電話をしてすぐに指示を仰ぐか、往診を依頼します。夜間や休祭日などで、主治医や近くの医師の往診が受けられなかったり、どこの医療機関で治療が受けられるのかわからないときは、救急車の出動を依頼しましょう。
 治療が受けられる医療機関は、そのときの患者さんの状態によって救急隊員が決めてくれますが、どうしても自分で医療機関を選ばなければならないときは、救命救急部をもっている病院か脳卒中専門の病院を選びます。
◎まず、意識状態の確認を
 医師や救急隊員がくるまでに、適切な手当を行なうことがとても重要になります。手当をせずに放置したり、誤った手当をすると、病状がいっそう悪化することがあるので、適切な手当のためにも、まず本人の名前を呼んだり話しかけたりして、意識状態を確認して病状を把握することが必要です。
●軽症
 呼びかけると返事をし、会話ができるなら意識がしっかりしている証拠で、軽症のことが多いようです。
●中等症
 呼びかけると返事はしてもすぐにうつらうつら眠ってしまう(傾眠(けいみん))ようなときは、意識はあってもかなり悪い状態で、さらに悪化する可能性があり、すぐにも入院が必要です。
●重症
 呼びかけても返事がなく、皮膚をつねっても反応がにぶく、いびきをかいている(昏睡(こんすい))ようなときは、最悪の状態です。
 重症のものほど生命にかかわる危険が高くなるので、一刻も早く病人を医師の手に渡す手段を講じるべきです。
 注意 からだ(とくに頭部)をゆすって意識の有無を確かめてはいけません。重症の脳出血やくも膜下出血の場合、病状を悪化させることがあります。
◎中等症・重症の応急処置
 救急車を呼んで、一刻も早く脳卒中の専門医のいる病院に運ぶことが大事ですが、とりあえず応急処置としてつぎのようなことをやっておきましょう。
①安全に寝かせられる場所へ運ぶ
 トイレ、風呂場(ふろば)、玄関、道路などで倒れているのを発見したら、まず安全に寝かせられる場所へ病人を運びます。ひとりで運ぶことをしないで、周囲の人に応援を頼み、病人のからだを横にまっすぐにした状態で抱え上げて運びます。
 かつては脳卒中で倒れたときは、その場を動かしてはいけないとされていましたが、現在では、運んだ後に病状が悪化したときは、たとえその場を動かさなくても病状は悪化するものと考えられています。
 注意 気道閉塞や脳ヘルニアを助長しないため、くびが前方に曲がってうなずいた格好にならないように、頭とくびの下をしっかりと支え、まっすぐに伸ばした状態で運びます。
②ややかためのふとんに、肩まくらをして寝かせる
 室内に運んだら、からだが沈まない程度のかたさのふとんに、あおむけに寝かせ、衣服をゆるめます。
 意識状態の悪いときは、呼吸困難におちいることがあります。いびきをかいていたり、のどをぜろぜろいわせているときは呼吸が苦しい証拠です。折りたたんだバスタオルなどを肩の下に当て(肩まくら)、のどを後ろにそらせると、らくに呼吸ができるようになります。
③嘔吐(おうと)に備えて、顔を横向きにする
 脳卒中では、発症時に嘔吐をともなうことが少なくなく、意識状態が悪いときには、吐いたものを気管につまらせて窒息することがあります。したがって、そのときの嘔吐の有無にかかわらず、顔を横向きにしておきます。
 入れ歯がのどにつまることもあるので、外せる入れ歯は外しておきます。
④けいれんをおこしていたら、やわらかいものを口にかませる
 けいれんをおこし、歯をくいしばっているようなときは舌やくちびるをかむことがあるので、折りたたんだハンカチなどを奥歯にかませておきましょう。どうしても口が開かないときは、むりにこじあけてかませる必要はありません。
⑤尿失禁(にょうしっきん)に備えて、腰の下にビニールなどを敷く
 意識状態が悪いと尿をもらすことがあるので、腰の下にビニールなどを敷いておきましょう。
⑥部屋に直射日光が入らないようにする
 直射日光があたったり、風通しが悪く部屋が蒸していると、病人が脱水状態になりがちです。このようなことにならないように注意しましょう。
◎軽症なら不安をしずめて安静に
 軽症の場合は、適切な手当はもちろんのこと、心を落ちつかせてあげることがとてもたいせつになります
①中等・重症のときと同じ手当をする
 軽症の場合も基本的には、中等症、重症に対する応急処置を行ないます。
 注意 ひとりで歩けても、絶対に歩かせてはいけません。発症時は安静にすることがたいせつです。トイレへ行きたくなったときは、できるだけ便器かおむつを使うようにします。
 飲み物を欲しがったら氷をふくませるかくちびるをぬらす程度にとどめます。通常の食事をとらせてはいけません。一刻も早く病院に運びます。
②興奮をしずめて落ちつかせる
 不安になって興奮し、動き回ろうとしたり、暴れたりするときは、幼児をあやす要領でことばをかけて落ちつかせます。救急車の手配や医師への連絡がついていることを伝えると落ちつくものです。
◎一刻を争うときはすぐに病院へ
 頭痛や嘔吐がひどかったり、まひが進んだり、意識状態がしだいに悪くなってくるときは、病状が悪化している証拠です。すぐに救急車を呼び、一刻も早く病人を医師の手に渡すための手段を講じることが必要です。
 自分で病院まで運ばなければならないときは、病人が横になれる広さの車で、頭を進行方向に向け、からだを伸ばした状態にして、誰か病人のそばについて運びます。ふつうの乗用車ではむりです。

脳卒中(のうそっちゅう)の治療
◎薬物療法が治療の原則
◎急性期の治療
◎慢性期の治療

◎薬物療法が治療の原則
 脳卒中をおこしたときは、たとえ軽症でも放置せず、できるだけ早く入院して治療を受けるのが最良です。
 脳卒中は発作後、病状が不安定な急性期と、それ以上は進行しなくなる安定期とに分けられますが、入院すれば、発病初期にたいせつな安静も正しく守ることができ、病状が急変してもすぐに適切な治療が受けられます。
 さらに、手術が必要なときの対応や、安定期に入ってからの後遺症(手足のまひや言語障害など)に対する早期からのリハビリテーションが受けられるなど、患者さんにとって有利なことが多いものです。医師から入院を指示されたときは、従うべきです。
 脳卒中の治療は、手術を必要とする脳動脈瘤破裂(のうどうみゃくりゅうはれつ)によるくも膜下出血(まくかしゅっけつ)などを除いて、ほとんどが、症状に応じた薬剤の使用などの内科的な治療が主体となります。
●脳出血(のうしゅっけつ)の場合
 とくに高血圧による脳出血のときは、特殊な場合(大きな小脳出血や脳圧が高く、脳室が大きくなっている閉塞性水頭症(へいそくせいすいとうしょう)など)を除き、内科的治療を行なうのが原則です。
 重症の場合は、手術をしても、寝たきりや植物状態となることが多く、救命を目的とする以外は手術は行ないません。
 最近、細い針で血腫(けっしゅ)を吸引する手術(血腫吸引術(けっしゅきゅういんじゅつ))が行なわれるようになっていますが、内科的治療とどちらがより勝っているか、まだ結論が出ていません。
●脳梗塞(のうこうそく)の場合
 脳梗塞の場合も、ほとんどが内科的治療になります。
 太い脳血管(内頸(ないけい)・中大脳(ちゅうだいのう)・脳底動脈(のうていどうみゃく))に血栓(けっせん)がつまって6時間以内であれば、管(カテーテル)を血管内に入れて、つまった血管内の血栓を薬で溶かす特殊な治療が行なわれることがあります。
 この治療は、発病後早く行なえば効果が期待できますが、病院の設備、専門医の人数、受け入れ体制、時間的制約などのために、いつでも、どこでも受けられるとはかぎりません。
 また、内頸動脈に70%以上の狭窄(きょうさく)がある場合は、熟練した外科医が細くなっている内頸動脈の傷ついた内膜(ないまく)を切り取ることもあります(頸動脈内膜摘除術(けいどうみゃくないまくてきじょじゅつ))。

◎急性期の治療
 脳卒中をおこしてから2週間以内を急性期と呼んでいます。
 この時期は病状が安定しないので、すぐに入院して、治療を始めることがたいせつです。
 急性期の治療は、全身状態を改善させるための全身管理と、脳の病変を改善させるための薬物療法が中心となります。
●全身管理
①栄養補給
 十分に食事がとれないために脱水状態におちいりがちなので、点滴(てんてき)をして、水分・栄養の補給や、治療に必要な薬剤の注入を行ないます。
 意識状態が悪かったり(傾眠(けいみん)、昏睡(こんすい))、嚥下障害(えんげしょうがい)などで飲食物がとれない場合は、チューブを鼻腔(びくう)から胃の中に通し、このチューブを介して栄養物(経管流動物(けいかんりゅうどうぶつ))や薬剤を注入します。
 このようなケースでは、胃の中の圧に押されて胃の内容物が食道のほうに逆流し、気管に入って窒息したり肺炎をおこしたりする危険がありますが、このチューブは流動物を注入するだけでなく、胃の中の圧を下げる役目もあるので、予防のためにも胃内に入れたままにしておきます(留置)。
②呼吸の管理
 呼吸の状態が悪く、体内が酸素不足におちいっているときは、酸素マスクをかけたり、鼻腔の中にチューブを入れたりして体内に酸素を送り込みます。
 体内の酸素不足がとくにひどい場合は、チューブを口や鼻腔から直接、気管に入れて空気の通り道を確保し、人工呼吸器を使用することもあります。
③尿失禁(にょうしっきん)の手当
 尿失禁があるときは、尿道から膀胱(ぼうこう)までカテーテル(ゴムの細い管)を挿入して尿を体外に排出させる導尿(どうにょう)を行なう一方で、尿量や尿の性状を調べます。
 導尿を続けていると、細菌による感染をおこしやすいので、陰部をこまめに拭(ふ)くなどして、常に清潔にしておくことがたいせつです。
 意識がはっきりしてきたら、できるだけ早く自分の力で排尿できるようにする訓練(膀胱訓練)を開始し、尿道に留置してあるカテーテルを抜くようにします。
●薬物療法
①脳圧降下剤(のうあつこうかざい)
 脳卒中の急性期には、程度の差はあっても、脳がむくんで(脳浮腫(のうふしゅ))脳圧が高くなるため、脳圧降下剤を使用します。
 とくに、意識状態が悪いとき、頭痛や嘔吐が続くとき、CTで脳圧の高いことがわかったときは、すぐに脳圧降下剤を使います。
②血栓溶解薬(けっせんようかいやく)・抗凝固薬(こうぎょうこやく)・血小板凝集抑制薬(けっしょうばんぎょうしゅうよくせいやく)・抗(こう)トロンビン薬(やく)
 脳血栓で、症状が徐々に悪化し進行してくる場合は、血栓を溶かす血栓溶解薬、血液を固まりにくくして血栓ができるのを防止する抗凝固薬、血小板凝集抑制薬、抗トロンビン薬を適宜、使用します。
③降圧薬(こうあつやく)
 脳卒中発作をおこした後は、血圧が高くなっているのがふつうです。
 脳の血流量は、ふつうの状態であれば、血圧に左右されることなく、かなりの余裕をもって一定の範囲内で必要な量に保たれています(自動調節能)。しかし、脳卒中で脳が障害されると、自動調節能が破壊され、血圧を高くして脳の血流を保とうとする生理的反応がおこってきます。
 したがって、血圧を正常範囲まで下げると、脳へ流れていく血流量が減少してしまうので、脳梗塞の急性期には、合併症のためにどうしても血圧を下げなければならない場合を除いて、降圧薬は使いません。
 しかし、血圧が著しく高い場合は、脳がむくんできて、かえって脳の血流量が減少するため、一時的に降圧薬を使用することがあります。
 脳出血で血圧が高い場合は、再出血をおこすこともあるので、正常血圧よりやや高めに保つように降圧薬を使用します。
④脳代謝改善薬(のうたいしゃかいぜんやく)
 脳卒中では、脳の神経細胞のはたらきが全般的に低下しているので、これを活発化させるために、脳出血、脳梗塞ともに使用することがあります。
⑤脳血管拡張薬(のうけっかんかくちょうやく)
 脳梗塞の場合は、脳血管の内腔を広げて血液の流れをよくする目的で使用します。
 しかし、急性期に使うと、内腔が広がるのは障害されていない脳血管だけで、つまった部位の血流量が逆に減少したり、血流量が増えたためにつまった部位の脳が腫れたりすることがあります。そのため、一般的に急性期には使用されません。
⑥抗潰瘍薬(こうかいようやく)
 脳卒中発作がストレスとなって、胃(い)・十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)が発生することもあるので、これを防止するために使用されることがよくあります。
⑦精神安定剤・鎮静薬(ちんせいやく)・睡眠薬(すいみんやく)
 意識障害のある場合は、通常は使用されません。しかし、大声を出して暴れたり、起き上がって、ベッドから落ちたり転倒したりする危険性があるときは、からだを抑制するため、鎮静薬を使う必要があります。
 意識障害がなく、不安感が強かったり、不眠を訴えるときは、精神安定剤や睡眠薬を使用し、ストレスをとり、安静を保たせます。
⑧抗けいれん薬
 けいれんがおこっていたり、おこす可能性があるときは、抗けいれん薬を使用します。
 薬を服用できないときは、抗けいれん薬の点滴静注を行ないます。

◎慢性期の治療
 脳卒中の発作をおこしてから2週間以上たつと、症状が安定してきます。再発作や合併症もなく発作後4週目以降になると、それ以上に症状が悪化しなくなる時期を迎えます。これを慢性期といいます。
 この時期は、症状に応じた薬剤の使用と、脳卒中をおこす原因となった病気の本格的な治療が主体となります。
●薬物療法
 脳梗塞の場合は、再発を予防するために、必要があれば、急性期にひき続いて血小板凝集抑制薬や抗凝固薬が使われます。
 脳梗塞で血管がつまった部位や脳出血で血腫ができた部位、およびその周辺は血流量が減少しているので、血流量を増加させるために、脳血管拡張薬が使用されることがあります。
 また、低下している脳細胞のはたらきを活発にするために、脳代謝改善薬を使用することもあります。
 これらの薬剤は、脳卒中後遺症としておこる頭痛、頭重感(ずじゅうかん)、めまい、しびれ、意欲の低下、抑うつ状態などの症状の改善に効果を示すことがあります。
●原因疾患の治療
 高血圧、糖尿病、心臓病、高脂血症、多血症などといった、脳卒中の原因となっている病気の治療を行ないます。これは、再発を予防するためにもたいせつです。
 脳動脈瘤、脳動静脈奇形などが存在する場合は、治療には手術が必要になります。
 たばこを吸う人は、禁煙を守ることがたいせつです。

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