岩手県中央部にある市。2006年1月旧花巻市と石鳥谷(いしどりや),大迫(おおはさま),東和(とうわ)の3町が合併して成立した。人口10万1438(2010)。
花巻市北部の旧町。旧稗貫(ひえぬき)郡所属。人口1万5982(2005)。旧花巻市の北に位置し,東西に細長い町域の西部は奥羽山脈の支脈の山地で占められるが,東部には北上川の沖積地が広がる。中央をJR東北本線,東北新幹線,国道4号線,東北自動車道が並行して走り,中心集落の石鳥谷は近世には奥州街道の宿駅であった。古くから〈酒の町〉として知られ,南部杜氏発祥の地でもあり,現在も三つの酒造工場がある。米作を主体とする農業が基幹産業で,岩手リンゴの産地でもある。西部の山林を背景とした製材業も地場産業の一つである。杜氏の酒造用具を展示した石鳥谷歴史民俗資料館がある。
花巻市北東部の旧町。旧稗貫郡所属。人口6585(2005)。盛岡市の南に位置し,東は遠野市に接する。全域が早池峰(はやちね)山をはじめとする北上高地の山々に占められ,早池峰山に発する稗貫川が中央を西流する。中心集落の大迫は近世には釜石街道の宿駅であった。基幹産業は農林業で,米,タバコ,ブドウの栽培や畜産が盛ん。ブドウ栽培は1950年の県立農業試験場大迫ブドウ試験地の設置を契機に盛んになり,ワインに醸造されて全国に出荷されている。オーストリアのベルンドルフ市と姉妹都市となったことを縁に山岳博物館(現,早池峰山岳博物館)が設立された。早池峰神楽(重要無形民俗文化財)など多くの郷土芸能が伝わる。
花巻市中南部の旧町。旧和賀郡所属。人口1万0054(2005)。北部と南部は北上高地の支脈によって占められ,中央部には北上川支流の猿ヶ石川が西流する。中心集落の土沢は,近世に内陸部と三陸海岸を結ぶ釜石街道の宿駅として栄え,南部藩の南境防備のため番所も置かれた。古くからの米の産地であるが,第2次大戦後,猿ヶ石川に田瀬ダムが完成し,開田・開畑がさらに進んだ。畜産,タバコ栽培なども盛んで,田瀬ダム湖ではワカサギの養殖も行われる。成島の毘沙門堂には平安時代の毘沙門天像,伝吉祥天像などがあり,重要文化財に指定されている。小山田には天然記念物のカズグリ自生地がある。明治~大正期の画家万(よろず)鉄五郎の生地。JR釜石線,国道283号線が通じる。
執筆者:松橋 公治
花巻市西部の旧市で,北上盆地の中央部にある。1954年市制。人口7万2407(2005)。北上川西岸に位置する中心の旧花巻町は,中世には稗貫氏が鳥谷ヶ崎城を築いた地で,1591年(天正19)には南部氏の家臣北秀愛が居城して花巻城と改名したのち盛岡藩の要地として発展した。また,奥州街道の宿駅,北上川舟運の河港として栄えた。背後には北上盆地の肥沃な土地が広がり,米作を中心にリンゴなどの果樹栽培や酪農が行われている。近年,大規模な工業団地の造成が進み,東北自動車道花巻インターチェンジに隣接した二枚橋工業団地などでは電気機械,食料品精密機械工業が盛んで,また花巻市公設地方卸売市場もある。花巻ジャンクションで東北自動車道から釜石自動車道が分岐している。
瀬川上流の台川の清流に臨む花巻温泉(単純硫化水素泉,59~80℃)は1923年に北部の台温泉から引湯した温泉で,ほかに志戸平(しどだいら),大沢,鉛,西鉛,新鉛など十数ヵ所の温泉があり,東北本線花巻駅からバスの便もよく,県立自然公園花巻温泉郷として東北有数の宿泊施設を誇っている。花巻駅から釜石線が分岐して陸中海岸に通じ,新花巻駅で釜石線と東北新幹線が交差する。また花巻空港があって名古屋,大阪,札幌と結ばれている。市内には宮沢賢治の生家や宮沢賢治記念館があり,また高村光太郎が晩年を送った山荘や記念館,花巻市博物館などがあり訪れる人が多い。花巻城跡にある鳥谷ヶ崎神社の祭日には,京都の祇園祭に似た花巻ばやしや鹿(しし)踊が演じられる。花輪堤の沼地にはハナショウブ群落(天)がある。
執筆者:川本 忠平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
岩手県中央部にある市。1954年(昭和29)稗貫(ひえぬき)郡花巻町と湯口(ゆぐち)、湯本(ゆもと)、宮野目(みやのめ)、矢沢(やさわ)、太田(おおた)の5村が合併して市制施行。1955年和賀(わが)郡笹間(ささま)村を編入。2006年(平成18)稗貫(ひえぬき)郡大迫町(おおはさままち)、石鳥谷町(いしどりやちょう)、和賀(わが)郡東和町(とうわちょう)を合併。江戸時代は盛岡藩の家臣北氏(きたうじ)が郡代となり、和賀、稗貫地方を支配した。また、奥州街道の宿駅、北上(きたかみ)川舟運の河港として栄えた。JR東北本線、釜石(かまいし)線、東北新幹線、国道4号、283号、396号、456号、東北自動車道が通じ花巻、花巻南の両インターチェンジがあり、花巻ジャンクションで釜石自動車道を分岐、花巻空港、東和の両インターチェンジがある。宮野目地区には花巻空港がある。
後背地は肥沃(ひよく)な平地が広がり、水稲を基盤に野菜・果樹・花卉(かき)栽培、酪農などが盛ん。豊沢ダム(とよさわだむ)の完成後(1961)10.2平方キロメートルが開田された。工業は肥料、精密機械、マッチ、バター、練乳、食品加工、木材、金属工場などがある。宮沢賢治の生家や同記念館、高村光太郎の山荘や記念館がある。大償(おおつぐない)地区と岳(たけ)地区に伝えられた早池峰(はやちね)神楽(国指定重要無形民俗文化財)は2009年にユネスコの無形文化遺産に登録された。花輪堤のハナショウブ群落(はなわつつみのはなしょうぶぐんらく)は国指定天然記念物。面積908.39平方キロメートル、人口9万3193(2020)。
[金野靜一]
『『花巻市史』全9巻(1962~1977・花巻市)』
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…人口7万1950(1995)。北上川西岸に位置する中心の旧花巻町は,中世には稗貫(ひえぬき)氏が鳥谷ヶ崎城を築いた地で,1591年(天正19)には南部氏の家臣北秀愛が居城して花巻城と改名したのち盛岡藩の要地として発展した。また,奥州街道の宿駅,北上川舟運の河港として栄えた。…
…東側の裾野は起伏がやや大きく幅が狭いが,利根川水系と信濃川水系の分水界となる。水系の発達は火山体を刻み始めた初期の段階にあり,鼻曲山に発し南麓を流れる湯川は火山体東・南斜面に発する支流を集め蛇行しながら千曲川に注ぐ。 植生は火山活動の影響をうけやすい北東斜面では高山草本帯が標高1400m付近まで異常に低下しているのが特徴である。…
※「花巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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