出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
作物栽培や植林を行う場合に畑や林地に植えつける若い植物を苗といい,木本植物の苗をとくに苗木と呼んでいる。また,苗を育成することを育苗といい,育苗を行う場所を苗床(イネの場合は苗代)という。苗半作といわれるように,苗の良否は植えつけ後の生育や収量に大きな影響を与え,栽培の成果を左右するので,育苗中の管理には十分注意を払い,茎が適度に太く,節間が徒長せず,根がよく張った無病の苗を作らなければならない。苗の育成方法は作物によって異なり,種子から育てる場合(実生苗という)と接木や挿木によって繁殖,育成する場合(接木苗,挿木苗という)がある。接木や挿木によって繁殖を行う作物では,繁殖に適した環境の下で増殖した個体(苗)を畑に移植するのが普通であるが,種子繁殖を行う作物では,苗床に種子をまき,苗を育てて畑に移植する移植栽培のほかに,畑に直接種子をまく直まき栽培を行うこともできる。近年では,移植の際に根が切断されたり,植えいたみが起こらないように多くの種類でポット苗を育てている。
執筆者:杉山 信男
実生苗が90%以上を占め,残りはほぼ挿木苗であるが,特別な用途には接木苗も使われ,また取木苗,伏条苗(樹木の根もとに近い枝を押し下げて土をかけて発根させた苗木)などもある。紙,ポリエチレン,ビニル,ピート,竹など各種の材料の容器で育てた苗木はポット苗または鉢付苗とよばれる。実生苗,挿木苗ともいわゆる床替えをすることが多いが,この操作を行ったものは床替苗とよび,植えつけのため林地に運ばれる苗木は山行苗または山出苗という。森林の中やその周辺に自然に発生した稚樹を苗木として使う場合には山引苗とよぶ。
執筆者:浅川 澄彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
作物の栽培に利用する比較的幼い植物体をいい、草本性植物については苗、木本性植物については苗木とよぶ。苗は種子を播(ま)いて育てる実生(みしょう)苗が一般であるが、株分(かぶわ)け苗、接木(つぎき)苗、挿木苗、取木苗などもある。またサツマイモの場合のように、種(たね)いもから芽生えた茎を切り取った、根のついていないものでも苗とよんでいる。
苗は普通苗床で集約的に管理して育て、一定の大きさになってから本畑に定植する。種子が発芽した幼若期は外界の影響を受けやすいので、その時期を苗床で人工的に保護して育て、抵抗力がついてから畑に出すのが苗の目的である。ほかに、自然の作期より早いうちから苗を育て、露地が生育可能気温になったらただちに移植して生育と収穫を早める目的などもある。苗の素質は移植後の植物の生育や収量に影響を及ぼすため、昔から作物栽培では苗半作とよばれるほど、健苗の育成が重要視されている。よい苗(健苗)とは、根張りがよく、茎が太く、葉は淡くもなく濃すぎもせず、徒長しないで堅めに育ったもので、病虫害や傷害のないものである。
[星川清親]
※「苗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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