客を招いて茶を供する会合の総称。その場合に茶を供する次第(必ず懐石料理を含む)方法を厳密な茶の湯の法則に従って行う場合は,今日では茶事と呼んで,茶会とは区別している。千利休時代の茶会,または単に会(内容は今日の茶事)と現代の茶会との違いを明確にするために〈大寄せ茶会〉という称が生まれた。利休時代の客の数は1人から数人であるが,今日の大寄せ茶会は,数ヵ所に茶席を設けて,1日に100人から1000人もの客に茶を供するのである。このような形式の原型は,1587年(天正15)10月1日に豊臣秀吉によって催された〈北野大茶湯〉で,このときの内容は,《北野大茶湯之記》(《群書類従》に収録)や当時の日記に記されている。北野天神社の拝殿を中心として,周辺の松原での野外,園遊の大催事であり,同時に名物茶道具の大展覧会であった。吉田兼見(1535-1610)の《兼見卿記》によれば,拝殿での来喫者だけで800人に及んだという。また〈茶湯所〉と書かれる,茶室や野点(のだて)の席も800余りというから,実際の参加者総数はもっと多かったと思われる。この大茶湯や,また秀吉の醍醐の花見会の意義は大きい。
近代に至っては益田鈍翁(益田孝)が,1895年に東京品川御殿山に催した大師会(初め3月21日,のちに5月21日,会場も変転して現在は根津美術館内庭茶室)と,1915年に京都鷹峰の光悦寺を会場として11月11,12,13日の3日間,五都の道具商が世話人となって催す光悦会がいわゆる茶会の代表的なものといえる。また各宗匠家の初釜茶会,四季おりおりの定例茶会,利休をはじめとする先匠の忌日の茶会,遠忌の催し(追善茶会)などを一般に茶会と呼んでいる。
→茶事
執筆者:戸田 勝久
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飲茶(いんちゃ)を中心とした会の総称。茶会という場合、現在二つのとらえ方がある。一つは、千利休(せんのりきゅう)による茶道成立後、前席で懐石(かいせき)、中立(なかだち)があり後席で濃茶(こいちゃ)と薄茶(うすちゃ)を喫するという、茶事の名で通称される茶会、一つは、薄茶や濃茶の席に点心(てんしん)がついた現代風の茶会である。茶会の語は唐代の詩人銭起(せんき)の詩句にみえ、文人の間でたしなまれた喫茶の会のことであった。日本では宋(そう)代禅院での茶礼が規準となった禅院茶礼が鎌倉時代におこり、南北朝の玄恵(げんえ)法印作とされる『喫茶往来』にその源流がみられた。その後「茶寄合(ちゃよりあい)」としての闘茶(とうちゃ)会が流行し、会所の時代を経て書院風建築の中での式法の整った会が生まれ、村田珠光(じゅこう)による草庵(そうあん)茶が創案されて庶民への浸透が図られた。一期一会(いちごいちえ)を観念とした一味同心、一座建立の精神が掲揚され、奈良の塗師(ぬし)松屋による『松屋会記』、堺(さかい)の豪商津田宗達(そうたつ)・宗及(そうきゅう)による『天王寺屋(てんのうじや)会記』などの茶会記録が残されるようになった。
[筒井紘一]
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飲茶を楽しむ会。古くは寺院の献茶儀式の集りから始まった。のち茶事(ちゃじ)とか茶の湯興行・茶寄合いなどといわれた。南北朝・室町時代の茶会はもっぱら闘茶(とうちゃ)会をさす。「二水記」の享禄3年(1530)11月条の「午後向 正親町第 有 茶会」の記事が初見。茶道成立後はその種類も多くなり,昼・夜・暁・朝・飯後(はんご)・不時(ふじ)・跡見(あとみ)・独客の各茶会がある。また季節によって大福・春・風炉(ふろ)・名残・口切りの茶会にわけられる。いずれも主客の一座建立(いちざこんりゅう)と一期一会(いちごいちえ)の観念が重視される。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…中国から移入された喫茶の習慣は,室町時代に茶の湯という芸能へと発展するにともない,独自の茶の道具やふるまい,思想,さらに茶のための建築や室礼(部屋の飾り方)などの要素をそなえるにいたった。これらの要素が総合的に表現されるのは茶会という一種の宴会,すなわち寄合の場で,その意味では茶道は最も洗練された宴会の一様式ということもできよう。茶道の様式は16世紀に〈わび(侘)茶〉として千利休により完成された。…
…中国宋から渡来し,鎌倉末期から室町中期にわたって爆発的な人気をよんだ茶会の形式の一つ。回茶とも貢茶とも別称されることがある。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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