日本大百科全書(ニッポニカ) 「華厳寺(中国)」の意味・わかりやすい解説
華厳寺(中国)
けごんじ
中国、山西省にある五台山(ごだいさん)の中心寺院。唐の則天武后(そくてんぶこう)(在位690~705)のとき、六朝(りくちょう)時代以来の大孚霊鷲寺(だいふりょうじゅじ)を改めて大華厳寺としたもので、唐代以前には東西二堂があり、北魏(ほくぎ)時代のおもかげを残していたが、唐代になって殿堂の大増建が行われ、日本の慈覚(じかく)大師円仁(えんにん)が訪問したとき(9世紀中ごろ)には、般若(はんにゃ)院、涅槃(ねはん)院、菩薩(ぼさつ)堂院、庫院(くいん)、善住閣院、閣院など12院が存在した。これらの12院を含む大華厳寺の境内は、五台山(ごだいさん)の菩薩頂(ぼさつちょう)から台懐鎮(たいかいちん)一帯にわたる広大なものであった。唐の中期、華厳宗第五祖澄観(ちょうかん)が文殊(もんじゅ)菩薩を安置する五台山華厳寺に住し、さらに天台宗の志遠(しおん)が天台学を鼓吹したため、華厳寺は仏教史上において一躍有名となったが、しだいに衰亡した。
[鎌田茂雄]