蔓脚類(読み)ツルアシルイ

デジタル大辞泉 「蔓脚類」の意味・読み・例文・類語

つるあし‐るい【×蔓脚類】

甲殻綱蔓脚亜綱の節足動物の総称。すべて海産。フジツボエボシガイカメノテフクロムシなどが含まれ、殻から蔓状の脚を出す。まんきゃくるい。

まんきゃく‐るい【×蔓脚類】

つるあしるい

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精選版 日本国語大辞典 「蔓脚類」の意味・読み・例文・類語

つるあし‐るい【蔓脚類】

  1. 〘 名詞 〙 節足動物甲殻綱の一亜綱。すべて海産で、エボシガイ類やフジツボ類の成体は固着性、他の類は棘皮動物や十脚類に寄生する。フジツボ類には堅い殻があり、植物のつるのような足を殻から出して水中にひろげ、水の中の食物を集める。体のやわらかい部分は、カニエビと同じように脱皮をして成長し、通常雌雄異体で、卵から数度変態して成体になる。寄生性のフクロムシは、体が袋状に変形し、宿主の体内に多数の根状突起を送り、その表面から栄養を吸収する。

まんきゃく‐るい【蔓脚類】

  1. 〘 名詞 〙つるあしるい(蔓脚類)

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改訂新版 世界大百科事典 「蔓脚類」の意味・わかりやすい解説

蔓脚類 (まんきゃくるい)

蔓脚亜綱Cirripediaに属する甲殻類の総称。海産で,成体が固着生活をし,剛毛を密に生じた蔓脚(つる状に変形した胸脚,つるあし)をもち,つるあし類とも呼ぶ。背甲は体と肢を包む外套(がいとう)に変わり,その外面に石灰質の殻板を分泌し,補強されている。第1触角は広い殻底または肉質の柄部の先にあって固着器となる。第2触角はふつう退化し,消失している。前体部は頭胸部に当たり,体の分節は不完全。ちょうど,エビが頭を基盤につけ,逆立して,頭胸部を後方に強くそり返らせたような形をとっている。したがって,口器と6対の2枝形の蔓脚が前体部の上面についている。複眼はない。腹部に当たる後体部は退化し,痕跡的となり,無肢,末端に1本の尾叉(びさ)をもつ。

 多くは雌雄同体。寄生生活をする種類では,程度に応じ,体制に退化と変化を生じ,幼生をみないかぎり甲殻類の仲間とは考えられないほどになったものもある。卵はノープリウス孵化(ふか)する。ノープリウスには逆三角形状の背甲があり,その前側角に各1棘(きよく)と尾端に1尾棘,尾棘下に2枝状の腹突起がある。メタノープリウスを経て,この類に特有なキプリスCypris幼生となる。これは初め自由浮遊生活をしているが,のちに他物に付着し,脱皮と同時に変態して,成体になり固着,あるいは寄生生活に入る。

 約900種が知られ,4目に分類される。(1)完胸目Thoracica 成体が6対の蔓脚をもち,体は殻板をもつ外套に包まれている。岩石などのほか,動物の骨格,体表にも固着し,カニの鰓腔(さいこう)やサメの皮膚などに埋もれて共生生活するものもある。柄部の有無,殻板の配列などによって次の3亜目に分類される。(a)エボシガイ亜目Lepadomorpha 成体の体は頭状部と肉質の柄部とに分かれている。300種以上で,カメノテミョウガガイエボシガイがある。(b)ハナカゴ亜目Verrucomorpha 成体は一見フジツボのようだが,周殻板の配列はフジツボと異なり左右不相称。柄部はない。深海に広く分布し,巻貝海綿などの骨格に着生する。約60種以上。(c)フジツボ亜目Balanomorpha 4~8枚の周殻板が癒合して円錐状の周殻をつくる。それらの配列は左右相称的。イワフジツボクロフジツボなど約300種が知られる。

(2)尖胸目Acrothoracica 成体は巻貝の殻やイシサンゴ類穿孔(せんこう)し,共生する。外套には殻板がなく,蔓脚も退化的で数も少ない。最大約2cm。ルリツボムシ,ハベヤドカリツボムシなど約30種。

(3)囊胸目Ascothoracica 成体は六放サンゴ類(イシサンゴ,スナギンチャクなど)や棘皮動物(ウミユリ,ヒトデ,クモヒトデなど)の外部および内部寄生虫。体を包む外套は二枚貝状の袋形に,あるいは樹枝形などに変形しているものがある。キンチャクムシ,ウミユリヤドリムシ,オカダシダムシなどが知られている。

(4)根頭目Rhizocephala おもに十脚甲殻類の腹部などに寄生する袋状の寄生虫。フクロムシなど200種以上が知られる。

 蔓脚亜綱にはもう一つ無脚目Apodaというのがあった。進化論で有名なC.ダーウィンは蔓脚類の研究も熱心に行った。大英博物館にはそれらの標本が今もたいせつに保存されている。彼は西インド諸島産のエボシガイの1種Alepas coronata外套腔に寄生していたうじ虫状の寄生虫を見つけ,研究の結果Proteolepas bivinctaと命名,口器はあるが,胸脚がまったくないなど,奇異な特徴が見られるとして,蔓脚亜綱中にとくに無脚目を創設してこれに属させたが,それ以来再度発見されなかった。しかし,近年,フランスのボケ・ベルドリーヌBocquet-Verdrine(1972)は地中海,北部大西洋産の直径3cmくらいのフジツボ,Balanus perforatusに寄生しているCrinoniscus equitansを詳しく研究した結果,この寄生虫の生活史上のある時期の形態が無脚類とされたものにまったくよく一致することを突き止めた。これによって久しく存在に疑問をもたれた無脚類は学問上消滅することとなった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蔓脚類」の意味・わかりやすい解説

蔓脚類
まんきゃくるい
barnacle

顎脚綱鞘甲亜綱蔓脚下綱 Cirripediaに属する甲殻類の総称。サンゴや貝殻に穿孔するツボムシ類,十脚甲殻類に寄生するフクロムシ類,海中の岩や大型動物に固着するフジツボ類に大別される。狭義には,フジツボ類だけを蔓脚類と呼ぶ。フジツボ類は柄のあるエボシガイ類(有柄目)と柄のないフジツボ類(無柄目)に分けられる。すべて海産。孵化の幼生ノープリウスは浮遊生活をするが,二枚貝状のキプリスになると海底におり,場所を定めて成体形に変態する。成体はすべて固着あるいは寄生性。固着性の種はその外側に石灰質の殻板を分泌し,体を内部に倒立させた形で納める。胴部の分節は不完全。蔓脚と呼ばれる胸部 6対の付属肢がよく発達する。化石は古生代シルル紀以来出土するが,現生種は約 800種。(→顎脚類節足動物

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