(読み)キョ

デジタル大辞泉 「虚」の意味・読み・例文・類語

きょ【虚】[漢字項目]

常用漢字] [音]キョ(漢) (呉) [訓]むなしい うそ そら から うつけ うつろ うろ
〈キョ〉
からっぽで何もない。むなしい。「虚無盈虚えいきょ空虚
うわべだけで中身がない。「虚栄虚飾虚勢虚名虚礼
うそ。いつわり。「虚偽虚言虚構虚実虚報虚妄
気力精気が足りない。「虚弱虚脱腎虚じんきょ
備えがないこと。すき。「虚虚実実
邪心を持たない。「虚心謙虚
「虚数」の略。「虚根
〈コ〉
むなしい。「虚空虚無僧
うそ。「虚仮こけ
難読虚貝うつせがい虚言そらごと

きょ【虚】

備えのないこと。油断。すき。「敵のに付け入る」
事実でないこと。うそ。いつわり。「と実が入りまじる」⇔じつ
中身・実体がないこと。むなしいこと。うつろ。から。
「人に実あって、偽り多し。そのしんもと―にして」〈浮・永代蔵・一〉
二十八宿の一。北方の第四宿。水瓶みずがめ座のβベータ星と小馬座αアルファ星をさす。とみてぼし。虚宿。
[類語]偽り法螺そら嘘っぱち嘘八百虚偽偽善まことしやか二枚舌はったり虚言虚辞そら言そら音もっともらしいでたらめ出任せ出放題荒唐無稽事実無根根も葉もない

うろ【虚/空/洞】

内部が空になっているところ。うつろ。ほら。空洞。「古木の―」
[類語]空間スペース空き中天空洞空虚から空っぽがら空きがらんどううつろ虚空もぬけの殻

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「虚」の意味・読み・例文・類語

きょ【虚】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. むなしいこと。内容のないこと。人のいないこと。空虚。うつろ。から。⇔実(じつ)
      1. [初出の実例]「常は竹の中の虚をば規模に云へども」(出典:史記抄(1477)一八)
      2. [その他の文献]〔礼記‐少儀〕
    2. 雑念や私欲などのないこと。また、わだかまりのない平明な心。虚心。〔易経‐咸卦〕
    3. 備えのないこと。すきがあること。油断。不用意。
      1. [初出の実例]「見其虚(キョ)則進、見其実則止」(出典:太平記(14C後)二二)
      2. [その他の文献]〔史記‐孫子伝〕
    4. 事実でないこと。⇔実(じつ)
      1. (イ) うそ。いつわり。そらごと。虚言。〔文明本節用集(室町中)〕
        1. [初出の実例]「そなたの身請をする我心底は、実か虚(キョ)かいふて見や」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
        2. [その他の文献]〔史記‐信陵君伝賛〕
      2. (ロ) 寓言。虚構。フィクション
        1. [初出の実例]「作のうちに作有て、虚の中に実をふくめり」(出典:俳諧・常盤屋の句合(1680)一八番)
    5. あな。すきま。「虚を漏りくる風」
    6. 漢方医学の用語で、不足の意。体の機能や症状が衰弱していること。また、元気や気力のない状態。虚弱。
      1. [初出の実例]「虚実(きょじつ) 有る物のの無くなったのを虚と云。又自汗盗汗或は不食して痩せ衰へなどするを虚と云ぞ」(出典:病論俗解集(1639))
    7. そら。大空。
      1. [初出の実例]「黒雲蓋虚」(出典:古事談(1212‐15頃)一)
      2. [その他の文献]〔管子‐心術上〕
  2. [ 2 ] 二十八宿の一つ。玄武七宿の第四宿。今の水瓶座のβ(ベータ)星とその隣の小馬座のα(アルファ)星との二個の星を合わせたもの。虚宿。とみてぼし。〔易林本節用集(1597)〕
    1. [初出の実例]「斗、牛、女、虚、危、室、壁の七宿、その並びやう蛇の亀をまとふが如し」(出典:制度通(1724)一)

うろ【虚】

  1. 〘 名詞 〙 内部がからになっているところ。うつろ。ほらあな。
    1. [初出の実例]「かの木のうろに、竹の葉おほへる物あり」(出典:曾我物語(南北朝頃)二)

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普及版 字通 「虚」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

(旧字)
人名用漢字 12画

[字音] キョ
[字訓] はかば・むなしい・うそ

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は虍(こ)。旧字はに作り、その字の下部はもと丘の形。丘は墳丘。古くはそこに聖地を作り、また墓地とされた。〔説文〕八上に「大丘なり」と訓し、「崑崙(こんろん)丘、之れを崑崙のと謂ふ」と〔山海経〕の説を引く。崑崙はもとジッグラト形式の神殿や聖所を意味する語であったらしく、死後の霊の帰するところとされた。廃墟・墟址の意より、現実に存しないもの、空虚・虚無の意となり、虚偽・虚構の意となる。

[訓義]
1. みやこのあと、大きなおか、あと。
2. はかば、やどり、霊のいるところ。
3. むなしい、うつろ、実体がないもの、こころ、そら。
4. うそ、いつわり。

[古辞書の訓]
名義抄 ムナシ・イツハリ・キラキラシ・ウイテ・オホソラ・ウツケタリ 〔立〕 イタヅラ・イツハル・カスカ・シロシ・ムナシ・ウツケタリ・ウツク・ソラソフ・カロシ・カクル・ハカル・トホレリ・アヤシ・ウツホ・アタヒスフ

[声系]
〔説文〕に声として・歔・を収める。・歔は唏の声をとる擬声語の声義を承け、〔説文〕九上に「鬼なり」と訓する字である。

[語系]
・墟khiaは丘khiuと声義近く、都邑はかつて丘上に営まれ、廃虚はまた墳丘の地となった。

[熟語]
虚闇・虚意・虚位・虚威・虚壱・虚一・虚暈・虚映・虚栄・虚盈・虚景・虚瑩・虚檐・虚園・虚遠虚仮・虚華・虚臥・虚懐・虚廓・虚喝・虚閑・虚簡・虚己・虚気・虚・虚匱・虚器・虚偽・虚旧・虚恭・虚筐・虚驕・虚襟・虚欽・虚空・虚形・虚契・虚・虚竭・虚見・虚・虚幻・虚言・虚夸・虚語・虚構・虚口・虚公・虚哄・虚荒・虚曠・虚行・虚耗・虚国・虚谷・虚困・虚左・虚坐・虚歳・虚士・虚死・虚指・虚辞・虚字・虚室・虚疾・虚実・虚日・虚弱・虚舟・虚処・虚徐・虚邪・虚称・虚象・虚飾・虚心・虚声・虚静・虚清・虚勢・虚設・虚説・虚船・虚素・虚造・虚托・虚託・虚脱・虚誕・虚淡・虚談・虚冲・虚中・虚澄・虚張・虚・虚恬・虚伝・虚殿・虚度・虚塔・虚・虚洞・虚堂・虚頓・虚貝・虚白・虚泊・虚薄・虚発・虚費・虚美・虚・虚文・虚聞・虚壁・虚放・虚報・虚慢・虚無・虚名・虚明・虚妄・虚誉・虚落・虚・虚霊・虚礼・虚戻・虚劣・虚労・虚陋・虚論
[下接語]
盈虚・貴虚・空虚・軽虚・謙虚・玄虚・孤虚・荒虚・四虚・実虚・充虚・乗虚・心虚・腎虚・清虚・静虚・潜虚・太虚・中虚・冲虚・恬虚・憑虚・平虚・碧虚・歩虚・抱虚・幽虚・養虚・凌虚

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【虚実】より

…〈虚〉を実体のないもの,うそ,偽り,〈実〉を実体のあるもの,まこととみる一般的な考え方と,〈虚〉は超越的な存在根拠であり,〈実〉はその具体的な現れであるという《荘子》風の考え方とがある。中国では古く《荘子》関係の思想書にこの言葉が見られ,以後詩文,書画,医学,兵学等の分野でもしばしば用いられた。…

※「虚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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