デジタル大辞泉
「謝」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しゃ‐・する【謝】
(古くは「じゃする」とも)
① いとまごいをして立ち去る。辞去する。立ち退(の)く。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※慈雲短篇法語(1804)「声聞の戒は、色心の
執着を離れずして受るが故に、壊すれば戒体も又随て謝する」
② 花などがしぼむ。しぼんで落ちる。凋落(ちょうらく)する。おとろえる。
※実隆公記‐明応五年(1496)閏二月一九日「長峯五十町、花既謝尽」
※日本教育史略(1877)文芸概略〈
榊原芳野〉「花謝して新葉を生ず」
[2] 〘他サ変〙 しゃ・す 〘他サ変〙
① あやまる。詫びる。謝罪する。
※蘇悉地羯羅経寛弘五年点(1008)中「但し来りて悔い謝(サアセ)は〈略〉彼に歓喜を施す」
② 感謝する。礼を言う。
※
今昔(1120頃か)九「鬼、甚だ喜て逈
に謝す」
※
太平記(14C後)四「誠に存命すとも謝
(ジャシ)難くこそ候へ」
③ ことわる。謝絶する。
※魚玄機(1915)〈
森鴎外〉「玄機は人を屏
(しりぞ)けて引見し、僮僕に客を謝
(シャ)することを命じた」
④ 恨みなどを晴らす。とり除く。払い落とす。たち切る。
※金刀比羅本保元(1220頃か)上「
遺恨のいたり、謝
(シャ)するところをしらず」
⑤ ひけをとる。譲る。
※本朝文粋(1060頃)一・貧女吟〈
紀長谷雄〉「綺羅脂粉粧無
レ暇、不
レ謝
二巫山一片雲
一」
[
補注](1)「謝」の字音は、呉音ジャ、漢音シャで、古くは濁音であった。
(2)(二)①の「蘇悉地羯羅経寛弘五年点‐中」の「謝
(サアセ)は」は、字音を
片仮名で正確に表記しようとした例である。
あやま・る【謝】
〘自ラ五(四)〙 (「あやまる(誤)」と同源)
※虎寛本狂言・
鬮罪人(室町末‐
近世初)「ちと強う当た事も御ざらう。其所で、まっぴらあやまったと申まする」
※
浄瑠璃・
源平布引滝(1749)五「事新敷
(あたらしき)一言
(ごん)。誤れなんどといふ事は、
武士の降参も同じ事。〈略〉誤らねば又何とする」
② 降参する。おそれいる。閉口する。まいる。
③ ごめんこうむる。辞退する。
※
洒落本・
通言総籬(1787)一「五丁ひももあやまるとかいって、黒のひらうちのちょんがけ」
※多情多恨(1896)〈
尾崎紅葉〉後「『それぢゃ西洋料理と為
(し)やう』『貴方
(あなた)も?』『俺は謝る』」
[語誌]「誤る」から「誤りを認める、誤りを許すことを請う」意に転じたものと思われる。古い例で「謝罪」の
意味に近いものとしては「石山寺本金剛波若経集験記平安初期点」に「虔
(アヤマル)誠」という例があり「つつしみ敬う」意と考えられるが、「謝罪」の意味が一般的になるのは、中世末から近世にかけてである。「
日葡辞書」にはこの意味の「謝る」の
項目はないが、「あやまりを請う」を「罪過あるいは
間違いを赦してもらうように願う」としており、過渡期的な
様相がうかがわれる。
あやまり【謝】
① 人のあやまちを許すこと。
② 自分の犯したまちがいをわびること。謝罪すること。
※日葡辞書(1603‐04)「Ayamariuo(アヤマリヲ) コウ〈訳〉誤ちのゆるしを乞う」
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉四六「盛潰したは妾(わたし)の罪であったに謝罪(アヤマリ)を其方で云ふて我(ひと)を困らする」
しゃ‐・す【謝】
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「謹で罪を謝さう」
しゃ【謝】
〘名〙 (古くは「じゃ」とも) 感謝。お礼。
※文明本節用集(室町中)「述レ謝 シャヲノブル」
※灰燼(1911‐12)〈森鴎外〉一六「彼等は言説を以て謝を鳴らさずに、行為を以て謝を鳴らす積りと見える」
おもな・う おもなふ【謝】
〘他ハ下二〙 礼を言う。感謝する。
※大唐西域記長寛元年点(1163)四「面(むか)ふて厚恩を謝(オモナヘ)む」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報