越す(読み)コス

デジタル大辞泉 「越す」の意味・読み・例文・類語

こ・す【越す/超す】

[動サ五(四)]
(越す)ある物の上を通り過ぎて一方から他方へ行く。また、難所障害となるものを通って、その先へ行く。「塀を―・す」「難関を―・す」「峠を―・す」
数量・程度がある基準以上になる。「一万人を―・す応募者」「気温が三〇度を―・す」
(越す)ある時期期間を過ごす。「年を―・す」「還暦を―・す」
(越す)追い抜く。「先を―・される」
(「…にこしたことはない」のように打消しの表現を伴って)…するのがいちばんよい。「早いに―・したことはない」
(越す)
㋐別の所へ移って住む。引っ越す。「新居へ―・す」
㋑(「おこし」の形で)「行く」「来る」の意の尊敬語。「どちらへお―・しですか」「またお―・しください」
[可能]こせる
[下接句]先を越すせんを越す峠を越す年を越す一山ひとやま越す
[類語](1越える踏み越える渡る通り越すまたぐ越境する/(2上回る超える過ぎる追い越す追い抜くはみ出す凌ぐ行き過ぎる超過する突破超越凌駕過剰オーバー

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「越す」の意味・読み・例文・類語

こ・す【越・超】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 一方から他方へやる。物の上を通って、向こうにやる。渡す。運ぶ。越えさせる。
    1. [初出の実例]「大坂につぎ登れる石群(いしむら)を手越(たごし)に固佐(コサ)ば固辞(コシ)かてむかも」(出典:日本書紀(720)崇神一〇年九月・歌謡)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 サ行五(四) 〙
    1. ( 自分自身を越えさせる意から転じて ) 物の上を通って一方から他方へ行く。
      1. [初出の実例]「わが大君の 行幸(いでまし)山越(こす)風の」(出典:万葉集(8C後)一・五)
    2. 他を抜いて先に出る。追い越す。
      1. [初出の実例]「大将を人よりこして大臣になして」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
    3. 向こうへ行く。また、こちらに来る。
      1. [初出の実例]「東路の其はらからは来たりとも逢坂まではこさじとぞ思ふ〈相模〉」(出典:後拾遺和歌集(1086)雑二・九四一)
    4. 時間の限定された長さや、区切りを渡る。時間、時節を過ぎる。経過する。多く、去年から今年、今年から来年など、年をわたることにいう。
      1. [初出の実例]「行としをうばと祖父やわするらん 計会すればとしもこされず」(出典:俳諧・竹馬狂吟集(1499)八)
    5. ある標準より上になる。ある数値を過ぎて上になる。以上になる。
      1. [初出の実例]「馬のくさわき、むながいづくし、ふと腹につくところもあり、鞍つぼこす所もあり」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    6. まさる。ぬきんでる。
      1. [初出の実例]「すがはらの大じんに、こす人もなかりけり」(出典:御伽草子・天神の本地(室町時代物語集所収)(室町末))
    7. 住む所を他に移す。引っ越す。移転する。
      1. [初出の実例]「ヤ今吉めは〈略〉またよし町へこしたかな」(出典:洒落本・妓者呼子鳥(1777)一)

越すの語誌

本来は、「越える」に対する他動詞であったと考えられる。古くは、生物の動作には「越える」を用い、無生物の風や波の動作に限って「越す」が用いられたと認められる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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