長崎県西彼杵(にしそのぎ)郡にあった旧町名(野母崎町(ちょう))。現在は長崎市南部の一地域。旧野母崎町は1955年(昭和30)野母、脇岬(わきみさき)、樺島(かばしま)の3村と高浜(たかはま)村の一部が合併して町制施行。2005年(平成17)長崎市に編入。旧町域は、長崎半島の南端部に位置し、島嶼(とうしょ)の樺島、中島を含む。国道499号が通じ、両島は樺島大橋で半島と結ばれている。産業は漁業を主とし、第二次世界大戦後イワシの最盛期には揚繰(あぐり)網66統を数えたが、現在は沖合延縄(はえなわ)漁業に転換し、企業的な雇用漁業として遠くは東シナ海、台湾沖にも出漁している。農業はビワ、サツマイモ、ミカンの栽培が行われ、脇岬町井上(いかみ)には亜熱帯植物園「サザンパーク野母崎」がある。赤瀬には長崎大学水産学部附属水産実験所があったが、1997年に改組して長崎大学水産学部附属海洋資源教育研究センターとなり、1999年から長崎市多以良(たいら)町に移転、さらに2005年に改組されて環東シナ海海洋環境資源研究センターとなった。半島の先端は、野母崎・脇岬の二つに分岐し、前者には、山頂の遠見(とおみ)番所跡を展望台に利用した権現(ごんげん)山があり、後者には陸繋島(りくけいとう)となっている祇園(ぎおん)山、弁天(べんてん)山があって樺島に相対する。樺島の古井戸にはオオウナギが生息し、「オオウナギ生息地」として国の天然記念物に指定されている。「みさきの観音」とよばれ信仰をあつめた観音寺の木造千手観音(せんじゅかんのん)立像は国指定重要文化財。野母の盆踊(ぼんおどり)は国選択無形民俗文化財。樺島灯台公園、国民宿舎「海の健康村」、海水浴場などがある。
[石井泰義]
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