デジタル大辞泉 「騒」の意味・読み・例文・類語 そう【騒〔騷〕】[漢字項目] [常用漢字] [音]ソウ(サウ)(呉)(漢) [訓]さわぐ1 さわぐ。さわがしい。「騒音・騒然・騒動/狂騒・喧騒けんそう・物騒」2 漢詩の一体。「騒体」3 文学。風流。「騒客そうかく・騒人/風騒」[難読]潮騒しおさい そう〔サウ〕【騒】 中国文学で、韻文の一体。屈原の「離騒」に由来する名称で、社会や政治に対する憂憤を述べたもの。騒体。楚辞体。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例 Sponserd by
精選版 日本国語大辞典 「騒」の意味・読み・例文・類語 さわぎ【騒】 〘 名詞 〙 ( 動詞「さわぐ(騒)」の連用形の名詞化。上代は「さわき」 )① 声や物音などがやかましいこと。さわがしいこと。[初出の実例]「風の共(むた) 靡(なび)かふごとく 取り持てる 弓弭(ゆはず)の驟(さわき)」(出典:万葉集(8C後)二・一九九)② 忙しさや心配事などで心が落ち着かないこと。また、そうしたときの混雑、取りこみ。[初出の実例]「たちこもの発(た)ちの佐和伎(サワキ)にあひ見てし妹が心は忘れせぬかも」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三五四)「たぐひなくゆゆしき御ありさまなれば、よにながくおはしますまじきにやと、天の下の人のさはぎなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)③ 戦乱、疫病などによる社会不安。[初出の実例]「辺(ほとり)の土(くに)未だ清(しつま)らず、余(のこり)の妖(わさはひ)尚梗(あ)れたりと雖ども、中州之地(うちつくに)復(ま)た風塵(サワキ)無し」(出典:日本書紀(720)神武即位前己未年三月(北野本室町時代訓))④ もめごと。あらそいごと。もんちゃく。[初出の実例]「『不忠の成敗。帯刀(たてわき)、放せ』ト帯刀を退け、抜刀にて大領、花道へ追ひかける。帯刀、思ひ入れ、また騒(サワ)ぎになる」(出典:歌舞伎・梅柳若葉加賀染(1819)大詰)⑤ 遊郭などを、にぎやかにひやかして歩くこと。「ぞめき」ともいう。[初出の実例]「上がた言葉に嶋原にてはさはぎ新町にてぞめきなどいふに同じ」(出典:浮世草子・新吉原常々草(1689)上)⑥ 酒席などでにぎやかに遊ぶこと。歌舞音曲ではやしたてること。また、その歌舞音曲。[初出の実例]「噪(サハ)ぎは両色里の太皷に本透(ほんすい)になされ、人間のする程の事其道の名人に尋ね覚え」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)二)⑦ 「さわぎうた(騒唄)」の略。[初出の実例]「この時深川の騒(サハ)ぎを弾く」(出典:歌舞伎・傾情吾嬬鑑(1788)序幕)⑧ 歌舞伎囃子の一つ。揚屋、茶屋などでの遊興を表わす鳴物で、大・小鼓、太鼓に三味線、唄をも添える。吉原での江戸騒ぎ、上方での踊り地、宿場での在郷騒ぎ(宿場騒ぎ・田舎騒ぎ)などの別がある。[初出の実例]「騒(サワ)ぎにて幕明く」(出典:歌舞伎・富岡恋山開(1798)三幕)⑨ ( 下に打消の語を伴って用いる ) その程度。そんな程度の事柄。[初出の実例]「平常(ふだん)から〈略〉如何にも憐れに見えたが、今夜は憐れ所の騒ぎではない」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉七)⑩ 大変なこと。簡単にはできないこと。[初出の実例]「なに持って行くのは騒ぎだよ」(出典:真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉五二) ぞめき【騒】 〘 名詞 〙 ( 動詞「ぞめく(騒)」の連用形の名詞化 )① さわぐこと。浮かれさわぐこと。さわぎ。[初出の実例]「藻塩焼く海士のまくかたならねども恋のそめきもいとなかりけり〈顕昭〉」(出典:六百番歌合(1193頃)恋一〇・一五番)② 遊郭・夜店などをひやかして浮かれ歩くこと。また、その人。ひやかし。素見(すけん)。[初出の実例]「当時のぞめきは、思ふ友をいざなひ、ここへ渡り、かしこへさしかけ、ざはつきめぐる貌(かたち)を云也」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一) そうがしさうがし【騒】 〘 形容詞シク活用 〙 ( 「さわがし(騒)」の変化したものか ) 乱れている。また、さわがしい。[初出の実例]「うちたるきぬのあざやかなるに、さうがしうはあらで、髪のふりやられたる」(出典:枕草子(10C終)一八七)騒の補助注記三巻本・能因本には「さはかしう」とある。 そうサウ【騒】 [ 1 ] 〘 名詞 〙 中国、戦国時代楚(そ)の屈原の「離騒」が南方の中国古代文学である楚辞の代表作であるところから、楚辞、または賦のこと。さらに広く中国の韻文文学をさす。[ 2 ] 楚の屈原の作った長詩「離騒」をいう。 さわが‐れ【騒】 〘 名詞 〙 騒がれること。やかましく言われること。苦言などをとやかく言われること。[初出の実例]「新しき年の御さはがれもやとつつましけれど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)初音) さいさゐ【騒】 〘 名詞 〙 さわぐこと。ざわざわすること。[初出の実例]「そそぎする嵐がさゐにゆらされぬ迎へにきませみつのあま人」(出典:散木奇歌集(1128頃)釈教) さわがし【騒】 〘 形容詞シク活用 〙 ⇒さわがしい(騒) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例 Sponserd by
普及版 字通 「騒」の読み・字形・画数・意味 騒常用漢字 18画(旧字)騷人名用漢字 20画 [字音] ソウ(サウ)[字訓] さわぐ[説文解字] [字形] 形声旧字は騷に作り、蚤(そう)声。〔説文〕十上に「擾(みだ)るるなり。一に曰く、馬を(か)くなり」とあり、の字義をとる。〔楚辞、離騒〕の「離騷」は「騷(うれ)へに離(あ)ふ」の意。離は罹、騷はの通用義である。[訓義]1. さわぐ、たちさわぐ、さわぎみだれる。2. うごく、うごきまわる。3. かく、こする。4. と通じ、うれえる、なげく。5. と通じ、なまぐさい。6. 〔離騒〕を祖とする詩賦の様式の名。[古辞書の訓]〔名義抄〕騷 サハグ・ウレヘ 〔立〕騷 サハグ・ナヅ・ウゴク 〔字鏡集〕騷 ウレフ・ウツ・ナヅ[語系]騷・suは同声。は〔広雅、釈詁四〕に「愁ふるなり」、〔説文〕十下に「動くなり」と訓する字。愁dzhiu、懆tsは声義近く、懆は〔説文〕十下に「愁へて安からざるなり」と訓する字である。[熟語]騒雅▶・騒客▶・騒瑟▶・騒擾▶・騒人▶・騒▶・騒然▶・騒騒▶・騒体▶・騒壇▶・騒動▶・騒乱▶・騒離▶[下接語]繹騒・狂騒・驚騒・喧騒・詩騒・騒・震騒・楚騒・荘騒・賦騒・風騒・紛騒・離騒・牢騒 出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報 Sponserd by
改訂新版 世界大百科事典 「騒」の意味・わかりやすい解説 騒 (そう)sāo 漢詩の一体。《楚辞》およびその形式や内容を模倣し,その呼称は《楚辞》の代表作である〈離騒〉に出る。韻文形式で助辞の〈兮(けい)〉を用いることが多く,内容はパセティックな悲哀の表明と主君への諷諫を中心とする。ただ安易な作品は〈無病の呻吟〉に陥りやすい。騒体の文学の受容とその特質については《文心雕竜(ぶんしんちようりよう)》弁騒篇に詳しい。後世,騒の概念をより広く用いて,古典的な文学作品を〈風騒〉(風は《詩経》の国風)と呼び,文学者を〈騒人〉と呼んだりもする。執筆者:小南 一郎 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報 Sponserd by