供養(読み)くよう

精選版 日本国語大辞典 「供養」の意味・読み・例文・類語

く‐よう ‥ヤウ【供養】

〘名〙 (pūjanā の訳語。進供資養の義で、仏・法・僧の三宝や父母師長、亡者などに供給し、資養することをいう) (サ変として用いられる場合、近世以前にはザ行にも活用した) 仏語。
① 本来は香華(こうげ)、灯明、幡(はた)、あるいは飲食、衣服、資材などの施物を行なうことを主とするが、また、精神的なものをも含める。その供える物の種類、供える方法、および対象によって種々に分類され、敬供養、行供養、利供養などがある。
※書紀(720)朱鳥元年六月(北野本訓)「百官人等を川原寺に遣て、燃燈(ねんとう)供養(クヤウ)す」
② 法会(ほうえ)を営むこと、死者の冥福を祈って回向する追善、施餓鬼(せがき)などのこと。また、開眼(かいげん)供養、鐘供養経供養などの仏教行事をいう。
※枕(10C終)一三五「故殿の御ために、月ごとの十日、経・仏などくやうぜさせ給ひしを」 〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ (僧の側から) 喜捨を受けること。また、施される飲食物、衣服などの布施をいう。
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「去ぬる七月より、修行にまかりありくに、くやう絶えて今日三日

きょう‐よう ‥ヤウ【供養】

〘名〙
① 仏、法、僧の三宝または死者の霊などに対して諸物を供えて回向すること。孝養(きょうよう)。くよう。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)前「重季等が供養(ケウヨウ)に、放生会するを見候へ」
② 食物などの世話をして親を養うこと。くよう。
※文明本節用集(室町中)「以刑罰平 是以薬石供養(キョウヤウ)後漢書〕」 〔史記‐聶政伝〕

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デジタル大辞泉 「供養」の意味・読み・例文・類語

く‐よう〔‐ヤウ〕【供養】

[名](スル)《〈梵〉pūjanāの訳。「きょうよう」とも》
死者の冥福を祈って法会を営むこと。また、開眼供養鐘供養経供養など寺院の仏教行事をもいう。供養会くようえ。「先祖の供養をする」
仏・法・僧の三宝や死者に、供物を供えること。また、その法会ほうえ
[類語]回向花供養施餓鬼

きょう‐よう〔‐ヤウ〕【供養】

くよう(供養)

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改訂新版 世界大百科事典 「供養」の意味・わかりやすい解説

供養 (くよう)

仏,菩薩,諸天(神)などに香華(こうげ),灯明,飲食(おんじき)などの供物(くもつ)を献ずること。サンスクリットプージャーまたはプージャナーpūjanāの訳。これらの語はもともと〈尊敬〉を意味し,したがって,相手に対する尊敬の念から香華などを捧げるのが供養で,この点,バラモン教でいう,なんらかの報酬を求めあるいは感謝の意を表すために神々に犠牲を捧げる〈供犠(くぎ)〉(ヤジュニャyajña)とはその意味を異にする。仏教は慈悲を重んじ殺生を禁じるため,ことさらに供犠に代わって供養の語を用いたともいう。
執筆者: 古代インドの宗教詩《バガバッドギーター》には,天に生じた父たちは犠牲として供せられた食物を奪われると天から落ちてしまう危険にさらされるとあり,バビロニアの《ギルガメシュ叙事詩》にも,大洪水が,神々に供せられた犠牲の食物を押し流してしまい,水が引き生き残った人々が再び犠牲を捧げると,神々が蠅のように群がり集まったと記述されている。このように動物供犠や供物が神々や死者を養う食物であると考える思想は広く見いだされる。

 仏教の経典に説かれているおもな供養の種類をあげると,二種供養(香華・飲食などの財物を供養する利供養と,教説のごとく修行して衆生を利益する法供養),三種供養(香華・飲食を捧げる利供養,讃嘆恭敬(さんだんくぎよう)する敬供養,仏法を受けとめて修行する行供養),四事供養(飲食,衣服,臥具,湯薬),密教の五供養(塗香,華,焼香,飲食,灯明),六種供養(閼伽(あか)(水),塗香,華,焼香,飲食,灯明),十種供養(華,香,瓔珞(ようらく),末香,塗香,焼香,繒蓋幢幡(そうがいどうばん),衣服,妓楽,合掌)などである。また密教では身と口と心の三業供養も説かれる。心業供養は運心供養,以心供養,心意供養ともいう。また供養する対象によっても区別される。二種供養は諸仏を供養する出纏(しゆつてん)供養と衆生に対する在纏(ざいてん)供養となる。さらに対象ごとに,死者の冥福のためにする追善供養,餓鬼のためにする餓鬼供養,虫のためにする虫供養,新しく造立した仏像,仏画,位牌に対する開眼供養,寺院や仏壇に仏像を迎える入仏供養,経文を書写して供養する開題供養,経供養,そのほか堂供養,鐘供養,橋供養などがある。

 民間の例としては,2月12月の8日に針仕事休み折れた針や錆びた針を豆腐にさし,あるいは蘇鉄の根元に埋めてその霊を供養する針供養をはじめ人形供養,茶筅(ちやせん)供養など供養の対象が無生物にまで及んでいる。あらゆるものに生命を認める仏教思想からの展開である。
供物
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普及版 字通 「供養」の読み・字形・画数・意味

【供養】きようよう(やう)

養いそだてる。また父母に孝養をする。晋・李密〔情事を陳(の)ぶる表〕に太守臣逵(き)、臣を孝に察し、後に刺臣榮、臣を秀才に擧ぐるも、臣供無きを以て、辭して命に赴かず。(くよう(やう)) 仏をまつり、また死者の霊に回向(えこう)すること。〔法華経、授記品〕供し、重讚す。

字通「供」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「供養」の意味・わかりやすい解説

供養
くよう

仏と法と僧(教団)の三宝(さんぼう)や死者の霊などに、行動(身)とことば(口)と心(意)の3種の方法によって供物(くもつ)を捧(ささ)げること。原意は「奉仕すること」「供え仕えること」。仏典では原語として頻度の高いのはサンスクリット語プージャーpūjāで、ヒンドゥー教でも宗教的供養を意味している。不殺生(ふせっしょう)を強調する仏教が、バラモン教の動物を犠牲にする供犠(ヤジュニャyajña)に対してとった生命尊重の儀礼の形式でもある。

 初期の教団では、衣服、飲食(おんじき)、臥具(がぐ)、湯薬を僧団に供養(四事(しじ)供養)したのをはじめとし、のちには土地や精舎(しょうじゃ)や塔廟(とうびょう)などを供養した。しかし、さらに供養に財と法の区別(二種供養)を認めるようになった。大乗仏教では、堂塔の供養よりも、読経や書写などの精神的供養が力説されて、恭敬(くぎょう)、礼拝(らいはい)、合掌(がっしょう)など、種々の供養法が増加した。また、仏以外にも、仏と同様の性格を特定の対象に認めて、供養塔が設けられたり、さらには一般の死者に対しても塔婆(とうば)供養などの回向(えこう)をすることにも用いられるようになった。このような形式から、供養のための法会(ほうえ)をもさしていうようになり、それには死者のために冥福(めいふく)を祈る追善(ついぜん)供養、餓鬼(がき)に施しをする施餓鬼(せがき)供養などがある。そのほか、俗に魂入れと称して、仏像に眼(め)を入れて新しく迎える開眼(かいげん)供養とか、経供養、鐘供養などがある。また1000人の僧を招いて食事などを供養する千僧(せんそう)供養会(え)とか、多くの仏教行事類を供養とよび、供養の意味は拡大していった。

[石上善應]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「供養」の意味・わかりやすい解説

供養
くよう
pūjanā

ヒンドゥー教において特徴的な崇拝の一形式。一般に偶像の形をとった神に,花や,足をすすぐ水などが捧げられる。神像が神殿から出され,食物を供えられ,再び神殿中に祀られるという形をとり,バラモンの臨席を得て犠牲を捧げるベーダ中心の複雑な形式をもった供犠 yajñaとは異なって,それと対照的に考えられるべきものである。仏教では,ブッダや,ブッダの教え,出家修行者への心身すべてをこめて種々な物を供えることをいうが,その内容によって,敬供養,行供養,利供養などの区別が立てられている。また,死者の霊などを弔うことも供養の一つと考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内の供養の言及

【千僧供養】より

…1000人の僧に供養すること。供養とは,仏法僧の三宝や父母,師長,故人に食物や衣服を供給すること。…

【鎮壇具】より

…それらの埋納物を一般に鎮壇具と称する。このまつりは仏教だけで行われたのではなく,神祇,陰陽道,道教によっても行われたが,発見される鎮壇具の多くは,仏教による供養に際して埋められたものである。発掘調査で出土した最古の例は飛鳥の川原寺塔跡出土品である。…

【瓶】より

…菩薩,とくに観音像の中には,この水瓶を手にした姿のものも少なくない。後者はおもに密教において,曼荼羅(まんだら)の諸尊の供養のために五宝,五香,五薬,五穀,香水などを収める容器として用いられ,宝瓶,賢瓶などともいわれる。いずれにしても,瓶は小乗の比丘の〈六物(ろくもつ)〉には含まれていないところから,とくに大乗になってから重視されるようになり,さらに密教において重要な法具とされるに至ったということができよう。…

※「供養」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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