( 1 )古くは「がくしょう」の読みで「大学」「国学」に学ぶ者や、寺院で専ら学問に従事する者を指した。近世には、一般に学問をする者を漢学系統で「がくせい」と呼んだと思われるが、それが、明治期の教育制度の確立と呼応して、具体的には英語の student の訳語として再登場し、一種の社会的身分を表わすようになった。
( 2 )「文部省布達第一三号‐明治五年(一八七二)八月三日」では大、中、小学、公、私学の別を問わず「生徒」としているが、「帝国大学令(明治一九年)第一五条」に「学生試験の件」とあり、また、「東京帝国大学官制(明治三〇年)第七条」にも「教授は〈略〉学生を教授し其の研究を指導す」とある。法令上で学生を大学に限ったのは、昭和二一年(一九四六)の帝国大学官制で、教授は「各学部に分属して其の講座を担任し学生を教授し其の研究を指導す」(第四条)とあり、一方、予科教授(専門部教授)は「生徒の教育を掌る」(第一四、一五条)としている。
学校ないしは教育機関で学ぶ者を、すべて総称して学生とよぶ場合もあるが、わが国では、学校教育法および各学校の設置基準等によって、高等専門学校、短期大学、大学および大学院などの高等教育機関で学ぶ者を学生と称する。高等学校以下の学校や専修学校などの生徒、児童、幼児の呼称と区別される。アメリカでは、中等学校以上の教育機関で学ぶ者はstudentとよばれる。近年、大学拡張や生涯教育の理念の展開とともに、一般成人、主婦、老齢者にも大学の門戸が開放され、学生の概念も大幅に拡大されている。学生の地位・身分に関する法的規定や条理解釈は、各国の歴史的、文化的伝統によって大きく異なる。わが国では、戦前・戦後の長期にわたって、ドイツの行政法の特別権力関係論に基礎を置く営造物理論が支配的で、学生は大学の包括的な支配権に服する管理権の対象にすぎなかった。戦後、私立大学を中心に、英米法の契約説の影響を受け、学生は自分自身の希望で受験し、試験の合格と授業料納入などの所定の手続完了とともに、大学との契約が成立し、学生は教育を受ける権利を保障されるとする。さらに、1960年代後半の学園紛争を契機として、旧西ドイツを中心に展開された構成員関係説の影響を受けている。これは、中世ヨーロッパで、「教師または学生の組合」としての自治的な団体として発展した大学の伝統を復活させるもので、大学を公法上の団体とみなし、学生を教職員や管理者と対等な構成員として位置づけるものである。
[金子忠史]
古代の学校で学んだ学生。令制では,中央の大学に大学生,地方の国学に国学生がおかれ,大宰府の府学にも学生がいた。そのなかで最も重要なのは大学生である。正規の有資格者は五位以上の貴族の子弟,東(やまと)・西(かわち)の史部(ふひとべ)の子であったが,六~八位の官人の子の志望者にも入学が認められた。入学年齢は13歳以上16歳以下と定められ,式部省が聡明な者を選んだ。大学生は主体となる学生400人と算生(さんしょう)30人であった。学生は博士・助教のもとで経学(けいがく)中心の学習を行い,秀才・明経(みょうぎょう)・進士(しんし)の試験に備えたが,実際の受験者はごく少数で,他は出仕以前の教養取得という程度であったらしい。728年(神亀5)に秀才・進士に対応する文章生(もんじょうしょう)が新設されると,明経のみと対応することになったが,その後も学生の語は用いられたので,明経生の語は経学分野を学ぶ学生を意味したものであろう。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…学問をする者,とくに若者を総称してほぼ明治期まで用いられた言葉。また,他家に住み込んで家事を手伝いつつ学ぶ学生のことをさす場合もある。漢語としての起源は古代中国までさかのぼるが,日本では江戸時代に主として他郷で学ぶ青年たちの称として用いられた。…
…これもいずれかといえば,一般教育,専門教育,諸能力の育成などの教育的機能を重視した規定である。【寺 昌男】
【大学の起源と歴史】
大学の起源は中世のヨーロッパにあり,教師・学生の一種のギルドに発している。〈大学〉をさすuniversity,〈教師〉をさすmasterなどの現代語は,本来は単に〈団体〉〈親方〉というギルドの用語であった。…
※「学生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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