江戸時代後半から、武蔵(むさし)国小川(埼玉県比企(ひき)郡小川町)を中心として漉(す)き出された厚手の和紙。細川紙の略。江戸で帳簿用などに盛んに消費されたが、普通は縦32センチメートル、横45センチメートル内外の楮紙(こうぞがみ)で、裁断せずに耳つきのままで売られたことから「端切らず」ともよばれた。古くから小川付近は大河原紙(おおがわらがみ)という紙を漉いていたが、江戸時代に紀伊国(和歌山県)高野山麓(こうやさんろく)の細川村から高野紙(こうやがみ)の優れた技術を導入し、土地の産業として育成した。細川は江戸の庶民に親しまれ、当時の大坂の紙商間では、細川は川根(かね)(川根村で漉かれた紙の名。河根とも書く)とともに高野紙をさし、小川産の細川は小川とよばれていたが、やがて細川の名は小川産紙を代表するまでになった。小川町では「細川紙技術者協会」が結成されて伝統技術が守られており、1978年(昭和53)に国の重要無形文化財に総合指定された。
[町田誠之]
また、細川紙は2014年(平成26)には「和紙―日本の手漉和紙技術」として、岐阜県美濃(みの)市の「本美濃紙」、島根県浜田市の「石州半紙(せきしゅうばんし)」(石見半紙)とともにユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。
[編集部]
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