銀行などの金融機関が顧客から預かるお金のこと。一定の利息を付けるのが一般的。現在は日銀のマイナス金利政策を背景に、大手銀の普通預金の利息は年0・001%程度となっている。銀行は集めた預金を企業や個人、国・地方自治体に金利を付けて貸し出しており、預金者への利息と貸出金利の差が銀行の収益となる。銀行の貸し出しが増えれば、世の中に回るお金が増え、経済活動は活性化する。逆に貸し出しが絞られれば、景気が冷え込む。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
銀行や金融機関に金銭を預託し、その保管と運用を依頼すること。法律的には消費寄託契約の一種であり、銀行や金融機関に元本の返還を条件に金銭の保管を委託することをいう。したがって、預金は金融機関側からは債務であり、預金者側からは金融機関に対する支払請求権である。一般に個人や企業の余裕資金がさまざまな目的のために金融機関に預金される。
[原 司郎・北井 修]
J・M・ケインズは『貨幣論』(1930)のなかで、預金を三つに分類している。すなわち、(1)所得預金(所得が消費されるまでの間預金されたもの)、(2)営業預金A(生産企業や商社が日常の余裕資金を預金したもの)、営業預金B(金融機関が日常の余裕資金を他の金融機関に預金したもの)、(3)貯蓄預金(所得のうち消費されない部分、すなわち貯蓄が預金の形で預入れされたもの)、これにもAとBがあり、Aは本来的に貯蓄を預金の形で保有しようとするものであり、Bは有価証券価格に弱気であるため、貯蓄者が当面預金するものをいう。これら3種類の性格の預金のうち、(1)と(2)は現金預金ともいわれ、要求すればいつでも払い出せる預金、すなわち要求払預金であるのに対して、(3)は貯蓄性預金といわれ、比較的長期に預入れされる。
アメリカでは、要求払預金demand deposit(小切手、手形の振出しによって払出しを行う預金)、貯蓄預金(7日間据え置き、それ以後は前日の通知で払い出すことができる預金)、定期預金time deposit(7日以上の一定期間預入れすることをあらかじめ義務づけられた預金)の3種類がある。
一般的に預金の特徴として、(1)元本保証であること、(2)流動性が高く、とくに要求払預金は支払い・決済手段として利用できること、(3)少額での資金運用が可能であること、などがあげられる。
日本では、預金の種類として、預入れ期間による区分から、要求払預金として当座預金(小切手の振出しによって払出しを行う預金)と普通預金(通帳式でいつでも預入れ、払出しができ、若干の利子が付される預金)の2種類があるが、広義では預金者が納税の資金にあてるための納税準備預金もこれに属する。また、貯蓄性預金としては、通知預金(7日間以上の据置き期間があり、2日前に払戻しの予告をすることが義務づけられている預金)と定期預金(3か月、6か月、1年、2年などという一定期間払戻しをしないことをあらかじめ契約した預金)とがおもなものである。定期預金にはこのほか期日指定定期預金(1年経過後、1か月前の解約予告で引き出すことができるが、3年までは1年ごとに複利で利子が自動的に付加される預金)がある。また、積立定期預金のように一定期間積み立てることが条件となっているようなものもある。定期積金も広義の貯蓄性預金といえる。これは契約金額を決め、一定の期間、一定金額を定期的に掛け込み、満期時に契約金額の給付を受けるもので、元来貯蓄銀行(1949消滅)が主業務としていたが、貯蓄銀行法廃止(1981)後は一般の預金型金融機関が取り扱っている。このほかの雑預金を一括して別段預金として処理している。さらに預金のなかに総合口座もある。これは、定期預金と普通預金に当座貸越の機能を加えることによって、1冊の通帳で、貯(た)める、払う、借りるという3機能を果たそうとするものである。
[原 司郎・北井 修]
預金金利は、第二次世界大戦前は銀行間の協定で上限が決められていたが、戦後は臨時金利調整法(1947制定)によって、大蔵大臣(現財務大臣)が発議をし、金利調整審議会の議を経て、日本銀行政策委員会が預金の種類ごとに預金金利の上限を決定する仕組みとなっていた。しかし、1979年(昭和54)に譲渡性預金(CD)が金利自由商品として創設され、その後、大口定期預金の金利自由化と、CDや大口定期預金の金利に連動して金利の上限が変動する市場金利連動型預金(MMC)の創設が行われた。1991年(平成3)には大蔵省(現財務省)が「今後の金利自由化スケジュール」を公表し、これに沿って自由化が進められることになり、同年から預入れ金額300万円以上の定期預金が自由金利となった。1993年にはMMCが廃止されて、定期性預金はスーパー定期預金、大口定期預金、期日指定定期預金という商品構成となり、金利は自由化された。そして1994年には、普通預金や当座預金などの流動性預金も含めて金利は完全自由化された。
なお、預金に対しては、第二次世界大戦後、貯蓄奨励の意味から少額貯蓄非課税制度(マル優制度)が導入されてきた。これは元本の合計が300万円以下の預金に対しては利子を非課税として取り扱うものである。しかし、この制度は1988年4月1日から原則として廃止され、それ以降は一律20%(国税15%、地方税5%)の分離課税が適用されることとなった。ただし、それ以降も65歳以上の高齢者や母子家庭など特別の預金者には350万円までの非課税制度が残っていたが、2006年1月以降は障害者などに限定した制度に改められている。
[原 司郎・北井 修]
金融機関は、預金を保有する場合には、払出しの請求に備えて支払準備を現金、中央銀行預け金のような資産でもたなくてはならない。預金に対するこのような支払準備資産の割合を支払準備率というが、とくに中央銀行預け金(準備預金)については、中央銀行が預金に対する一定割合の預入れを義務づける制度をもっている国が多い。これを準備預金制度といい、中央銀行の金融政策の重要な一手段となっている。日本の場合、都市銀行、地方銀行、信託銀行など準備預金の対象金融機関は、月初から月末までの1か月の平均の預金残高に該当する準備率を乗じて、所要準備額を算出する。準備預金の積み期間は、当月の16日から翌月の15日までであり、各金融機関は、この間の平均残高が所要準備額を上回るように、日本銀行の当座預金に準備預金を積み立てなければならない。預金準備率を引き上げると、銀行は中央銀行に、より多くの準備預金を積まなくてはならないので、貸出や有価証券保有など収益資産への運用は制約され、銀行の信用創造機能にも影響を与えることになる。
[原 司郎・北井 修]
銀行を受託者とする金銭の消費寄託契約のことをいう。預金はまた要物契約であり,契約が適法に成立するためには,目的物の引渡しを必要とする。銀行が目的物として受け入れるものには,現金だけではなく,小切手,手形,配当金領収証,利札,郵便為替証書などの各種支払証券がある。また手形貸付代り金,手形割引代り金,振込金,為替取立金などのいわゆる勘定の振替によるものであって,現実の金銭でないものを預金として受け入れることもできる。預金契約によって発生する預金者の銀行に対する金銭債権を預金債権という。債権者である預金者は,債務者である銀行に対し,期限の定めがないときはいつでも,また期限の定めがあるときは期限到来後いつでも,預金の払戻しを請求することができ,銀行はこれに応じて同種同額の金銭を返還しなければならない。これが預金契約の基本的内容であり,利子契約は通常随伴するにとどまり,預金契約の要素ではない。預金債権は,その預金者が特定し,かつ返還請求権者も特定しているから,法律上は指名債権であり無記名債権ではない。また,預金契約の成立後,銀行が預金者に対し交付する預金通帳や預金証書は,あくまで証拠のためのものにすぎず,預金債権の発生には預金通帳または預金証書の発行を要件としない。
預金は,その預入れの動機の面から,営業(性)預金,所得預金,貯蓄(性)預金,暫定(性)預金の四つに分類される。営業(性)預金とは,企業または個人がその営業資金の出納を銀行に代行させるために預け入れるもので,出し入れが頻繁で,出納預金とも呼ばれ,おもに当座預金がこれに該当する。所得預金は,個人所得者が日常の収入金や一時的な余剰金をいちおう預け入れ,必要のつどこれを払い出していくもので,普通預金が主としてこれにあたる。貯蓄(性)預金とは,当初から貯蓄または利殖の目的で一定期間預け入れるもので,その典型は定期預金であり,定期積金もこれに入る。暫定(性)預金とは,さしあたり使途の決定しない一時的な大口資金を利殖のために預け入れるもので,通知預金がこれにあたる。以上のいずれにも入らないものとして,租税納付資金の準備を目的とする納税準備預金,あるいは別段預金(雑預金ともいう)がある。さらに外国為替公認銀行では,非居住者円預金,外貨預金も取り扱っている。このほか,預金は要求払預金と定期性預金(固定性預金)とにも分類できる。要求払預金は,預金者の請求によりいつでも引き出すことのできる預金のことをいい,当座預金,普通預金がその代表的なものである。また通知預金もこれに準ずるものとされ,納税準備預金,別段預金も要求払預金のなかに含まれる。これに対し,定期性預金(固定性預金)とは,一定の期限を経過しなければ支払を受けることのできない預金をいい,定期預金,定期積金がこれに入る。定期性預金(固定性預金)に対する慣用語として,当座預金,普通預金,通知預金,納税準備預金,別段預金を総称して,流動性預金と呼んでいる。
銀行に預け入れられた預金は,実際には一時に全額払い出されるわけではなく,銀行は一定額を支払準備(支払準備率)として手もとにおき,残額を貸出しや有価証券投資に振り向けることができる。つまり預金は銀行の重要な運用資金源の一つであり,預金業務は銀行の受信業務の中心となっている。また預金量の大小・増減によって銀行の貸出しや有価証券投資額の大小・増減もだいたい決まってくるので,預金量は産業資金の供給量,ひいては産業活動の規模に対して決定的な影響を及ぼすことになる。預金量は国民の貨幣貯蓄,銀行の信用創造,財政収支,国際収支によって決定されるから,国民経済全体の反映ということができる。
執筆者:福島 治
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