包丁(読み)ホウチョウ

デジタル大辞泉 「包丁」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ちょう〔ハウチヤウ〕【包丁/×庖丁】

料理に使用する刃物。出刃でば包丁刺身さしみ包丁薄刃包丁などがある。包丁刀
一般に薄刃の刃物の称。畳包丁紙裁ち包丁・裁縫用の裁ち物包丁など。
料理をすること。料理。割烹かっぽう。「―始め」
「折ふし御坊は、見事なる鯉を―して御座ある」〈咄・きのふはけふ・上〉
包丁人」の略。
[類語](1洋包丁和包丁鰺切り包丁薄刃包丁菓子切り包丁鎌形包丁刺し身包丁西瓜切り包丁鮨切り包丁蕎麦切り包丁中華包丁出刃包丁菜切り包丁肉切り包丁文化包丁骨切り包丁柳刃包丁冷凍包丁/(2紙裁ち包丁畳包丁裁ち物包丁

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精選版 日本国語大辞典 「包丁」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ちょうハウチャウ【包丁・庖丁】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 庖(くりや)の丁(よぼろ)の意 ) 食事を調理する人。料理人。料理役。包丁師。包丁人。
    1. [初出の実例]「彘肩肉、赤凝脂、白登俎、更待庖丁手」(出典:経国集(827)一四・彘肩〈仲雄王〉)
    2. [その他の文献]〔荘子‐養生主〕
  3. ( ━する ) 料理すること。料理。割烹(かっぽう)
    1. [初出の実例]「この鯉は生きたるやうなる物かな。ほとほとはうちゃう望まむとぞ思へる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
  4. 料理のうでまえ。包丁を使うわざ。
    1. [初出の実例]「皆人別当入道の庖丁を見ばやと思へども」(出典:徒然草(1331頃)二三一)
  5. ( 「ほうちょうがたな(包丁刀)」の略 ) 料理に使用する刃物の総称。刺身包丁、出刃包丁、薄刃など。包刀。
    1. [初出の実例]「銚子、ひさけ、なへ、かなわ、包丁、菜刀等事可家具」(出典:蜷川文書‐八集・永正一七年(1520)三月八日)

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改訂新版 世界大百科事典 「包丁」の意味・わかりやすい解説

包(庖)丁 (ほうちょう)

料理用の刃物。本来は《荘子》に見える古代中国の名料理人の名で,転じて料理する人をいった。日本では〈料理すること〉をもいうようになり,料理する人を包丁人,包丁者,料理に使う刀を包丁刀と呼ぶ風を生じ,さらに包丁刀を略して包丁というようになった。包丁刀を単に包丁と呼んだ例は《今昔物語集》巻二十八に見られる〈鞘(さや)なる庖丁〉あたりが古く,それ以前は小刀,短刀の意味で刀子(とうす)と呼んでいた。《延喜式》内膳司の条下には,供御用の刀子として年間77枚が計上され,その中には〈蠣(かき)〉をむくためのもの10枚,〈鰒(あわび)〉を切るためのもの2枚も含まれていた。そして,同じ《延喜式》木工(もく)寮の条下には1尺以下のさまざまな長さのものとともに,アワビ専用らしい〈鰒切〉という刀子があり,その〈鰒切〉は同じ長さの〈一尺刀子〉の約3倍の鉄を要したことが書かれていることから考えると,カキやアワビ用のものは一般の刀子とは形状の異なるものだった可能性もある。室町期に入ると出刃(でば)包丁や菜刀(ながたな)が現れ,《毛吹草》(1638)には山城,摂津の包丁と菜刀,和泉の出刃包丁が名産として挙げられている。伊勢貞丈は〈古は魚鳥を切る刀をば庖丁刀と云,野菜を切る刀をば菜刀と云し也〉といっている。

 現在使われている包丁には次のようなものがある。出刃包丁は背が厚く,先のとがったもので,堅いものを切るのに適し,魚や鳥をおろすのに用いる。薄刃包丁は菜切包丁ともいい,刃が広く薄く,先のとがっていないもので,おもに野菜を切るのに用いる。刺身包丁は薄刃,細身のもので,先のとがったものととがっていないものとがあり,前者を柳刃後者蛸引(たこひき)と呼ぶ。洋風のものには,牛刀(ぎゆうとう)とも呼ぶ肉切包丁や,野菜の皮むきなどに用いるペティナイフがあり,パンやチーズを切る専用のものもある。なお,料理用以外にも薄刃の刃物で包丁と呼ぶものがある。布地皮革,紙などを切るのに用いる裁(たち)包丁,畳屋の使う畳包丁などがそれである。
ナイフ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「包丁」の意味・わかりやすい解説

包丁
ほうちょう

庖丁とも書く。台所(庖(くりや))の役人(丁(よぼろ))、すなわち料理人というのが本来の意。中国古代の思想家、荘子(そうし)の『荘子(そうじ)』「養生(ようせい)主篇」に「庖丁は文恵君のために牛を解く」とみえ、料理の名人庖丁が魏(ぎ)の文恵王のために牛を料理したことが記述されている。庖丁が料理人を意味するようになったのは、これによるともいわれる。これから転じて、料理すること、料理の技術をさすようになった。したがって料理人のことは、庖丁人、庖丁師、庖丁者(じゃ)とよばれた。また庖丁人・庖丁師などの語と並行し、それらの使う小刀を「庖丁刀(ほうちょうがたな)」とよぶようになった。『宇治拾遺(うじしゅうい)物語』に「いと大なるまな板に、ながやかなる庖丁刀を具して置たり」というのがその例である。さらに庖丁刀を略して「庖丁」と称するようになったわけであるが、室町時代中期の辞書『下学集(かがくしゅう)』に、庖丁を「刀の名なり」と注するのがその早い例である。この庖丁というのは、江戸時代初期の地誌『雍州府志(ようしゅうふし)』に、「凡(およ)そ庖厨(ほうちゅう)に於(お)いて魚肉を截(き)る刀を、大小を論ぜず倭俗総(わぞくすべ)て庖丁と謂(い)う」と説くように、魚・肉をさばくための刀である。野菜などには、別に菜刀(ながたな)とよぶものが使われていた。産地としては山城(やましろ)(京都府)、摂津・和泉(いずみ)(大阪府)が著名である。

[森谷尅久・伊東宗裕]

 調理のためには、包丁は欠かせないものの一つである。調理は非常に範囲が広いので、それに用いる包丁も、各目的に適したものが必要である。とくに和食では、包丁により料理の美しさを出すことが多く、包丁さばきの良否が問われるのもそのためである。その結果、現在ある包丁は、日本の場合40~50種もあるといわれるほどである。家庭では、通常、万能包丁、出刃包丁、菜切り包丁、ペティナイフ程度しか使わないが、専門家では、それぞれの流儀、あるいは料理の種類で包丁を使い分けしている。一方西洋料理では、日本ほど多くはないが、それでもかなりの種類がある。しかし中国料理では、中華包丁1本ですべてを行うこともあり、種類は少ない。包丁の材質により切れ味も異なるが、通常、鋼、ステンレスが使われる。新しい材質のものとしては、セラミックのものもできている。

河野友美・伊東宗裕]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「包丁」の意味・わかりやすい解説

包丁
ほうちょう

本来は料理人を意味したが,現在は料理をするときに用いられる刃物をいう。魚の骨など堅いものを切るための出刃包丁,魚肉を薄く切るのに用いる薄刃で細身の刺身包丁,肉類を切るための大型の肉切包丁,野菜類を切るための薄刃で刃が広く先端のとがっていない菜切包丁などが主要なものである。硬鋼を中央にして軟鋼を両側に張合せた両刃のものと薄い硬鋼の片面に軟鋼を張合せた片刃のものとがある。菜切包丁や果物用の包丁には両刃が用いられるが,出刃包丁や刺身包丁は普通は片刃である。かなり良質な鋼が用いられているが,最近の家庭用は大部分ステンレススチール製である。

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百科事典マイペディア 「包丁」の意味・わかりやすい解説

包丁【ほうちょう】

料理用の刃物。本来は《淮南子(えなんじ)》等に見える中国古代の名高い料理人で庖丁と書いた。転じて料理することをいい,料理に使う刀をさすようなった。幅の広い長方形薄刃の菜切包丁,細身の刺身包丁,背が厚く魚の骨など硬いものを切る出刃包丁などがある。また西洋包丁には先のとがった肉切り,波形のパン切り,小型のテーブルナイフなどがあり,ステンレス製品が普及している。

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食器・調理器具がわかる辞典 「包丁」の解説

ほうちょう【包丁/庖丁】

➀料理に使う刃物。和包丁と洋包丁がある。材質は鋼鉄・ステンレスが多い。◇「キッチンナイフ」ともいう。
➁料理人。
➂料理すること。また、料理の腕前。

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世界大百科事典(旧版)内の包丁の言及

【青銅器】より

…青銅でつくられた利器,容器,道具。青銅器時代はもとより,鉄器時代以降も用いられている。ここでは,人類史上特にその著しい発達が見られた,ヨーロッパ,オリエント地域の青銅器時代から鉄器時代のもの,および中国殷・周時代のものを中心に述べる。
【ヨーロッパ,オリエント】
 東アジアの青銅器が祭祀具として発達したのにひきかえ,ヨーロッパや西アジアの青銅器は実用品が多い。銅や青銅などの初期の金属は,石にかわって斧,手斧(ちような),剣,短刀などの利器の素材として利用されたところから,銅器時代や青銅器時代を設定する根拠となった。…

※「包丁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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