ロボトミー(読み)ろぼとみー

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロボトミー」の意味・わかりやすい解説

ロボトミー
lobotomy

脳葉(→大脳)の神経回路を脳のほかの部分から切り離す外科手術。前頭葉白質切断術ともいう。かつては,統合失調症,双極性障害(→うつ病),その他の精神疾患をもつ重篤患者に対する抜本的な治療法として実施された。1935年ポルトガルの神経科医アントニオ・エガス・モニスは,精神病患者に反復的な思考パターンを引き起こすと思われる神経回路を遮断するため,前頭葉前皮質に高純度のエチルアルコールを注入する手術を行なった。モニスはやがて脳内白質(→白質)を切断する専用の器具を開発し,前頭前野と視床をつなぐ神経線維の束を物理的に切り離した。手術の結果にはばらつきがあったが,当時は興奮状態,幻想,自己破壊行動,暴力などの症状を抑える治療法がほかにほとんどなかったことから,広く行なわれるようになった。1936年アメリカ合衆国の神経科医ウォルター・フリーマンとジェームズ・ワッツが改良を加え,1940年代には短時間で行なえる術式を開発し,多くの患者に実施した。ロボトミーを受けた患者の大部分は,緊張,興奮などの症状が軽減したが,無気力,受動的,意欲欠如,集中力低下,全般的な感情反応の低下などの症状も多く現れた。しかし,こうした副作用は 1940年代には広く報じられず,長期的影響はほぼ不明だった。ロボトミーが幅広い成功を収めたとして,モニスは 1949年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。1950年代半ばに入り,精神病患者の治療や症状緩和に効果的な薬が普及すると,ロボトミーはほとんど行なわれなくなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロボトミー」の意味・わかりやすい解説

ロボトミー
ろぼとみー

精神外科

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