オカルティズム
おかるてぃずむ
occultism
秘密、隠匿を意味するラテン語のoccult(-us)に由来する語で、本来は神秘、不可思議な事柄をめぐる観念と儀礼・慣行を意味したが、やがて広くあらゆる種類の呪術(じゅじゅつ)的、秘儀的、奇蹟(きせき)的な観念と儀礼・慣行をさすに至った。オカルティズムは、自然法則を超えてなお人間の運命や世界のあり方を左右しうる諸存在や原理、力が存在するとの観念・思考に基づいているので、科学的合理性によっては説明できない領域にかかわるものとされる。したがってオカルティストは、超自然的存在や原理や力を操作できる超能力の獲得と行使がその使命となる。千里眼的な透視力や予言力または精神力などへの探究は、降霊、霊媒、憑霊(ひょうれい)、祓魔(ふつま)、占星、手相、錬金、占い棒による水(鉱)脈探査、水晶占い、数秘学などの秘術を生み出すこととなる。
超能力の獲得、開発は、一定の伝承的な型に従い、師弟関係において行われることが多い。密教や修験道(しゅげんどう)にはオカルト的要素が多くみられる。オカルト的領域と宗教的領域とは重なり合っていることが少なくない。とくに超自然的存在と力を強調する宗教は、古代と現代とを問わず、オカルト的要素を多く備えている。一般に宗教の教義体系が整い、観念化が進むにつれ、オカルト的観念や儀礼・慣行は軽視され、排除されることが多い。
[佐々木宏幹]
『W・E・バトラー著、大沼忠弘訳『オカルト入門』(1975・角川書店)』
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オカルティズム
occultism
「隠されたもの」 occultaを認める思想およびそれに基づくいろいろな行動をさす。通常の認識では解明できない自然現象,人間的事象などがその対象となる。占星術,呪術などをさすが,歴史的には近代科学を準備したともみられる面がある。実証的実験に重きをおかないヨーロッパの古代,中世においては,政治学などの世俗的学問と並ぶ同等の学問であった。その方法には透視やテレパシーなどが用いられるが,これらは現代では学問的とはいえない。近代においてはバラ十字団やシェリングの学徒ケルナー,ツェルナーなどが,学問的復権をはかり,19世紀以来の神智学もこの系統に数えられる。
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「オカルティズム」の意味・わかりやすい解説
オカルティズム
ラテン語occultum(〈隠されたもの〉)に由来する語。〈隠秘学〉〈神秘学〉などと訳される。占星術,魔術,錬金術,心霊学など,多少とも秘教的な思弁と実践の総称で,擬似学問のニュアンスで俗用されることも多い。ただし,近代科学の諸原則から逸脱した学知をすべてオカルティズムとして排することは誤謬であって,当の近代科学がオカルティックな思潮に支えられて生まれたとの議論もある。芸術運動からいわゆるアングラ文化まで,オカルティズムが時代精神の形成に一定の役割を果たすことは,現代にあってもうかがえる事実である。
→関連項目神秘主義
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「オカルティズム」の意味・読み・例文・類語
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オカルティズム【occultism】
ラテン語のoccultum(〈隠されたもの〉の意)が語源。隠秘論,隠秘学などと訳され,(1)自然や精神生活について,近代科学の体系に組み込まれていない未知の諸現象を探究して,そこから隠された秘密を抽出し,(2)こうして取得した秘密の知を媒体にして,宇宙,自然,人間の現実をより高次の現実へと変容せしめようとする信仰,理論,技術をいう。これらの現象は,特異な能力にめぐまれた霊媒や超能力者を通じて発現することがあり,その際当事者の感覚器官が高度にたかまるあまり,テレパシー,透視,念力のような不可思議が見られ,また特定の個人や場所に結びついたお化け,幽霊,分身の現実化を招き寄せたりもする。
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