グリース(英語表記)grease

翻訳|grease

デジタル大辞泉 「グリース」の意味・読み・例文・類語

グリース(grease)

《「グリス」とも》
半固体状あるいはペースト状の潤滑剤。鉱油に金属石鹸せっけんまたは黒鉛などを混合したもの。軸受けやギア、機械の摩擦部などに用いる。
頭髪用の半固体状の油。
[類語]脂肪脂肪油油脂魚油香油オイル石油原油重油軽油灯油ガソリン揮発油精油

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精選版 日本国語大辞典 「グリース」の意味・読み・例文・類語

グリース

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] grease )[ 異表記 ] グリス
  2. 鉱油に金属石けんを混ぜた潤滑剤。軸受、歯車などの潤滑油、金属材のさび止めなどに用いられる。減摩油
    1. [初出の実例]「グリスのついた機械の空箱へ詰め」(出典:女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉一一)
  3. 頭髪につける、半固体状の油。

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改訂新版 世界大百科事典 「グリース」の意味・わかりやすい解説

グリース
grease

常温で半固体または固体の潤滑剤であって,各種機械の潤滑部分,とくに軸受に使われる。一般に石油系潤滑油あるいは合成潤滑油に増稠剤および添加剤を加えてつくる。増稠剤は,金属セッケン(金属の脂肪酸塩)あるいは非セッケン系の無機物(ベントン,シリカゲルなど),有機物(アリール尿素,銅フタロシアニンなど)である。添加剤は,構造安定剤,酸化防止剤,極圧添加剤,油性向上剤,さび止め剤,腐食防止剤,摩耗防止剤などである。

 グリースは,基油に脂肪酸または脂肪酸グリセリドを混ぜて加熱し,水酸化ナトリウムや消石灰を加えてケン化し,生成するセッケンを油中によく分散させ,冷却し,添加剤と基油の残りを加えてつくる。グリースの種類は,基油,増稠剤および添加剤の組合せによってさまざまである。そのいくつかを紹介する。

(1)カルシウムセッケン基グリース カップグリースcup greaseとも呼ばれ,精製された鉱油とカルシウムセッケンからつくられる。グリース状態を保持するために1%内外の水を含ませてあるので,100℃以上の高温では水分を失い,基油と増稠剤が分離する。したがって常用温度は約70℃以下とする。しかしカルシウムセッケンは水に不溶性であり,このため耐水性が優れており,水や水蒸気が触れる部分に用いることができる。

(2)アルミニウムセッケン基グリース モービルグリースmobile greaseとも呼ばれる。アルミニウムセッケンは耐水性で金属面に対する粘着性がよいが,融点が低いため耐熱性が劣る。機械的な安定性もよくない。自動車シャシに使われる。

(3)ナトリウムセッケン基グリース 繊維状の外観をもつのでファイバーグリースfiber greaseとも呼ばれる。安定性がよく,中程度の高温で用いられる。

(4)リチウムセッケン基グリース 耐水性,耐熱性に優れており,航空機,電動機など,また高級ベアリングなど,多目的用途をもつ。

(5)非セッケン系グリース セッケン以外の増稠剤(前述)を含むもので,耐熱性が高く,高温(125℃)でも使用でき,万能形である。

(6)グラファイトグリースgraphite grease カルシウムセッケンやナトリウムセッケングリースに4~6%のグラファイトをフィラーfiller(潤滑性能を高めるために配合される物質)として含む。車両の極圧部に使われる。
執筆者:


グリース
Johann Peter Griess
生没年:1829-88

ドイツの化学者,化学技術者。染料合成法として主要なジアゾ反応研究により,染料工業発展の基礎を形成した。カッセルに生まれる。はじめ父の後継ぎのため農学校に通ったが,のち工業学校に入った。1850年イェーナ大学,51年マールブルク大学に学ぶが学業を怠り,父の財産を飲みつぶしたため,A.W.H.コルベ教授の紹介で染料工場でアルバイトをすることになった。この経験が一生を決定し,57年復学して学位を取り,その後ロンドンに渡りA.W.vonホフマンの助手となる。染料研究に没頭して,58年ジアゾ反応を発見。62年より醸造会社で働き,64年カップリング反応を発見するなど染料合成法の開発に貢献した。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリース」の意味・わかりやすい解説

グリース(Johann Peter Griess)
ぐりーす
Johann Peter Griess
(1829―1888)

ドイツの有機化学者。工業都市カッセルに生まれる。ドイツの大学や工場を転々としたが、1858年マールブルクのコルベの研究室で、アミノ基を含む芳香族化合物に対する亜硝酸の作用を発見した。これが端緒となって、ホフマンの助手となりロンドンに渡り、王立化学学校でジアゾ反応の研究を始めた。1864年にはカップリング反応を発見、かくして染料の新合成法を開発した。ジアゾ反応は染料のみならず製薬の面でも、純粋の有機合成においても重要な地位を占めている。

[都築洋次郎]


グリース(潤滑剤)
ぐりーす
grease

半固体の潤滑剤で、潤滑油に金属せっけんなどの粘稠(ねんちゅう)剤を練り合わせてつくるバター状のものである。基油の潤滑油は通常鉱油であるが、特殊用途にはシリコーン油ポリエステル、ポリグリコールなどが用いられる。金属せっけんとしては、カルシウム、ナトリウム、アルミニウム、バリウム、リチウムなどの脂肪酸塩が多く用いられる。数種類のグリースのうち、鉱油とカルシウムせっけんからつくられるカップグリースがもっとも広く使用されており、粘度がきわめて高く、含有する粘稠剤が金属表面に吸着層を形成するため荷重に耐える性能が大きい。このため、軸受に対する回転軸の荷重の大きい箇所、給油しにくい箇所、潤滑油の流れ出すことを嫌う箇所などに使用する。グリースカップに一度給油しておくと長時間使用できる長所があるが、放熱性が悪いので、温度上昇がおこるという欠点がある。

[難波征太郎]


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化学辞典 第2版 「グリース」の解説

グリース
グリース
grease

常温で半固体または固体状の粘ちゅうな物質で,一般には液体潤滑油と増ちゅう剤からなる半固体または固体状の潤滑剤,すなわち潤滑グリースをいう.液体潤滑油には,一般に鉱油が用いられるが,合成油も用いられる.増ちゅう剤はセッケン系と非セッケン系に大別される.セッケンはLiセッケン,Caセッケンなどの金属セッケンが用いられる.非セッケン系は固体粒子分散型が多く,ベントナイトなどの無機化合物分散型と,ウレアなどの有機化合物分散型とに大別される.グリースは,主として次のような条件のときに用いられる.すなわち,高負荷,衝撃荷重,すべり速度が小さい,高温,点検が頻繁に行えない,外側からの汚染を防止する,ベアリングなどの間げきが大きい,潤滑剤のハネやしずくによる汚れを避ける必要のあるとき,などである.グリースにはチキソトロピーという現象がある.グリースにせん断力を与えるとせん断力の小さい間は流動を示さないが,大きくなると流動を起こして潤滑作用し,さらに大きくなると基油の粘性に近い状態になる.しかし,グリースへのせん断力が除去されるともとの固体状に戻る.この現象は,基油中での増ちゅう剤としてのセッケンがつくるミセル構造と関係している.


グリース
グリース
Griess, Johan Peter

ドイツ出身でイギリスで活躍した化学者.イエナとマールブルク大学で化学を学ぶ.29歳で化学工場に見習い工員として勤める.しかし,わずか数か月で失火事故を経験,工場全焼のため解雇され,マールブルク大学に復学した.短期間ではあったが,化学工場での経験は,かれを別人のようにかえ,A.W.H. Kolbe(コルベ)の実験室で学業と実験にまい進した.1858年ロンドン王立化学カレッジのR. Hoffmann(ホフマン)のもとで助手に推薦されるまでになった.1862年工業界に転じ,バートン・オン・トレントのオールソップ醸造所の技術士となり,終生その職を守った.新しいタイプの染料として,アニリンから反応性に富むジアゾ化合物を生成し,アゾ色素を得て,合成染料の開発に貢献した.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グリース」の意味・わかりやすい解説

グリース
grease

増稠剤を潤滑油に分散させ,必要に応じ適当な添加剤が加えられた半固体または固体状の潤滑剤。構造粘性を示し,潤滑部分では剪断により液体として作用する。外力を受けない部分では半固体であり,異物の混入を防いだり,流出しないなどの特長から,シール機構を簡素化できるため,各種軸受の潤滑剤として広く用いられている。防錆を主目的として使用されることもある。グリースには潤滑油と増稠剤の組み合わせにより多くの種類があるが,基本的な特性は増稠剤に支配されるため増稠剤の種類で分類されることが多い。増稠剤としては各種金属石鹸が使用されるが,現在では比較的欠点の少ないリチウム石鹸グリースが汎用グリースとして多用されている。耐熱グリースとしてはアルミニウムやリチウムの複合石鹸グリースであるウレアグリースなどが使用されている。潤滑油としては鉱物油が多いが,特定の用途では各種合成油も使用される。グリースの硬さは稠度で示され,9段階の NLGI番号で表示される。

グリース
Griess, Johann Peter

[生]1829.9.6. キルヒホスバハ
[没]1888.8.30. イギリス,ボールマウス
ドイツの有機化学者。イェナとマールブルク大学で学び,いったんは化学会社に勤めたが,再びマールブルク大学に戻り,A.コルベのもとで学ぶ。 1858年,当時ロンドンにいた A.ホフマンの招きでイギリスへ行き,ホフマンの助手になり,その後醸造会社に勤めた。ジアゾ化合物の反応について研究し (1860~66) ,カップリング反応を発見,これを応用して多くのアゾ染料の合成に成功した。

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百科事典マイペディア 「グリース」の意味・わかりやすい解説

グリース

液体の潤滑油金属セッケンその他の有機物,無機物を均一に分散させ,粘稠(ねんちゅう)度を増して固体状または半固体状とした潤滑剤。機械類の軸受,歯車,摺動(しゅうどう)部などに使用する。
→関連項目潤滑潤滑剤玉軸受

グリース

ドイツの有機化学者。コルベおよびホフマンに学ぶ。1858年ジアゾ反応,1864年カップリング反応を発見,アゾ染料合成の基礎をつくった。

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デジタル大辞泉プラス 「グリース」の解説

グリース

①1978年製作のアメリカ映画。原題《Grease》。同名の学園ミュージカルの映画化。監督:ランダル・クレイザー、出演:ジョン・トラボルタ、オリビア・ニュートン・ジョンほか。
②①の主題歌。アメリカのロック・ポップス・グループ、フォー・シーズンズのリード・ボーカリスト、フランキー・ヴァリが歌い、全米第1位を獲得。原題《Grease》。

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世界大百科事典(旧版)内のグリースの言及

【ジアゾ化】より

…第一級アミンRNH2を亜硝酸塩(通常,亜硝酸ナトリウムNaNO2を用いる)と反応させて,ジアゾニウム塩RN2を合成する反応(式(1))。 RNH2+NaNO2+2HX  ―→RN2X+NaX+2H2O  ……(1)   (X=Cl,HSO4,NO3,ClO4,BF4,PF6など) 1858年グリースJ.P.Griessによって発見。Rが脂肪族アルキル基の場合,ジアゾニウム塩は不安定ですぐに分解してしまうが,Rが芳香環(ベンゼン環やナフタレン環など)だと共鳴効果により安定化されているので,室温程度まで安定に存在するものも多い。…

【ジアゾジニトロフェノール】より

DDNPと略記。1858年グリースJ.P.Griessによって初めて合成された起爆薬の性質をもった化合物。日本では工業雷管電気雷管の起爆薬として用いられている。…

【ジアゾニウム塩】より

…Rが脂肪族の基の場合は安定に存在せず,したがって通常芳香族ジアゾ化合物ArN2Xをさす(Arはアリール基)。グリースJ.P.Griessにより1858年に発見された。最も普通の合成法は,アニリン類の塩酸塩に塩酸存在下,0~5℃で亜硝酸ナトリウム水溶液を反応させる方法である。…

※「グリース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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