しめ(読み)シメ(その他表記)Coccothraustes coccothraustes; hawfinch

デジタル大辞泉 「しめ」の意味・読み・例文・類語

しめ

尊敬助動詞「しも」の命令形》軽い敬意を含んだ命令要求を表す。…なさい。→しも
「いやいやさやうにしてはおそからふ。いそひでゆかしめ」〈虎明狂・武悪
[補説]室町後期に用いられ、目下の者に対しても使われた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「しめ」の意味・読み・例文・類語

しめ

  1. ( 尊敬の助動詞「しも」の命令形という。四段活用、ナ行変格活用の動詞の未然形につく ) 他者に対して、軽い敬意とともに、要求したり希望したりする意を表わす。…なさい。…ください。
    1. [初出の実例]「番衆を召時は、坊官はこちまゐれ、侍はこちまゐらしめ相替也」(出典:大乗院寺社雑事記‐康正三年(1457)三月二六日)

しめの語誌

( 1 )「しめ」「さしめ」の語源についてはいくつかの説があるが、尊敬の助動詞「す」の連用形に「給ふ」のついた「せたまふ」から、「(さ)したまふ」を経て、「(さ)しまふ」となり、更に「(さ)しもふ」「(さ)しも」が生じ、その命令形として「(さ)しめ」が成立したとする見方が有力。
( 2 )抄物や狂言などで広く用いられるが、命令形以外の用法は抄物に集中する傾向がある。狂言では相手に対する親愛の情を伴った勧誘・要求表現として用いられているが、近世期には実際の口語では衰退したと思われる。


しめ

  1. 〘 名詞 〙 魚「ひめじ(比売知)」の異名。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「しめ」の意味・わかりやすい解説

シメ
Coccothraustes coccothraustes; hawfinch

スズメアトリ科全長 16~18cm。暗灰色円錐形で太い。頭部は大きくずんぐりとし,目先と喉が黒く,ほかは赤褐色。頸の脇から後ろが灰色,肩や背は黒褐色で,腰は淡褐色は基部に目立つ白帯があり,その下側が青く,風切羽は黒い。胸以下の腹面は桃色を帯びた淡褐色。尾羽は黒く先端が白い。繁殖地はヨーロッパから東アジアカムチャツカ半島に及ぶ。ヨーロッパや中央アジアアムール川流域周辺では留鳥だが,ほかの繁殖地では夏鳥(→渡り鳥)で,越冬には地中海地方や東アジア中部,南部へ渡る。繁殖するのは山地森林だが,冬には公園や人家付近の高木によく飛来し,地上でも採食する。木の実,新芽などを主食とするが,夏季には昆虫類も多く食べる。日本には 10月に冬鳥として渡来するものが多いが,北海道本州北部の一部で繁殖もしている。「ちちっ,ちちっ」と鋭い声で鳴く。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「しめ」の意味・わかりやすい解説

シメ (鴲)
hawfinch
Coccothraustes coccothraustes

スズメ目アトリ科の鳥。全長約18cm,スズメよりひと回り大きい。ずんぐりした灰褐色の鳥で,円錐形の大きなくちばしが特徴。雌雄はほとんど同色。頭上は濃い褐色,眼先とのどが黒い。尾の先が白く,飛ぶときに少し開くので目だち,また翼の白い2条もよく見える。くちばしは先が鋭くとがり,冬は白黄色だが,夏は鉛色となる。行動はのっそりしている。ユーラシア大陸の温帯亜寒帯に広く分布する。日本では北海道で繁殖し,本州以南で冬を過ごす。また大陸から冬鳥として渡来するものが少なくない。林縁や疎林にすみ,とくに湿地林や川辺林を好む。1夫1妻でなわばりをもって繁殖する。落葉樹などの枝にわん形の巣をつくり,1腹4~5個の卵を産む。鋭くチッと鳴き,ときにスィーッという声を出す。明るい声でさえずる。冬は単独か小群で現れ,マツ林,二次林,農耕地,川原の雑木林などにすんで,種子,果実を食べる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「しめ」の意味・わかりやすい解説

シメ
しめ /

hawfinch
[学] Coccothraustes coccothraustes

鳥綱スズメ目アトリ科の鳥。全長約18センチメートル。頭部が大きく、尾が短いずんぐりとした形をしている。羽色は灰褐色で下面は淡く、翼は黒と白の帯模様がある。嘴(くちばし)は非常に太い。イギリスを含むヨーロッパ全土からアジアの亜寒帯にかけて、またイラン高原にも繁殖分布し、北の地方のものは冬にやや南下する。日本では、各地の落葉樹林に冬渡ってくるものが多いが、少数が北海道と本州北部で繁殖している。森林中の樹上に巣をかけ、5個ぐらいの卵を産む。たくましい嘴で堅果を割って食べることができ、おもに樹上で採食するが、地上にも降りる。冬は、都会の公園などでも見ることができる。

[竹下信雄]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「しめ」の意味・わかりやすい解説

シメ

アトリ科の鳥。スズメに似るが,大きく翼長10cm。くちばしが太い。体の上面は褐色,頸(くび)は灰色,翼は青黒色。ユーラシア大陸中部に分布。日本では北海道で繁殖し,本州以南には冬鳥として渡来,低地の林にすむ。渡りのときは小群をなすが,冬は単独で生活。おもに植物質を食べ,堅い木の実もくちばしで割る。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「しめ」の解説

〓 (シメ)
※〓は「鳥」の左に上から「人」+「干」。

学名:Coccothraustes coccothraustes
動物。アトリ科の鳥

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

岩石学辞典 「しめ」の解説

しめ

挟み

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のしめの言及

【案山子】より

…かかしは〈鹿驚(かがせ)〉の意から出たともいわれるが,一般には悪臭を発して鳥獣を追う〈嗅(か)がし〉が語源とされている。現在ではかかしの語が一般的であるが,これをソメという地方が長野や岐阜,愛知に分布し,徳島や種子島ではこれをシメという。ソメ,シメとも〈占〉に関係した言葉であろう。…

※「しめ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android