スコポラミン(その他表記)scopolamine

翻訳|scopolamine

デジタル大辞泉 「スコポラミン」の意味・読み・例文・類語

スコポラミン(scopolamine)

チョウセンアサガオなどのナス科植物の種子から抽出される、アルカロイドの一。臭化水素酸スコポラミンとして、鎮痙ちんけい薬や副交感神経遮断薬に用いられる。ヒヨスチン。

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精選版 日本国語大辞典 「スコポラミン」の意味・読み・例文・類語

スコポラミン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] scopolamine ) ナス科植物のヒヨス、ヨウシュチョウセンアサガオに含まれる、瞳孔散大、鎮痙(ちんけい)、分泌抑制などの作用のある、アトロピンに類似する物質。舞踏病などの鎮静不眠症などの催眠用に用いられる。ヒヨスチン。〔改訂増補や、此は便利だ(1918)〕
    1. [初出の実例]「媚薬と称して、この女にパントポンかスコポラミンあたりを使っていたのだろう」(出典:追われる女(1953‐54)〈平林たい子〉身悶えする女)

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改訂新版 世界大百科事典 「スコポラミン」の意味・わかりやすい解説

スコポラミン
scopolamine



ナス科のヒヨスやヨウシュチョウセンアサガオに含まれるアルカロイド。1分子の水を含んで結晶し,水にはあまり溶けないが,有機溶媒には可溶。左旋性を示す。薬理作用としては,抗コリン作用と中枢神経作用がある。抗コリン作用はアセチルコリンに対する拮抗作用で,副交感神経の伝達を遮断する。アトロピンの作用に似るが,散瞳作用は強い。中枢神経作用としては,鎮静作用により,まず疲労感,次いで眠気を起こし,眠りに導く(1~3mg)。とくに運動野における鎮静作用が強く,運動興奮による不眠や乗物酔いに有効。また中枢性の抗コリン作用もあるので,パーキンソン症候群にも有効である。バルビタールなどの催眠薬やモルヒネ,アヘンアルカロイドと配合すると,催眠・鎮痛作用が増す。気管支などの腺分泌や迷走神経反射を抑制するので,前麻酔に用いられる。しかし呼吸抑制作用も強まるので,注意を要する。スコポラミンはかつて麻酔分析にも用いられた。なお,一般には臭化水素酸スコポラミン(これは水に溶けやすく有機溶媒に難溶)の形で用いられる。劇薬に指定されているが,1個中の含有量が0.25mg以下の薬剤は普通薬とされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スコポラミン」の意味・わかりやすい解説

スコポラミン
すこぽらみん
scopolamine

ナス科の植物のヒヨスの種子や葉、ヨウシュチョウセンアサガオ、シロバナチョウセンアサガオの種子などから得られるアルカロイドの一つで、ヒヨスチンhyoscineともよばれる。

 ヒヨスチアミンとともに存在し、日本薬局方にはスコポラミン臭化水素酸塩水和物として収載されている。副交感神経遮断薬で、その作用は一般的にアトロピンより速く、消失も速い。鎮けい剤として麻薬と併用して用いられる。代表的なものにアヘンアルカロイドスコポラミン注射液、弱アヘンアルカロイドスコポラミン注射液がある。麻酔前投与薬としても用いられ、また、特発性および脳炎後パーキンソニズムを適応とする。

 また、スコポラミン臭化水素酸塩水和物の注射液のほか、誘導体であるブチルスコポラミン臭化物(錠剤、注射液、坐薬(ざやく))、メチル硫酸N‐メチルスコポラミン(錠剤)が、それぞれ胃・十二指腸潰瘍(かいよう)などのけいれん性疼痛(とうつう)の緩和に繁用されている。

[幸保文治]

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化学辞典 第2版 「スコポラミン」の解説

スコポラミン
スコポラミン
scopolamine

C17H21NO4(303.36).ヒオスシンともいう.種々のナス科に含まれるトロパンアルカロイドの一つ.とくにチョウセンアサガオDatura,ハシリドコロScopolia,ヒヨスHyoscyamusなどに多く含まれている.油状物質.-28°(水).一水和物は融点59 ℃.熱湯,エタノール,エーテル,クロロホルムに易溶.抗コリン作用をもち,アトロピンと同様に,散瞳(どう)作用があり,乗物酔いを防ぎ,またパーキンソン病の治療薬となる.医薬としては,臭化水素酸塩(C17H22BrNO4,融点195 ℃)を用いる.口内乾燥,興奮,言語障害,放尿困難などの中毒作用をもつ.弱く加水分解するとトロパ酸スコピンになる.[CAS 51-34-3]

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百科事典マイペディア 「スコポラミン」の意味・わかりやすい解説

スコポラミン

化学式はC17H21O4N。鎮痛・鎮静薬。アトロピンとともにナス科植物などに含まれるアルカロイド。散瞳(さんどう)作用,中枢神経抑制作用が強い。臭化水素酸塩は無色〜白色結晶または粉末,苦味無臭で,加速度病(乗物酔い・動揺病),パーキンソン症候群などに鎮静・鎮痙(ちんけい)剤として用いるほか,手術時の麻酔補助および無痛分娩(ぶんべん)に用いる。毒薬。
→関連項目チョウセンアサガオロートエキス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スコポラミン」の意味・わかりやすい解説

スコポラミン
scopolamin

ヒヨスチンともいう。アトロピンと同様,ベラドンナ,ロート,マンダラ,ヒヨスなどのナス科の植物の葉や根に含まれるアルカロイド。副交感神経遮断剤である。抗アセチルコリン作用はアトロピンと同じである。中枢神経系に対しては,アトロピンがまず興奮的に作用し,次いで抑制に移るのに対して,スコポラミンは最初から抑制的に作用する。主として運動機能の興奮を抑制し,睡眠を誘発するが,感覚機能抑制作用はない。臨床的には,鎮痙,鎮静の目的のほか,精神病の発揚状態,パーキンソン症候群のように筋強直や振戦をきたす疾患,麻酔前投薬,消化性潰瘍などに,臭化水素酸スコポラミンが用いられる。副作用は一般の副交感神経遮断剤と同様である。

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世界大百科事典(旧版)内のスコポラミンの言及

【チョウセンアサガオ】より

…チョウセンアサガオやD.inoxia Mill.の花を洋金花(ようきんか),種子を曼陀羅子(まんだらし)という。ヒヨスチアミンのほかにスコポラミンscopolamineを含む。花は麻酔作用が強く,中医方で他の生薬と配合して筋肉注射による外科手術用全身麻酔剤とし,また胃痛,リウマチ性関節痛に用いられる。…

【ハシリドコロ】より

…根茎は生薬のロート根(こん)となり,ベラドンナの日本産代用品とする。有毒成分は複数のアルカロイドで,ヒヨスチアミンhyoscyamine,スコポラミンscopolamineなどを含み,胃痛,胃痙攣(いけいれん),十二指腸潰瘍などに用いられるロートエキスやアトロピンatropine(ヒヨスチアミンのラセミ体)の製造原料とする。 ハシリドコロ属はヨーロッパ,ヒマラヤ,東アジアに7種が知られ,すべて有毒植物である。…

【ヒヨス】より

…葉からとったヒヨスエキスが薬用となる。鎮痛・鎮痙(ちんけい)作用のあるアルカロイド,ヒヨスチアミンおよび少量のスコポラミンscopolamineを含む。アルカロイドの原料植物として世界各地で栽培される。…

【自律神経薬】より

…臨床上の用途としては,瞳孔散大,制汗,胃酸分泌抑制,消化管運動抑制,気道分泌抑制などがある。天然アルカロイドとして,アトロピン,スコポラミンがあるが,それらの化学構造を変換して多数の合成代用薬がつくられている。
[自律神経節興奮薬ganglion stimulant agent]
 自律神経節細胞を興奮させる天然アルカロイドとしては,ニコチンとロベリンが古くから知られている。…

【チョウセンアサガオ】より

…チョウセンアサガオやD.inoxia Mill.の花を洋金花(ようきんか),種子を曼陀羅子(まんだらし)という。ヒヨスチアミンのほかにスコポラミンscopolamineを含む。花は麻酔作用が強く,中医方で他の生薬と配合して筋肉注射による外科手術用全身麻酔剤とし,また胃痛,リウマチ性関節痛に用いられる。…

【ハシリドコロ】より

…根茎は生薬のロート根(こん)となり,ベラドンナの日本産代用品とする。有毒成分は複数のアルカロイドで,ヒヨスチアミンhyoscyamine,スコポラミンscopolamineなどを含み,胃痛,胃痙攣(いけいれん),十二指腸潰瘍などに用いられるロートエキスやアトロピンatropine(ヒヨスチアミンのラセミ体)の製造原料とする。 ハシリドコロ属はヨーロッパ,ヒマラヤ,東アジアに7種が知られ,すべて有毒植物である。…

【ヒヨス】より

…葉からとったヒヨスエキスが薬用となる。鎮痛・鎮痙(ちんけい)作用のあるアルカロイド,ヒヨスチアミンおよび少量のスコポラミンscopolamineを含む。アルカロイドの原料植物として世界各地で栽培される。…

【有毒植物】より

…そのため昔から宗教儀式に用いられた形跡がある。ナス科のチョウセンアサガオ,ハシリドコロなどはスコポラミンやヒヨスチアミン(アトロピン)などのアルカロイド成分が副交感神経の働きを抑え,大量では中枢を麻痺させるので瞳孔の散大,口渇,腹痛をおこしついには狂騒の果てに痙攣を生じ心臓麻痺による死を招く。世界にさきがけて全身麻酔を行った華岡青洲の通仙散には,チョウセンアサガオの葉が用いられた。…

※「スコポラミン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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