日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
タバコ(ディモフの小説)
たばこ
Тютюн/Tyutyun
ブルガリアの作家D・ディモフの2巻からなる長編小説。1951年刊。作者は、ブルガリアの資本主義的経営の典型であるタバコ工場を舞台に、共産主義者や労働者の対資本家闘争、ブルガリアのブルジョアジーが背負った歴史的運命、その罪と不道徳性などを描きつつ、個人が集団のなかで孤独になる問題を扱い、ブルガリア文学では未知の、資本主義社会における心理的迷路に立ち入ってみせた。発表されるや大きな反響をよび、ディミトロフ賞を受賞したが、作者は翌52年、作家、批評家、読者による討議の結論を入れて補足改訂した。以来ベストセラーを続け、61年にはN・コラボフにより映画化もされた。十数か国語に訳されている。
[真木三三子]
『松永緑弥訳『タバコ』全二冊(1976、77・恒文社)』