①について、英語では、プレーイングカード、または単にカードと呼ぶが、明治初期に来日した西洋人たちがカードでゲームを行なっている時、このことばをしばしば使ったため思い違えて使われるようになった。
室内ゲーム用具の一種。正式にはプレーイング・カードplaying cardまたは単にカードcardという。日本ではトランプとよぶことが多いが、もともとトランプtrumpとは、カードゲームの用語で切札(きりふだ)のことをいい、カードのことをトランプというのは日本だけである。明治初期、来日した西洋人たちのカードゲームをそばで見ていた日本人が、しばしば用いられるトランプということばを、カードそのものの名称と間違えて使ったものといわれている。「西洋かるた」とよばれたこともある。
現在一般に用いられているカードは、52枚のカードと、ジョーカーjokerが1枚または2枚ついて1組になっている。その内容は、スペード♠、ハート♥、ダイヤモンド♦、クラブ♣のマークをもつ4種のスーツsuitsからなり、各スーツにはA(aceエース)、K(kingキング)、Q(queenクイーン)、J(jackジャック)、10・9・8・7・6・5・4・3・2の13枚があり、合計52枚である。K、Q、Jを絵札とよぶ。これが現在の標準的な1組であるが、国によっては違う枚数の1組を使っている。たとえばスペインでは48枚、イタリアでは40枚、そのほか36枚、32枚、24枚などの1組を用いている所もある。また各スーツのマークも違ったものもある。
[高木重朗]
カードの起源については、多くの説があるが、いずれも確証もなく不明な点が多い。そのおもな起源説は次のとおりである。
(1)中国起源説 古代の人が使用した占い用の矢が変化し、占い用の棒になり、さらにこの棒がゲームに使われるようになり、中国において紙の発明によって棒のかわりに細長いカードが使われるようになった。これは紀元前2世紀から紀元後2世紀の間に初期の形態がつくられたと推定される。またヨーロッパの古いカードのスーツと古代中国のカードのスーツには類似がみられる。この中国のカードがシルク・ロードを通じてヨーロッパに伝えられたとするのが中国起源説で、もっとも有力な説とされている。
(2)インド起源説 カードと将棋には類似点が多く、将棋がインドで発明されたのはほぼ確実なので、カードもインドで発生したのだとする説と、インドの古代のカードとヨーロッパのカードに類似点があるので発生をインドと推定する説とがある。
(3)エジプト起源説 18世紀にカードの研究家クール・ド・ジェブランが唱えたものである。これは、ヨーロッパにおける古いカードの形態であるタロットの大アルカナ22枚の寓意(ぐうい)画が、古代エジプト哲学の影響を受けていることから、発生をエジプトに求めたものである。
以上のようにいろいろな起源説があるが、確実なのは、東洋で発生しそれがヨーロッパに伝えられ現在の形態になったということである。
[高木重朗]
東洋に発生したカードがヨーロッパに伝わったのは11世紀から13世紀の間と推定され、14世紀には確実な証拠が残っている。パリの国立図書館にフランスのシャルル6世のために描かれたカードが17枚所蔵されているが、これは1392年のもので、現存する最古のカードである。
東洋からヨーロッパに伝わったことについて、もっとも有力な説は、ロマ(かつてジプシーとよばれた)が持ち込んだという説であるが、このほかイスラム教徒が文芸・娯楽とともに持ち込んだという説、および11世紀に遠征した十字軍の兵士が持ち帰ったという説などがある。
[高木重朗]
tarot (cards) ヨーロッパにおける古い形態はタローtarot(フランス語)、タロッキtarocchi(イタリア語)、タロックtarok(ドイツ語)とよばれているカードである。これはイタリアでつくられたと推定されるが、他の説もある。タローは日本では一般にはタロットとよばれている。
タロットは、アツウatoutとよばれる切札22枚(正しくは21枚と添札1枚)と56枚のカードの計78枚1組である。22枚の切札は、1から21までの番号をつけてある寓意画の札と道化を描いた添札(そえふだ)1枚からなっている。寓意画は時代によって異なるが、一般的なものは、魔術師・女教皇・女帝・皇帝・法王・恋人・戦車・正義・隠者・運命の車輪・権力・吊(つ)るし人・死・節制・悪魔・塔・星・月・太陽・審判・世界である。これらのカードは人生の縮図であり、人間の種々の欲望や活動を表したものである。添札には、おかしな服装をした道化が曲事(くせごと)と悪徳の詰まった袋を背負って歩いている絵が描かれている。この添札が現代のジョーカーjokerになった。ほかの56枚のカードは、剣・棍棒(こんぼう)・聖杯・貨幣の4種のスーツがあり、各スーツは1から10までの数のカードと王・女王・騎士・兵士の絵札からなっている。剣は王侯・貴族、棍棒は農民、聖杯は僧侶(そうりょ)、貨幣は商人を象徴したもので、これは中世における社会階級を表している。タロット78枚のうち22枚のアツウを大アルカナ(あるいは大タロット)、残りの56枚を小アルカナ(小タロット)とよんでいる。
[高木重朗]
14世紀の末期から15世紀の初頭に、タロットから22枚の大アルカナを落として56枚1組のカードがフランスでつくられた。これが基になり、絵札のうちの騎士がなくなり、各スーツ13枚、計52枚1組の現在のカードになった。現在のカードで兵士・召使いを表すカードをジャックとよぶのは、ジャックという名が、日本でいう太郎などと同じに一般的な名前だからである。
各スーツのマークも、剣・棍棒・聖杯・貨幣からいろいろと変化した。ドイツではどんぐり、葉、ハート、ベルのスーツを、フランスでは剣、ハート、ダイヤモンド、棍棒のスーツを使っている。現在のスーツ、スペード、ハート、ダイヤモンド、クラブはフランスのスーツの変化したものである。スペードspadeは剣の変形で、イタリア語の剣を意味するspadaからきており、英語のspade(鋤(すき))の意味はない。ダイヤモンドは貨幣の変形である。クラブclubは棍棒のことで、クローバーの葉のような三つ葉を用いているが、古いカードを見ると棍棒にクローバーのような三つ葉がついているものがあり、この三つ葉を棍棒の代用にしたのである。ハートheartは文字どおり心臓で、聖杯のかわりに用いられたものである。
14世紀までのカードは手書きであったので高価であったが、15世紀に入り、印刷術の発達に伴って、木版刷りで大量生産されるようになって、安価になり一般にも普及した。裏のデザインもきれいなものになり、19世紀末期イギリスにおいて、隅を丸く落とし、隅にインデックスをつけ、絵札を両頭にして、現在用いられているようなカードになった。
日本には戦国時代にスペイン、ポルトガルから伝来したカードを変形させた「うんすんかるた」「天正(てんしょう)かるた」とよばれるものがあり、さらにそれが「花札」に変化していったのである。
[高木重朗]
現在行われているカードゲームの種類は非常に多い。しかし、基本的に同じような遊び方をグループとして系統的にみれば、ホイストを中心にしたホイスト系のゲーム、ラミーをはじめとするラミー系のゲーム、ストップ系のゲーム、ポーカー系のゲーム、およびその他のゲームに大別できる。
[高木重朗]
ホイスト系のゲームは、基本的にだれかがカードを出し(リード)たら、それと同じスーツのカードを出していき、いちばん高いカードを出した人がその場に出たカードをとる。これで1組(1トリック)をとったことになる。そして、とった人が次にリードをする。このようにして多くの組をとった人が勝ちになるゲームである。ホイストのほか、この系統のゲームではナポレオン、ハート、ユーカー、エカルテ、ツー・テン・ジャック、500、コントラクト・ブリッジなどが一般的である。基本的にはホイストとほぼ同じで、ここではホイストについて述べる。
[高木重朗]
whist ホイストに使用するカードは、ジョーカーを除く52枚。人数は4人で、向かい合った2人が組になる。カードのランクはAが最高で以下K/Q/J/10/9/8……3/2の順となる。
(a)ディーラーdealer(配り手)を決める これは1組のカードを裏向きのまま、テーブルの上に横に広げ、おのおの1枚ずつカードをとる。そして、いちばんランクの高い札をとった者がディーラーとなる。同じ数の場合はスペードが最高で、以下ハート、ダイヤ、クラブの順である。次に高いカードを引いた人がディーラーのパートナーとなり、向かい側に座る。残りの2人はディーラーの両側に座る。これで4人の位置が決まる。
(b)カードを配る ディーラーはカードをシャフル(切り混ぜる)してから、自分の左隣から時計の針と同じ方向に順に1枚ずつ配る。全部配ると各人が13枚ずつ持つことになる(以下配り方はこのようにする)。
(c)切札を決める ディーラーは、最後に自分のところに配ったカードを表向きにする。これと同じスーツが切札となる。ディーラーはこの表向きのカードを自分の手札に戻す。
(d)プレー ディーラーの左隣の者が自分の手札から任意の1枚を表向きにしてテーブルの上に出す。これを台札という。ほかの者は順に自分の手札から台札と同じスーツのカードを出す。4人がカードを出したら、そのなかでもっとも高いランクのカードを出した者が勝ちで、その4枚をとる。この4枚1組を1トリックtrickという。そして、これをとった者が次の台札を出す。台札に続けて出す場合、台札と同じスーツのカードがなければほかのカードを出してもかまわないが、このとき、切札を出せば、台札の強いカードより高位になり、勝ちになる。台札・切札と違うスーツを出せば負けになる。このように手札がなくなるまでプレーを行う。すなわち全部で13回行うのである。これが終わったら、向かい合ったパートナーのトリックと合計し、トリックを多くとったほうのペアが勝ちとなる。トリックは全部で13だから、過半数の7トリック以上をとったほうが勝ちである。
(e)得点の計算 7トリックとったら7-6=1で1トリックが得点となり、1点に数える。8トリックとったら2点、13トリック全部とったら7点である。勝負は先に7点(あるいは5点)とったほうの組が1回戦が勝ちとなる。初めに13トリック全部とれば7点で1回の勝ちである。1ゲームは3回戦であるから、2回勝ったほうが1ゲームの勝ちである。
[高木重朗]
contract bridge ホイスト系のゲームで、もっとも変化に富むおもしろいゲーム。ブリッジとも略称される。トリックをとって競うという点ではホイストと同じであるが、ビッド(せり)によって切札を決め、同時にいくつのトリックをとるかを予約するところが違う。この成立した予約をコントラクトとよび、コントラクト・ブリッジの名称はこれから出ている。このコントラクトの高低によって得点が変わるのである。コントラクトによってゲームに変化がつき、複雑になり、おもしろくなる。ブリッジは全世界に多くの愛好家をもち、選手権大会も行われている。作戦もいろいろなシステムが考えられている。なお、日本でブリッジといわれているのは、ラミーのなかのセブン・ブリッジで、コントラクト・ブリッジとは異なる日本のゲームである。
[高木重朗]
ラミー系のゲームは、同じ数の3枚か4枚のセット(グループ)か、同じスーツで数が続く3枚以上のセット(シークェンス)をつくるゲームで、日本の麻雀(マージャン)に似たところがある。この系統のゲームとしては、ラミー、ジン・ラミー、オクラホマ、バンキング、カナスタ、コントラクト・ラミー、コンチネンタル・ラミー、コン・キャン、セブン・ブリッジ(日本ではブリッジと略称)などがある。ここでは基本になるラミーの遊び方を記す。
[高木重朗]
rummy 使用するカードはジョーカーを除く52枚。人数2人。カードのランクはKが最高で以下Q/J/10/9……3/2/Aで、Aがいちばん低い。
(a)ディーラーを決める カードを引いて、高いランクのカードを引いた者がディーラーとなる。
(b)カードを配る ディーラーはカードをシャフルしてから、相手のほうから交互に1枚ずつ配り、両方が10枚ずつになるようにする。残ったカードをテーブルの中央に置いて「山札」とし、その上のカードを1枚表向きにしてわきに置く。これを「捨札」とよぶ。
(c)プレー このゲームの目的は、3枚か4枚の同じ数のセット(グループ)か、3枚以上の同じスーツで数の続いたセット(シークェンス)をつくり、早く手札をなくすことである。シークェンスをつくる場合AとKはつながらないので注意する。プレーは相手から始める。相手は捨札を見て、必要ならとって手札に加え、手札のなかから要らないカードを表向きにしてテーブルの上に置く。もし、捨札が要らなければ、山札のいちばん上のカードをとって手札に加え、要らないカードを表向きにして置く。相手がカードを捨てたら、次はディーラーの番である。ディーラーも同じことをする。このように1枚とっては、1枚捨ててゆき、グループかシークェンスをつくる。
(d)グループあるいはシークェンスができたとき 自分の番でカードを1枚とったときに、グループあるいはシークェンスができたときは、そのセットを表向きにしてテーブルに出すことができる。このようにセットを出すことを「メルド」という。メルドしたら、手札のなかから、かならず要らないカードを1枚捨てること。
(e)付札(つけふだ) 自分が一つ以上のセットをメルドしている場合にできる。これは自分の手札のカードを自分か相手のグループやシークェンスにつけて手札を減らすことである。
(f)ゲームの終わり セットをつくって出したり(メルド)、付札をしたりして、どちらかの手札がなくなったらゲームは終わりである。終わる場合、最後の1枚は捨ててもよいし、付札をしてもよい。ゲームの途中で、セットをメルドしたり、付札をしないで、最後に一度にメルドしたり、付札をして手札をなくして上がることができる。このようにして上がると得点が2倍になる。g.得点の計算 どちらかが上がったら、相手は残った手札の点を数え、その点を上がった人の得点とする。点の数え方は、絵札10点、A1点、そのほかのカードは、その数と同じ点。ゲームをしていき、どちらかが100点になったら、1回戦を終わる。
[高木重朗]
これは、ある特定のカード(1枚か数枚)を持ったとき、プレーを行うことができるか、あるいはプレーをストップできるようなゲームの総称で、家庭的なゲームが多く、簡単に覚えられる。これの代表的なものはミシガン、ファンタン、ばば抜き、ジャックたたき、ニックネーム、エイト、コメット、ダウト、ページ・ワン、ゴー・フィッシュ、神経衰弱、ピッグなどである。このうちエイトとゴー・フィッシュの遊び方を記す。
[高木重朗]
eight 使用するカードはジョーカーを除く52枚。人数2~4人。
(a)ディーラーを決める これはカードを引いて決めても、じゃんけんなどで決めてもよい。
(b)カードを配る ディーラーはカードをシャフルしてから、自分の左隣から時計の針と同じ方向に順に1枚ずつ配る。配る枚数は人数によって違う。2人なら7枚ずつ、3人か4人なら5枚ずつ。残ったカードを裏向きのまま山札としてテーブルの上に置く。
(c)プレー ディーラーは山札の上の1枚を表向きにしてテーブルの上に置く。これが台札である。ゲームはディーラーの左隣の人から始める。左隣の人は、手札のなかから台札と同じスーツか同じ数のカードを出して、台札の上に表向きに置く。もし、同じスーツも同じ数もないときは、山札の上から1枚ずつとって手札に加えていく。そして同じスーツか同じ数のカードがきたら、表向きにして台札の上に置く。このように順にプレーをしていく。
(d)8のカードの使い方 このゲームのおもしろさは8のカードの使い方にある。8のカードはどのカードの上にでものせられる。そして8をのせたとき、次に続けるスーツを指定できる。たとえばハートの8を出してクラブと指定すれば、次の人はクラブのスーツのカードしか出せない。このように8のカードは便利だが、長く持っていて、ゲームが終わってしまうとマイナスの点になる。
(e)ゲームの終わり 以上のようにプレーをしてゆき、だれかの手札がなくなったら、このゲームは終わりである。手札がなくならないうちに山札がなくなった場合は、そのままプレーを続ける。この場合、続けるカードがない人はパスといって次の人に番を譲る。f.得点の計算 手札がなくなった人は0点で、点の多い人ほど順位が下になる。8は50点、絵札は10点、Aは1点、2~10はその数のとおりの点。
[高木重朗]
go fish 使用するカードはジョーカーを除く52枚。人数2人~6人。
(a)ディーラーを決める これは、エイトと同じように決める。
(b)カードを配る ディーラーはカードをシャフルしてから、自分の左隣から時計回りに1枚ずつ配り、全部のカードを配ってしまう。おのおのの持っているカードの枚数は違ってもかまわない。
(c)プレー このゲームの目的は4枚の同じ数のカードの組をできるだけ多くつくることである。おのおのの手札を見て、同じ数のカードが4枚そろっていたら、自分の前に表向きにして置く。プレーはディーラーの左隣の人から始め、その人は、自分のそろえたい数のカードを持っていそうな人に向かって、その数のカードをくれるように頼む。この場合、自分の持っていない数を頼んではいけない。頼まれたほうは、持っていたら持っているだけ何枚でも渡さなければならない。頼んだカードがあったら、さらに続けて、また欲しいカードを頼める。カードがあればいくらでも続けて頼める。これはほかの人に向かっても頼める。カードを頼んだとき、なければ、今度は頼まれた人が、欲しいカードを頼むことができる。このようにプレーをしていく。
(d)ゲームの終わり 全部の人の手札がなくなったら、ゲームは終わりである。4枚1組を1点とし、点数の多いほうから順位を決める。
[高木重朗]
poker コントラクト・ブリッジと並んで欧米で盛んに行われているゲームで、ギャンブル的色彩が強く、スリルがあり、しかも熟練がものをいうおもしろいゲームである。ポーカーの起源にはいろいろな説があるが、その原型は古代ペルシアの「アス・ナス」というカードゲームとされている。これは、20枚のカードを4人に5枚ずつ配り、この配られたカードの強さによって賭(か)けを始めたと推定されている。このゲームがいろいろ変化してきて、現在のような型になったのは、19世紀初頭のアメリカ合衆国のニュー・オーリンズといわれている。ポーカーはその手役の強さに賭けるもので、作戦によっては弱い手役の者でも勝つことができる点におもしろさがある。
ポーカーには多くのルールがあるが、大きく分けて二つになる。それは、ドロー・ポーカーといって配られたカードを取り替えられるものと、スタッド・ポーカーといって配られたカードが取り替えられないものとである。現在流行しているのはダウン・ザ・リバーとよばれる7枚のカードを配って行うスタッド・ポーカーである。ここでは、基本的なドロー・ポーカーのうち、一般的なジャック・ポットという方法を述べる。
使用するカードはジョーカーを除く52枚。人数は2人~8人。ポーカーの手役を高いものから順に記すと次のようになる。
〔1〕ストレート・フラッシュ これは同じスーツで数が連続しているもの。このうちでAKQJ10とそろったのはローヤル・ストレート・フラッシュといって最高の手役である。
〔2〕フォー・オブ・ア・カインド(フォア・カード) これは同じ数のカードが4枚そろったもの。たとえばA4枚とか10が4枚。
〔3〕フル・ハウス これは同じ数のカード3枚とこれと違った同じ数のカード2枚になっているもの。
〔4〕フラッシュ 5枚とも同じスーツのもの。
〔5〕ストレート スーツが違っても数が連続しているもの。
〔6〕スリー・オブ・ア・カインド(スリー・カード) 同じ数のカードが3枚あるもの。
〔7〕ツー・ペア 同じ数のカードが2枚ずつ2組できたもの。
〔8〕ワン・ペア 同じ数のカードが2枚そろったもの。
〔9〕ノー・ペア 以上の役がなにもないもの。
ゲームの方法は、次のとおり。
a参加料(アンテ)をチップや金で払う これはカードを配る前に行う。
bディーラーを決める だれかがカードを左隣の者から時計の針の方向に配ってゆき、初めにJのカードを配られた者がディーラーとなる。これ以後は、1勝負ごとにディーラーを左隣に移してゆく。
cカードを配る ディーラーは自分の左隣から1枚ずつカードを裏向きに配り、各人が5枚ずつになるようにする。残りは裏向きのまま山札としてディーラーの前に置く。そしてディーラーの左隣の者からベット(賭け)を行う。このとき自分の手にJのワン・ペア以上の手役がこなければベットができないからパスをする。あるいはベットができてもする意志がなければパスしてもよい。最初にベットをすることをオープンという。参加者全員がパスをし、オープンしたくなければこの勝負は流れ、ディーラーは左隣に移る。
d第1回のせり だれかがオープンして賭けたら、その左隣の人から参加するか、またはドロップといって棄権をする。ドロップの場合は賭けたチップや金は返らない。参加するにはコールといって前の者が賭けた額と同額を賭けるか、レイズといって前の者の賭けた額より多く賭ける。オープンした人の右隣までの何人かがコールだけしたら第1回のせりは終わりである。もし、だれかがレイズをしたら、そのレイズをした人の右隣までレイズに応じるかどうかを確かめる。レイズに対して応じたくなければドロップをする。
eカードの交換 第1回のせりが終了したら、ディーラーの左隣からカードの交換をする。もちろんドロップをした人は交換できない。カードの交換は、自分の持っているカードのうちから不要なものを自分の前に伏せて置き、ディーラーから置いた枚数だけを山札から配ってもらう。この交換は各人1回しかできない。
f第2回のせり カードの交換が終わったら第1回のせりと同じようにせりを行う。そしてレイズする者がなくなったら、残った者が持札を公開して、手役のいちばん上の者がその場に賭けてある全額をとる。一人を除いて全員がドロップしたら、残った者の勝ちで、この場合は持札を公開する必要はない。
[高木重朗]
blackjack 欧米のカジノで一般に行われているカードゲーム。21twenty-oneともいい、バカラbaccaratと同系統のゲーム。日本の花札のおいちょかぶと類似している。日本においても愛好者が多い。ルールの基本は、自分のカードの合計を21に近づけるもので、その合計の多いほうが勝ちで、21を超えたら負け。カードの数は、2から10まではその数のまま、絵札は10、Aは11か1の好きな数をとる。使用するカードは、ジョーカーを除く52枚。人数は2人以上7人まで。ゲームの方法はいくつかあるが、一般的な方法は、カードをシャフルとカット(カードを分けて、上下を入れ換えること)し、ディーラーは2枚ずつ配る。ディーラーの最初の1枚は表向きに配る。各自、自分のカードを見る。21ならブラックジャックで勝ち、それ以下なら21になるまでカードをもらう。21を超えたら負け、ディーラーは合計が16以下ならカードを引き、17以上ならそのまま。それからカードをあけ、合計の多少で勝負をする。
[高木重朗]
このほか、有名なゲームとしては、カジノ、バカラ、フェイロウ、クリベッジ、ピノクル、ペジーク、ピケー、スカートなどがあげられよう。カードゲームの標準的な解説書として、18世紀のイギリスの弁護士ホイルEdmond Hoyle(1671―1769)の著したものが知られ、単に『ホイル』とよばれて、後のカードゲームのルール、戦略などに大きな影響を及ぼしている。
[高木重朗]
『John ScarneEncyclopedia of Games(1973, Herper & Low, New York)』▽『佐山哲著『トランプ――ゲーム・占い・手品』(1981・成美堂出版)』▽『小里洋著『トランプの遊び方――家庭向きゲーム・1人遊び・ラミー・ポーカー・ブリッジ』(1975・虹有社)』
フランスのプレーイング・カード(15世…
ビスコンティ・タロット
シュトゥットガルトのプレーイング・カー…
イランのアス・ナスカード(19世紀)
ドイツの四大陸カード(19世紀)
ドイツのコッタのはめ絵カード(19世紀…
イギリスのカード(19世紀)
アメリカのカード(19世紀後半)
ポルトガルのドラゴンカード(19世紀)
アメリカのカード
イスラエルのカード
インドのカード
ウルグアイのカード
エチオピアのカード
オーストリアのカード
韓国のカード
スイスのカード
スペインのカード
チェコのカード
中国のカード
ニュージーランドのカード
ハンガリーのカード
フランスのカード
ロシアのカード
ポーカーの手役
アメリカ合衆国第45代(在任2017~2021)・第47代大統領(同2025~ )。1946年、ニューヨーク市で生まれる。不動産開発業を営む一家に育ち、フォーダム大学を経てペンシルベニア大学ウォートン・スクールに編入し、不動産経営を専攻。1971年に父の会社を受け継ぐと、事業の中心を中所得者層向け住宅から高級不動産開発やリゾート開発へと移した。1983年にマンハッタン5番街に完成したトランプ・タワーはその象徴的建築物であり、傘下の数百の企業を束ねるトランプ・オーガニゼーションの中枢である。20歳代からマス・メディアに積極的に登場し、2004年から2015年まで放映されたビジネス・リアリティ番組「アプレンティスThe Apprentice」(NBCテレビ)の司会として顔を広めた。その間に、海外でのゴルフ場事業やリゾート事業にも乗り出した。
1980年代よりたびたび政界進出がうわさされ、2000年の大統領選挙ではアメリカ改革党の候補者指名を競ったが撤退。第二期オバマ政権が任期満了を迎える2016年大統領選挙で、「偉大なアメリカをふたたび(Make America Great Again:MAGA)」「アメリカ第一主義」をスローガンに掲げ、共和党から出馬した。知名度は高いものの、政治経験が皆無であることから泡沫(ほうまつ)候補とみられていたが、政治エリートを既得権益層と批判することで支持を集め、下馬評を覆して指名獲得。本選では、中部や南部の地方票、産業の疲弊したラストベルトの白人労働者層・中間層の票を取り込み、民主党候補ヒラリー・クリントンに勝利。政治家としての経歴、軍人としての経歴のいずれももたない、初の大統領が誕生した。
アメリカの内外に「敵」をみいだし、その排除を唱える政治手法が特徴的であり、分断と対立時代のアメリカを象徴する大統領である。2016年選挙における第一の公約は、メキシコや中南米からの非正規移民や難民を減少させること、なかでもアメリカ・メキシコ国境の警備を強化することであった。そして、国境壁の建設予算をメキシコに負担させると主張した。就任後には、国家非常事態を宣言し、議会による予算承認を回避して大統領令によって予算を確保するという異例の手法をとった。そのほかにイラスム系移民の入国を制限する大統領令をたびたび発した。
国際関係においては、二国間交渉とりわけ首脳同士の「ディール(取引)」を好む姿勢が目だった。中東政策では、2017年、エルサレムをイスラエルの首都と承認するとともに大使館を移転し、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にした。2018年、イランによる核開発を制限するため、同国と国連安保理常任理事国(米英仏中露)およびドイツの6か国が2015年に結んだ合意から離脱し、独自制裁に踏み切った。2020年には、イスラエルと、アラブ首長国連邦をはじめとするアラブ4か国との和平を仲介した(アブラハム合意)。北朝鮮に対しては、2018年に史上初の米朝首脳会談を行った。しばしば首脳会談に用いたフロリダ州の自社ゴルフリゾート内の別邸「マー・ア・ラゴ」は、第二のホワイトハウスとして知られるようになる。
経済・貿易分野でも多国間の枠組みを嫌い、2017年、アメリカが主導してきた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉から離脱。その結果、2018年、残る11か国によりCPTPPが発足した。また、NAFTA(ナフタ)(北米自由貿易協定)を解消し、自由貿易色を弱めたUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)が2020年に発効した。アメリカ国内の産業復興をうたい、国内製造(原産地規則)を強化したことは、日系自動車企業の戦略にも大きな影響を与えた。また、経済活動の妨げとなるとして、2020年、二酸化炭素削減のためのパリ協定からも離脱。とりわけ関税政策を、アメリカの利益を最大化するための主要手段として重視。最大の貿易赤字を抱える中国に対しては、2018年以降、関税を大幅に引き上げた。中国が報復関税を課したことで米中の貿易摩擦はいっそう激しくなった。多国間の調停を担う世界貿易機関(WTO)にも批判的であり、アメリカが人事案に反対したことで定数を満たせなくなったWTO上級委員会は、2019年12月以降、その調停能力を喪失した。
二期目を目ざした2020年の大統領選挙では、任期中の新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の拡大も一因となり、オバマ政権下の副大統領ジョー・バイデンに敗北。しかし、不正に勝利を奪われたと主張し、政権移行を拒否。選挙結果の最終承認日である2021年1月6日にトランプ支持者たちが連邦議会議事堂に乱入し、5名が死亡するという事件が起きた。
襲撃事件における扇動を問題視した主要SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)会社がトランプの個人アカウントを凍結すると、自前のSNS「トゥルース・ソーシャルTruth Social」を立ち上げ、その後も発信力を保った。大統領選のスローガンから始まったMAGA運動の支柱の一つが「ディープステイト」理論である。これは、公選された政治家とは別に、官僚機構、情報機関、大企業、エリート集団、メディアなどがひそかに国家を操っているとするものである。こうした影の権力機構による「フェイク」を暴き、「トゥルース」を届けるというポピュリスト的レトリックは、社会の分断を助長するSNS上のネット空間において訴求力を発揮した。
二期目の大統領選に敗れ、バイデン政権となってからも、実際には、第一期トランプ政権の影響は、公的な統治機構に色濃く残っている。一例が、連邦最高裁判所である。第一期任期中にトランプが3名の最高裁判事を任命した結果、保守派判事が3分の2を占めるようになり、その判決はトランプの思想との親和性を高めている。たとえば、大学入学選考におけるアファーマティブ・アクションを違憲とした2023年の判決である。これは2025年1月発足の第二期政権が発令した、すべてのDEI(Diversity, Equity and Inclusion:多様性、公平性、包括性)指針を「逆差別」と定義した大統領令の根拠とされた。また、2024年7月、最高裁は議事堂襲撃における扇動行為を免責した。この判決は、議事堂襲撃事件におけるトランプの責任という直接の争点にとどまらず、在任中の職務に関わる行為によって、大統領は退任後に訴追されることはないという広範な内容であり、第二期の政権運営の後ろ盾ともなった。
2022年、2024年大統領選への出馬を表明。その後の大統領選では異例の展開が続いた。まず、共和党予備選では他の候補者との討論会を拒否し、独演会やSNSによって支持を拡大し指名を獲得した。さらに2024年7月、民主党は高齢のバイデンが選挙半年前に撤退を表明し、副大統領カマラ・ハリスKamala Devi Harris(1964― )が急遽(きゅうきょ)民主党候補となった。バイデン政権期の4年間で進んだインフレ、格差の拡大に対する不満や、民主党支持層内での利害の不一致等も一因となり、民主党の伝統的支持層であった黒人男性やラティーノ(中南米およびカリブ海諸島などのスペイン語圏出身者)の間にも支持基盤を広げたトランプはハリスを破り、第47代大統領に返り咲いた。
第二期の政権運営は、第一期よりいっそう強権的となった。要因として、大統領職は2期8年までとした憲法の規定により再選を考慮しなくてよいこと、最高裁が実質的に政権の成立前に免責を与えたこと、閣内にも共和党内にも批判者がいないことなどがあげられる。第一期中にトランプに異を唱えた計13名の閣僚が更迭または辞任に至ったことから、第二期の閣僚人事では、発足当初からトランプへの個人的忠誠を、経験や適性より重視した。2016年当時、多くの議員はトランプを政治経験が皆無の素人とみており、党内にも批判者は多かった。しかし、その後の8年でトランプに批判的な共和党議員の多くは引退、またはトランプ派の候補に敗れ議席を失い、共和党自体もトランプの政党としての性格を強めた。
第二期の大統領令の数は、就任2か月で第一期4年間の半分に達し、司法判断が追いつかない早さで実行に移された。その射程は広範で、議事堂襲撃事件で有罪判決を受けた1500人の恩赦や、民主党寄りの大手法律事務所に対する連邦施設立ち入り禁止令など、個人的な好悪に基づくものも多い。
また、法的な確実性よりも迅速性や個人的関係を重視する政治手法の象徴が、実業家イーロン・マスクElon Reeve Musk(1971― )率いる「政府効率化省(Department of Government Efficiency:DOGE)」である。大統領令に基づくDOGEは公式な省ではなく、マスクも議会承認を経た閣僚ではない。議会の設立した省庁より強大な権限を、自身の支援者である巨大企業のオーナーに与えたことについて、法的根拠の乏しさに加え、安全保障上の懸念も寄せられている。DOGEによる連邦機関縮小策のなかでも、冷戦以来のアメリカの対外政策の要であった「国際開発庁(United States Agency for International Development:USAID)」の再編と対外援助資金凍結は、アメリカの変節の象徴としてとりわけ国際社会の注目を集めた。
第一期同様、トランプは関税政策を「ディール」の主要な武器と位置づける。しかも第一期とは異なり、その矛先を全世界に向けることを表明。たとえば、友好的な隣国カナダに高関税を課し、「51番目の州」と軽視したことは同国での反米感情を高めた。また、非正規移民の摘発・送還といった、貿易とは直接関係しない政策分野においても、関税を他国との交渉カードとして用いるようになった。
アメリカとカナダの関係が象徴するように、外交政策は、同盟関係や歴史的な友好・対立関係に準拠するかわりに、大国間の関係を重視し、アメリカ第一主義による、より短期的な視点でのアメリカの利益を追求する性格を強めた。たとえば、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵略について、ウクライナやヨーロッパ連合(EU)などが提出した国連決議に反対票を投じるなど、ロシア寄りの姿勢をみせた。またNATO(北大西洋条約機構)がアメリカに過度に依存しているとして、加盟国の防衛費増大を要求。さらに、NATO加盟国デンマークの領土であるグリーンランドの「購入」を提案し、パナマ運河をパナマ共和国から「取り戻す」ことを宣言するなど、領土の拡張や海外権益への意欲を露骨に表した。
「偉大なアメリカをふたたび(MAGA)」というスローガンは、第二次世界大戦後、自由主義世界の盟主を自認してきたアメリカがその地位を回復することを目ざすものではない。中国の台頭やグローバルサウスの伸長をはじめとする国際情勢の変化のなかで相対的に国力が低下したアメリカが、自らその地位を降り、覇権的に自国の利益を求めることを意味する。国際社会が新たな時代を迎えたことを象徴する大統領である。
[小田悠生 2025年5月20日]
『ワシントンポスト取材班、マイケル・クラニッシュ、マーク・フィッシャー著、野中香方子他訳『トランプ』(2016・文藝春秋)』▽『マイケル・ウォルフ著、関根光宏・藤田美菜子他訳『炎と怒り――トランプ政権の内幕』(2018・早川書房)』▽『西山隆行・前嶋和宏・渡辺将人著『混迷のアメリカを読みとく10の論点』(2024・慶應義塾大学出版会)』▽『会田弘継著『それでもなぜ、トランプは支持されるのか――アメリカ地殻変動の思想史』(2024・東洋経済新報社)』▽『ピーター・ベイカー、スーザン・グラッサー著、伊藤真訳『ぶち壊し屋:トランプがいたホワイトハウス2017-2021 上・下』(2024・白水社)』▽『金成隆一著『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)』▽『金成隆一著『ルポ トランプ王国2――ラストベルト再訪』(岩波新書)』▽『渡辺靖著『白人ナショナリズム――アメリカを揺るがす「文化的反動」』(中公新書)』▽『三牧聖子著『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書)』
室内遊戯具の一種。絵や字を描いた札,またこれを用いた遊び。明治初期以降における日本独自の呼称で,それまでは〈西洋がるた〉と呼ばれていた。英語ではプレーイング・カードplaying card(略してカードcard)といい,トランプtrump(勝利triumphと同語源)は〈切札〉のことをいう。
カードの起源は東方にあるといわれ,18世紀フランスの神秘学者クール・ド・ジェブランは,カードと密接な関係にあると考えられているタロットのエジプト起源説を唱え,その他チェスと同様にインド起源説,中国唐時代の紙幣起源説があるが,いずれも確証はない。これがサラセン人,十字軍,あるいはジプシーによってヨーロッパにもたらされたといわれ,14世紀イタリアを中心に発達したものと思われる。スイスにいたドイツ人修道士ヨハネスの記述によれば,1377年にカードが伝来したといい,それは各3枚の絵札を含む4種のマークからなる52枚であった。15世紀初頭には北イタリアでタロット(タロッキ)が登場する。タロットは〈大アルカナ〉と〈小アルカナ〉に分けられ,後者と現在のカードには共通点がみられるが,相互の関係については諸説あり,正確なことはわからない。
初期には手描きだったカードも,15世紀前半には木版刷りとなり,ドイツで盛んに生産されたため,イギリスなどでは一時は輸入禁止で対抗した。1615年にイギリスは輸入関税を設け,ついで28年には国内生産のものにもカード税を課し,のち各国もこれに従った。1765年以後はスペードのエースに納税証明を印刷するようになった。現在のデザインにもそのなごりをみることができる。日本でも1902年から国税(骨牌税)が課せられた。19世紀になるとイギリスやフランスでカードの製法に改良が加えられ,1930年代にはプラスチックを材料にしたものもつくられるようになった。
日本には16世紀後半にポルトガルから48枚組のカードが持ち込まれ,日本化して〈天正かるた〉となったが,現在のような52枚組のカードが輸入されるようになったのは明治初年である。1887年には《西洋遊戯かるた使用法》が出版されている。以来,カードは一般家庭で人気を得ているが,日本では子どもの遊び道具という面が強く,その競技法は国際的には通用しない変型ルールが多いため,技術と戦略を必要とするゲームは普及していない。
ひとそろいのカードの組をパックまたはデックという。1パックのカードは幾種類かのマークに分類され,それぞれのマークのひとそろいをスートと呼ぶ。スペード,ハート,ダイヤ,クラブの4スートからなる1パック52枚のカードが国際的に通用し,スタンダード・パックとされているが,これはフランスを起源にしたものである。スペインでは40枚のパック,ドイツ,フランスでは32枚のパックがいまでも販売されている。これらはオンブル,スカート,ピケなどのゲームに使用する。
絵札court cardは各スートにキングking,クイーンqueen,ジャックjackがあり,ドイツ語でKönig,Dame,Bauer,フランス語でroi,dame,valetという。52枚のスタンダード・パックにはジョーカーjokerが1枚もしくは2枚つけ加えられるのが普通であるが,ジョーカーの導入は19世紀後半になってからである。
スートの図柄と呼名も地方によって異なるが,伝統的に次の3種に分けられる。(1)フランス,イギリス系 スタンダード・パックのスート。スペードspade,ハートheart,ダイヤモンドdiamond,クラブclubの4種。図柄の起源はフランスで,槍pique,心臓cœur,教会の敷石carreau,三葉trèfleだったものが16世紀後半にイギリスに入った。英語spadeは鋤(すき)のことではなく,イタリア語spada(剣)を借入したものである。(2)イタリア,スペインなどのラテン系 カードの発生当時からの図柄と思われ,日本で西洋かるたといわれたポルトガルのものもこの系統である。剣spada(ポルトガル語でespada),聖杯coppa(copo),貨幣denaro(ouro),こん棒bastone(pau)。(3)ドイツ,オーストリア系 木の葉Grün,心臓Herz,鈴Schelle,どんぐりEichel。
カード・ゲーム全般に共通する手順は次のとおりである。(1)親(ディーラー,配り手)を決めるための抽選(ドロー)。一般にはテーブル上に置いたカードを各人が1枚ずつ引いて最高位の人を親とする。(2)カードの順序がだれにもわからないようによくかきまぜる。これを〈切る(シャッフル)〉という。(3)カードが適切に切られた確認と親の不正防止のため,親の隣の人がカードを二つに分け,その上下を入れかえる。これをカットという。(4)カードを配る(ディール)。標準的には親の左隣から時計回りで配るが,イタリアやポルトガル,西洋かるたの習慣を残している日本などでは逆時計回り。
カード・ゲームをその性格によって大別すると次のようになる。
(1)カードの組合せを主眼とするもの 16~17世紀のゲームであるプリメロprimeroをはじめ,アメリカのポーカー,イギリスの伝統的な二人遊びクリベッジcribbage,それにラミー系のゲームであるジン・ラミーgin rummyや2組のカードを使用するカナスタcanastaなどがある。
(2)トリックをとるゲーム 各人が順にカードを出し,最強の札を出した者が出されたカードを全部(これをトリックという)とる。この種のゲームの特徴は,各人が取得したトリックの数(またはそのトリックに含まれている点数)を争うことにある。ナポレオン,古代ゲームのタロット,スペインのオンブルhombre,フランスのピケpiquet,ドイツのスカートSkat,アメリカのピノクルpinochle,イギリスのホイストwhistなどがあるが,現在最も人気のあるのはブリッジである。
(3)ストップ系のゲーム ルールに従ってカードを場に出していって,手札を全部なくした者が出た時点でゲームが終了(ストップ)するもの。日本で行われているのはこのタイプがほとんどである。ばば抜き,ダウト,ページ・ワン,七並べ,エイトなど。
(4)カードの合計点を特定の数に近づけるのを目的とするゲーム 代表的なゲームは21点をめざすブラックジャックblackjack(twenty-one)で,日本版は〈どぼん〉。9点をめざすバカラbaccaratは日本では〈かぶ〉と同じ。ギャンブルに用いられるのがこのタイプのゲームの特徴である。
(5)その他 日本の花札のように場札と手札をあわせてとるゲームにイタリアのカシノcasinoがある。またルーレットのように,盤を使ってカードの出方を予想するフェアロfaroという賭博も盛んに行われた。
(6)ひとり遊び イギリス風にいえばペーシェンスpatience,アメリカではソリテールsolitaire。その歴史は比較的新しく,18世紀の終りころであろうといわれている。カードを一定のルールに従って並べていき,決められた組合せを完成させられるかどうかを楽しむ。クロンダイクklondike,キャンフィールドcanfield,アコーディオンaccordionなどがある。
→骨牌(かるた) →タロット
執筆者:松田 道弘
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…日本には外来のカルタの流れをひく,おもに賭博に使われるかるた(花札など)と,古来の貝覆(かいおおい)の流れをひく,おもに教育を目的とするかるた(《小倉百人一首》など)とがある。なお,西洋かるたをトランプtrumpと通称するが,トランプは正しくは西洋かるたの切札のことをいう。
[賭博系かるた]
16世紀後半に初めてポルトガル人が日本に持ち込んだと考えられるカルタは,今日のトランプとは別のもので,ハウ(棍棒),イス(剣),コップ(聖杯),オウル(貨幣)の4種がそれぞれ1から12まであって,合計48枚から成り,1の札に竜,10に女従者,11に騎士,12に王がそれぞれ描かれている。…
…農村では旅籠屋が集会場を兼ねた賭博場であり祭日にはつねに賭博がなされた。中世末期にヨーロッパ南部に出現したプレーイング・カード(トランプ)は新しい型の賭博として熱狂的に愛好され,ヨーロッパ全土に広まった。この画期的な賭博用具は多くの婦人たちを賭博にひき入れた。…
※「トランプ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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