パーキンソン病(特発性パーキンソニズム)(読み)ぱーきんそんびょうとくはつせいぱーきんそにずむ(英語表記)Parkinson Disease

家庭医学館 の解説

ぱーきんそんびょうとくはつせいぱーきんそにずむ【パーキンソン病(特発性パーキンソニズム) Parkinson Disease】

◎中年以降の人に多くおこる
[どんな病気か]
 パーキンソン病は、イギリス医師、ジェームス・パーキンソンが、1817年に発表した病気です。
手足が震(ふる)える(振戦(しんせん))
②からだの筋肉がかたくなる(固縮(こしゅく))
③からだの動きが減って、ひとつの動作に時間がかかる(無動(むどう))
 以上3つの症状をまとめて、1つの病気であると報告したのです。これをパーキンソン病の三徴候といいますが、これに
④ちょっと押されただけで、前方や後方へ転倒する(姿勢保持障害)
という症状を加え、四徴候とする専門家もいます。
 パーキンソン病は、50歳代からの発病がいちばん多く、ついで、60歳代、40歳代ですから、中年以降の人の病気ということができます。
 日本での発病は、人口10万人に対し50人ほどで、神経内科が担当する病気のなかでは比較的多い病気です。
 発病に男女差はありません。
[症状]
 前述の四徴候の内容を詳しく説明します。
●振戦(震(ふる)え)
 震えは、規則正しい、小刻みな動きです。1秒間に5~6回震えます。手の震えによって気づかれることが多く、紙幣を数えたり、指先で物を丸めたりするのに似た手指の異常運動がおこります。
 このような震えは、動いているときよりもむしろ、いすに腰掛けて膝(ひざ)に手を置き、じっとしているときにおこりやすいものです(静止時振戦(せいしじしんせん))。
●固縮
 固縮は、筋肉の緊張度が高まったもので、手を例にとると、握手をして、手首を軸にして回転させると、ちょうど、歯車を回したときのようにがくがくと抵抗を感じます。
 くびの筋肉がかたくなると、寝ているときに枕(まくら)をそっと抜いても、くびが宙に浮いたままになっています。
●無動
 顔の表情を変えずにじっとしています。たとえば、診察を受けに病院に行き名前を呼ばれても、なかなかいすから離れることができなかったり、歩くにしても、前かがみの姿勢で、狭い歩幅でゆっくりと歩きます。
●姿勢保持障害
 この障害の有無を調べるためには、立った状態で、胸をちょっと押してみます。ふつうであれば、のけぞるのと同時に、反射的に足も後ろに下げるので転びません。しかし、パーキンソン病の場合は、足を後ろに下げる動作が追いつかず、足が元の位置のままなので、後ろに転倒します。
 このため、この検査を行なうときは、必ず誰かが後ろで支えるようにします。
[原因]
 脳の根元のところ(脳幹部(のうかんぶ))に、色が黒いので黒質(こくしつ)と名づけられた、神経細胞がたくさん集まっている部位があります。
 黒質は、長い腕を伸ばして、大脳(だいのう)の線条体(せんじょうたい)と呼ばれる神経細胞のかたまりに情報を送ります。情報を伝えるのは、黒質でつくられるドパミンという物質です(ドパミン伝達系)。
 線条体は、運動(動作)がスムーズに行なえるように調節している部位です。ここでは、ドパミンとアセチルコリンという2種類の物質のはたらきがうまくバランスをとり、運動が滑らかに行なわれるようにしています。
 ちょうど、シーソー両端にドパミンとアセチルコリンが乗って、バランスをとって、シーソーの平行状態を保っているようなものです。
 黒質に損傷が生じ、つくられるドパミンの量が減ると、相対的にアセチルコリンの量が増えたのと同じことになり、バランスが崩れます。
 その結果、動作をスムーズに行なえなくなり、先に述べた症状が出現してくるのです。黒質が損傷を受ける原因は、まだ解明されていません。
◎薬は、必ず正しく服用する
[治療]
 薬剤による治療が中心となります。治療に用いられる薬剤(パーキンソン病治療薬)には、つぎのようなものがあります。
①不足しているドパミンを補充する薬(レボドパ剤など)
②ドパミン伝達系の後(こう)シナプス受容体(じゅようたい)を刺激して反応しやすくする薬(塩酸タリペキソールやメシル酸ペルゴリドなど)
③不足しているドパミンの放出を促進させる薬(アマンタジン)
④アセチルコリンのはたらきを抑え、バランスをとる薬(抗コリン薬など)
 どれか1種類の薬を処方する医師もいれば、2、3種類の薬を処方する医師もいますが、これは、それぞれの経験や考えに基づいてのことです。
 これらの薬はよく効きますが、ほかの病気、とくに緑内障(りょくないしょう)を悪化させる恐れがあって使用できないことがあります。ですから、受診するときには、これまでにかかったことのある病気を、医師に報告する必要があります。
●副作用
 パーキンソン病の治療に用いられる薬の副作用には、脳の症状(幻覚、妄想(もうそう)、不安、興奮など)、消化器系の症状(吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)、胃部不快感、下痢(げり)、食欲不振など)、自律神経系の症状(口が乾く、便秘<パーキンソン病自体、便秘をおこしやすい>、動悸(どうき)など)、皮膚の症状(発疹(ほっしん))があります。
 誰にでも必ず副作用が現われるとはかぎりませんが、おかしいと思ったら、主治医に相談しましょう。
[日常生活の注意]
 きょうは調子がよいから服用をやめるとか、半分にする、あるいは、きょうは調子が悪いから2倍飲むという飲み方はよくありません。
 とくに長期間服用してきた人が急に服用をやめると、発熱、意識障害などの重い症状が現われることがあります。これを悪性症候群(あくせいしょうこうぐん)といい、適切な治療を受けないと、生命にかかわることがあります。
 同じ悩みをもった人々と交流し、お互いにはげまし合うことも療養の支えになります。
 ただし、病気の暗い面だけを話し合うような情報交換の場にしないように注意すべきでしょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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