ひし(読み)ヒシ

デジタル大辞泉 「ひし」の意味・読み・例文・類語

ひし

災いのもと。災難。破滅。
「浮き名に沈む水底の、皆身の―とは知りながら」〈浄・五人兄弟〉

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精選版 日本国語大辞典 「ひし」の意味・読み・例文・類語

ひし

  1. 〘 名詞 〙 わざわい。災難。破滅。すべて身の不幸不利益となることをいう。
    1. [初出の実例]「念比に始終漢のひしになるやうなる処をば」(出典:史記抄(1477)一五)

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改訂新版 世界大百科事典 「ひし」の意味・わかりやすい解説

ヒシ (菱)
water chestnut
water caltrop
Trapa bispinosa Roxb.var.iinumai Nakano

池の水底から細い茎をのばし,夏に水面に葉を放射状にひろげ,水面をおおう一年生の水草。果実には逆歯のあるとげがあり,水底に固着して越冬する。春に,頂端部から芽を出し,泥中に根をおろし,水面に向かう茎をのばす。茎の各節には,対生し,細かく枝分れする水中根がある。葉は互生で,放射状に出る。長い葉柄があり,その中部はふくらんで浮袋となる。葉身はひし形で粗い鋸歯がある。次々と新しい葉がつくられ,枝分れもして繁茂する。花は7月ころから順次開く。若い葉の葉腋(ようえき)から出る柄の先に白い4弁の花がつき,水面に顔をのぞかせる。萼4枚,おしべ4本。めしべは1本で,子房は2室,基部は萼筒と合着しており,この部分が花後発達する。花が終わると柄がのび,水中に没する。萼片は前後の2枚は脱落するが,左右の2枚は残り,果実のとげとなる。果実の内層は堅い木質となり,1室のみが発達し,大きな1種子を有する。種子には胚乳がなく,1個の大きい子葉と1個の鱗片状の子葉とがあり,子葉には生の状態で約20%のデンプンが貯蔵されている。温帯~亜熱帯に広く分布し,北海道,本州,四国,九州,朝鮮,台湾,中国にみられる。種子をゆでたり焼いたりして,食用とする。また民間薬として使われることもあるが,効用は不明。中国では果実を熱さましなどに用いる。ヒメビシT.incisa Sieb.et Zucc.やオニビシT.natans L.var.japonica Nakaiは萼片が4枚とも残り,とげとなる。ヒメビシは実,植物体ともにヒシより小型,オニビシの実は大型である。

 ヒシ属は,1属のみでヒシ科を形成し,ヨーロッパ,アジア,アフリカに数種がある。アカバナ科やミソハギ科に近縁と考えられている。
執筆者:

4本の平行斜線によって囲まれた四辺形を基本とする文様。原始時代から世界各地に見られ,時代がすすむにつれ複雑な文様に発展した。織物以前の網物地から生じたという説もある。おもに連続文として菱繫(ひしつな)ぎや,斜線を基本として文様化した襷文(たすきもん)として用いられる。中国唐朝で好まれた実在しない花を菱形にデザインした唐花菱,有職文(ゆうそくもん)の一つで4から20の花菱で一つの大きな菱を構成する幸菱(さいわいびし),おもに織物などの地文に用いられ菱文が隣接して並ぶ繁菱(しげびし),間隔をおいて並ぶ遠菱(とおびし),菱を4等分した割菱で甲斐武田氏が用いた武田菱(たけだびし),菱形の中に順次小さな菱を入れてゆく入子菱(いれこびし),小さい菱形をたすき状に並べた菱襷(ひしだすき),鳥文(とりもん)をたすき状に並べ間に唐花(からはな)を置いた鳥襷(とりだすき)などがある。中世の密教寺院の内陣・外陣の間仕切りには菱格子が多く用いられ,また青森,秋田地方のこぎん,菱刺しは菱繫ぎ文様に特色がある。
執筆者:


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普及版 字通 「ひし」の読み・字形・画数・意味

子】ひし

うちかけ。〔事物紀原、三、〕實に曰く、三代には無し。秦に披帛り、帛(けんぱく)を以て之れを爲す。ち羅を以てす。晉の永嘉中、絳暈(かううん)子を制す。開元中、三妃以下、じて之れをせしむ。~出するに子を披(おほ)ふ。

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笥】ひし

筐。

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駟】ひし

驂。

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俟】ひし

獣の奮迅するさま。

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祀】ひし

つつしみ祀る。

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紫】ひし

あかむらさき。

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子】ひし

ひえのみ。

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】ひし

鳥獣の胃。

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【非】ひし

そしる。

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【誹】ひし

そしる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひし」の意味・わかりやすい解説

ヒシ
ひし / 菱
[学] Trapa japonica Flerov

ヒシ科(APG分類:ミソハギ科)の一年生水草。茎は長く伸び、節から羽状に細裂した根を対生する。葉は茎の頂に放射状に束生して対生し、水面に浮かぶ。葉身は菱(ひし)形で上縁に不整の歯牙(しが)があり、表面は無毛で光沢があり、裏面は柄とともに軟毛がある。柄は一部が海綿状に膨れて、浮き袋の役目をする。7~9月、長さ3センチメートルの花柄の先に白色で径1センチメートルの4弁花を開き、果実期に下向きになる。果実は菱形で、2枚の萼片(がくへん)は刺(とげ)となる。果実を食用や薬用とする。池沼に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。

 ヒシ科はヒシ属だけからなるか、ときにアカバナ科に含めることがある。アジア、アフリカ、ヨーロッパの熱帯、暖帯に30種あり、日本にはヒシ、ヒメビシが分布する。

[小林純子 2020年8月20日]

 APG分類ではヒシ科はミソハギ科に統合され、ヒシ科は消滅した。

[編集部 2020年8月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ひし」の意味・わかりやすい解説

ヒシ(菱)
ヒシ
Trapa japonica

ミソハギ科の水草で,アジア東部の温帯に広く分布する。日本では各地の池沼に自生する。泥中に根を張り,水深に応じて茎を伸ばし,上端は水面に達して多数の葉をつける。茎の節ごとに羽状に裂けた細い根を出す。葉は菱形半分の三角形で,鋸歯があり,表面は光沢がある。葉柄は多少ふくらんで浮力をもつ。夏に,葉の間に径 1cmほどの白花をつける。花弁,萼片ともに 4枚で,中心に黄色の花盤がある。花後,両側にとげのある核果をつける。種子は「菱の実」と呼んで食用とする。

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百科事典マイペディア 「ひし」の意味・わかりやすい解説

ヒシ(菱)【ヒシ】

ヒシ科の一年生水草。北海道〜九州,東アジアに分布。泥中に根があり,茎は長く,先端に葉が車座に集まってつく。葉柄は長く,一部が太くなって空気を入れ,浮袋の役をする。葉は菱形で鋸歯(きょし)があり,光沢がある。7〜9月,葉間から細長い柄をのばし,水面に径約1cmの白色の4弁花を開く。果実は扁平で,両端にはとげがあり,食用となる。近縁のヒメビシは日本特産で,葉や果実は小さく,果実には4本のとげがある。

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