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ヘス Hess, Moses

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ヘス
Hess, Moses

[生]1812.6.21. ボン
[没]1875.4.6. パリ
ユダヤ系ドイツ人の社会主義者。『ライン新聞』 Rheinische Zeitung (1841) の創設者,執筆者の一人。 1845年秋から翌年3月にかけてブリュッセルで K.マルクスと『ドイツ・イデオロギー』の共同作業に従事したが,やがてマルクスらと決裂。三月革命後パリにおもむき,49~52年スイスに亡命。 63年 F.ラサールと知合い,「全ドイツ労働者協会」のケルン代表となったが,ラサール派の妥協的態度に不満で,69年社会民主労働者党に移った。なおシオニストとしても知られ,彼がイタリア統一に影響されて著わした『ローマとエルサレム』 Rome and Jerusalem (62) は,シオニズム運動の理論的な教科書となっている。

ヘス
Hess, Rudolf

[生]1894.4.26. エジプト,アレキサンドリア
[没]1987.8.17. ベルリン
ナチス党幹部。第1次世界大戦に空軍士官として従軍。 1920年ナチス党員,23年ミュンヘン一揆に参加,のち A.ヒトラーとともにランツベルクで入獄中,『わが闘争』の口述筆記をした。 25年ナチス再建以後ヒトラーの秘書。第三帝国成立後の 33年4月総統代理,同年6月入閣。以後ヒトラーの側近となり,39年8月ヒトラーにより H.ゲーリングに次ぐ総統後継者に任命された。しかし特にすぐれた政治力もなく,ヒトラーに対する個人的忠誠によって党の第3の地位を占めたにすぎず,その後党内での影響力は衰退した。このため 41年5月 10日対ソ戦開始の直前,単身飛行機でスコットランドに飛び,イギリスとの妥協的交渉により対英戦争終結をはかる挙に及んだが失敗,捕虜となった。第2次世界大戦後ニュルンベルク裁判終身刑を宣告され,ベルリンのシュパンダウ刑務所で服役中に死亡。

ヘス
Hess, Victor Francis

[生]1883.6.24. ワルトシュタイン
[没]1964.12.17. マウントバーノン
オーストリア系のアメリカの物理学者。グラーツ大学で学び,1906年学位取得。ウィーン大学のラジウム研究所の助手などを経て,いったん渡米し,その後グラーツ大学教授 (1925) となる。 31年にインスブルック近郊の山の上に宇宙線観測所を設立したが,38年ナチスに追われてニューヨークのフォーダム大学教授となった。 11年頃から,箔検電器を積んだ気球を用いて,宇宙線の存在を確かめた。 36年 C.アンダーソンとともに宇宙線研究によりノーベル物理学賞を受賞した。

ヘス
Hess, Walter Rudolf

[生]1881.3.17. フラウエンフェルト
[没]1973.8.12. チューリヒ
スイスの生理学者。スイス,ドイツ各地の大学で学び,1906年チューリヒで学位を得たのち眼科医となったが,12年から生理学の研究に転じ,17~51年,チューリヒ大学教授兼生理学研究所所長。自律神経系の中枢が延髄と視床下部にあることを発見,ネコの視床下部の特定の部位を刺激すると,怒らせたり,食欲を増進させたりできることを証明した。脳の特定の部位が内臓の機能に果す役割を発見したことで,49年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

ヘス
Hess Corporation

アメリカ合衆国の石油会社。1969年にアメラダ・オイルとヘス・オイル・アンド・ケミカルが合併しアメラダ・ヘスとして設立。アメラダは 1920年に設立され,1941年アメラダ・オイルと改称。ヘス・オイル・アンド・ケミカルは 1930年代に暖房油販売会社として事業を始め,1966年にイギリス政府からアメラダ・オイルの 10%株式を取得した。アメリカ国内や北海で原油生産を拡大してきたが,2001年には西アフリカや南アメリカ,東南アジアに権益をもつトリトン・エネルギーを買収して生産地域を拡大した。2006年現社名に変更。アメリカ領バージン諸島にベネズエラ国営石油 PDVSAとの合弁で精製基地をもち,アメリカ東海岸を中心に石油製品を販売。

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デジタル大辞泉の解説

ヘス(Germain Henri Hess)

[1802~1850]スイスの化学者。ロシアのペテルブルグ大学教授。化学反応における熱総量を研究し、熱化学の発展に貢献。

ヘス(Victor Franz Hess)

[1883~1964]米国の物理学者オーストリアの生まれ。軽気球を用いて高空での放射線を観測・研究し、宇宙線研究の基礎を築いた。1936年ノーベル物理学賞受賞。

ヘス(Walter Rudolf Hess)

[1881~1973]スイスの生理学者。自律神経系を研究、間脳の調節機能を発見した。1949年ノーベル生理学医学賞受賞。

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百科事典マイペディアの解説

ヘス

ドイツの政治家。1921年ナチス入党ミュンヘン一揆(いっき)に参加。ヒトラーの秘書を経て副党首,閣僚となり,1939年ヒトラーの第2後継者に指名された。第2次大戦勃発(ぼっぱつ)後,1941年単身飛行機で渡英し和平交渉を試みて捕らわれ,戦後ニュルンベルク裁判で終身刑となり,シュパンダウ連合軍刑務所で服役中,自殺。

ヘス

オーストリア出身の米国の物理学者。1925年グラーツ大学教授。1938年ドイツ・オーストリア合併に際し大学を追われ渡米ニューヨークのフォードハム大学教授となり,1944年米国に帰化

ヘス

スイスの医者,生理学者。チューリヒ大学生理学研究所長。神経系について多くの研究があるが,大脳前頭葉の切除が,性格変換や神経痛の治療にも役立つことを発見。間脳の機能と内臓機能の共働に関する発見で1949年ノーベル生理医学賞。

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世界大百科事典 第2版の解説

ヘス【Moses Hess】

1812‐75
ドイツの初期社会主義者。ユダヤ人商人の子として生まれ,独学で哲学を修める。《人類の聖史》(1837)および《ヨーロッパ三頭政治》(1841)の2著において,ドイツにおける最初の社会主義思想を打ち出すとともに,ヘーゲル左派的な〈行為の哲学〉を展開した。また《ライン新聞》をはじめ多数の新聞雑誌に論説を寄稿し,〈哲学的共産主義〉の代表者として知られる。フォイエルバハの疎外論を社会経済の領域に適用した彼の理論は,一時期マルクスにも影響を与えた。

ヘス【Rudolf Hess】

1894‐1987
ナチ党(ナチス)の古参党員でヒトラーの側近。1924年,獄中のヒトラーの《わが闘争》の口述筆記の相手を務める。32年,党官房の長として〈指導者代理〉(〈第三帝国〉では〈総統代理〉),33年3月からはその資格で閣僚,さらにゲーリングにつぐヒトラーの〈第二後継者〉にも指名される。41年5月,独ソ戦を前にヒトラーの意をくんでイギリスに飛んで独英間の和解を図ったが失敗,ナチス側からは〈気違い〉扱いをされる。

ヘス【Victor Franz Hess】

1883‐1964
アメリカの物理学者。オーストリアの生れ。グラーツ大学で数学と物理学を学ぶ。1911年以降,気球を利用して密封した容器中の気体の電離現象を研究,高度の増加とともに電離される割合は減少するが,1000m以上になると増加し始め,5000mの高さでは地上における観測値の数倍になることを発見し,宇宙空間からやってくる高エネルギー放射線の存在を証明した。31年には,ロックフェラー財団などからの援助を受けて,インスブルック近くのハーフェレカー山(標高2300m)の山頂に宇宙線観測所を開設した。

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大辞林 第三版の解説

ヘス【Hess】

〔Germain Henri H.〕 (1802~1850) ロシアの化学者。スイス生まれ。化学反応における総熱量一定の法則を発見、熱化学の基礎を築く。 → ヘスの法則
〔Harry Hammond H.〕 (1906~1969) アメリカの地質学者。海洋底拡大説を提唱。
〔Victor Francis H.〕 (1883~1964) アメリカの物理学者。オーストリア生まれ。軽気球を上げて宇宙線を発見。

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世界大百科事典内のヘスの言及

【シオニズム】より

…またナポレオン1世は政治的・戦略的関心からこれに興味を寄せた。しかし,ユダヤ人国民国家の建設は,ヨーロッパにおける最後の民族問題の解決を意味すると考えた最初の思想家はモーゼス・ヘス(《ローマとエルサレム》1862)であった。 しかし,この思想が具体的に組織されたかたちをとるにいたったのは,19世紀末ロシアにおいてである。…

【ヘーゲル学派】より

…しかし,その人間観にはバウアーの〈自己意識〉,フォイエルバハの〈感性的人間〉,マルクスの〈社会的人間〉それぞれの間に対立があり,市民ジャーナリズムの形成と時を同じくして激しい論争が交わされた。M.ヘスエンゲルス,マルクスがドイツを去り,1848年の市民革命が挫折すると,シュトラウス,バウアーはドイツの国民主義に傾斜していき,前者はニーチェの激しい批判を浴びる。この国民主義を土台に,ラサール派が誕生し,マルクスの社会主義と対立を生み論争点のいくつかはマルクス主義対ファシズムという形でひきつがれた。…

【宇宙線】より

…磁気単極子などは未確認である。
[宇宙線の発見と研究の歴史]
 1912年オーストリアのV.F.ヘスは,気球に載せた検電器で約1km上空の放射線の検出を行い,宇宙から強力な放射線がきていることを発見した。宇宙線と名付けられたこの放射線は異常に高いエネルギーをもつので,その本質の解明と発生のなぞを解くことが新しい物理学と天文学の発展につながるものとして盛んに研究が行われた。…

※「ヘス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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