デジタル大辞泉 「ホットスポット」の意味・読み・例文・類語
ホット‐スポット(hot spot)
2 人気のある場所。現在、注目されている施設や場所。流行の盛り場。
3 マントル内部の特別な高温部。マグマを発生し続け、その上で火山活動が起きていると考えられる場所。ハワイ島はその典型。
4 原子力発電所の爆発事故の際に、点状に生じる放射能汚染の激しい地域。
5 機械の内部などにある熱だまり。
6 (hotspot)⇒
7 (hotspot)生物多様性が高いにもかかわらず、生態系破壊の危機に
翻訳|hot spot
ハワイ諸島のようにプレート内部の孤立した地点で起こっている火成活動のこと。マントル深部(もしかするとマントル核境界)から,風のない時に線香やタバコの煙がまっすぐ上に立ち上るように,重力に逆らって線状に上る熱的上昇流(マントルプリュームmantle plume)によって海底リソスフェアのごく狭い地点が熱せられてとけ,マグマ溜りを生ずるためであると考えられる。マントルプリュームの径は数km以下で,長さは100kmをこえ1000kmにもおよぶこともあるらしいが,そのような上昇流がマントルにおいて熱的に安定なことは理論的にも示されている。
ホットスポットは1億年近くにもわたってほとんど同じ地点で活動を続ける性質がある。その上をリソスフェアが移動すると,ホットスポットの軌跡が火山島または海山の列として残る。ハワイ諸島ではキラウェアなどの活火山をもつハワイ島から西北西に向かって3500kmほど島やサンゴ礁や海山の列が続く。島や海山をつくる海山の列はキラウェア火山からの距離が遠くなるほど年代が古くなる。また遠い島ほど激しい浸食をうけ,ミッドウェーのような環礁になり,ついに海山の列となる。海山列は東経175°付近で北北西に向きをかえ,天皇海山列へとつながる。天皇海山列の岩石の年代はやはりキラウェア火山からの距離にほぼ比例して古くなる。最北端の明治海山の生成年代は約7000万年前である。海山列が西北西から北北西へ向きをかえる点の年代は約4200万年前である。それ以前は太平洋プレートは北北西に移動していたのに,この時に急に移動の向きを西北西にかえたことがわかる。ホットスポットが1点に止まっている限り,こうして求められたプレート運動はマントル深部に対する絶対運動であり,プレート相互間の相対運動ではない。
現在北緯45°に位置する推古海山から掘削船グローマー・チャレンジャー号によって掘削された岩石の自然残留磁気の伏角は,この海山が北緯25°付近でできたことを示した。推古海山がつくられた5900万年前から現在までの間に太平洋の海底はこの間に緯度にして20°分だけ北上したことになる。ハワイ島は北緯約20°に位置するから,ホットスポット自身も約6000万年間に緯度にして5°ほど南下したことを示す。
ホットスポットは大西洋にも,アイスランド,アゾレス,トリスタン・ダ・クーニャ,ブーベなどの火山島をつくっている。これらはほとんど中央海嶺中軸上に位置している。大西洋拡大以前から存在したこれらのホットスポットの活動が大西洋の分裂をうながしたとの考えもある。また,これらの延長上の陸上にも南西アフリカの環状岩脈群Ring Dyke Complex,南アメリカ,パラナ盆地の台地玄武岩,南アメリカ,パタゴニアのジュラ紀火山岩類や,東部グリーンランドのスケアガード貫入岩体などが存在する。インドのデカン高原の玄武岩もホットスポット起源だとする考えもある。
執筆者:小林 和男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(金谷俊秀 ライター / 2011年)
(斎藤靖二 神奈川県立生命の星・地球博物館館長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
エネルギーや化学物質が特別に高い値を示したり、ときに犯罪が多発する地域など、さまざまな事象が周辺部よりも顕著に生じる特殊な地点や環境をいう。2011年(平成23)3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故が原因で放射性物質が飛散し、局地的に空間放射線量が高くなっている地点がホットスポットとよばれたことにより、広く使われるようになった。
福島第一原子力発電所事故では、当初、放射性物質の発生源である発電所から同心円状の地域で放射能汚染が深刻化することが予想されたが、自治体などの調査から東日本の広い地域で局地的に高い放射線量を示す地点が次々と明らかになった。放射能汚染はヨウ素や特定のセシウムなどの放射性物質が空間に飛散して広がることによる。このとき、放射性物質は空気中のちりなどに付着し、風の影響で遠くへ運ばれ、雨や雪などが降れば、いっしょに地表へ落ちると考えられている。そのため、事故発生後数日間の発生源と天候の状態がとくに汚染と関係していることがわかり、放射性物質を帯びた雲による降雨があった発電所の北西方向の福島県の広い地域や、関東平野に点在する雨が降った地域などで高放射線量地点が確認された。さらに細かく放射線量を測定していくと、水が集まる排水溝や落ち葉が風で吹きだまる所、河川の一部分や下水処理施設など、風や雨水に含まれる放射性物質が集まってとどまる場所に、ホットスポットが生じていた。該当地域では放射性物質を洗い流す、あるいは、土壌ごと除去する方法で除染が行われている。
[編集部]
広い海盆の中にあって、マントルの奥深くからのマグマの熱流がちょうど大気中の竜巻のようにクラストを通って噴出している所。海洋地球物理学の用語。ハワイ島はホットスポットの上にできた火山島の典型である。1960年代から1970年代にかけて、アメリカのウィルソンやモルガンによって提唱された。この仮説の重要な点はプレートテクトニクス理論において、ホットスポットがマントル深部に固定した座標系を与え、プレート(板状岩石圏)の絶対運動を決めることにある。この説によれば、ハワイ諸島や大西洋のワルビス海嶺(かいれい)のように地震活動のない海嶺は、マントル深部に起源をもつマグマの上を海洋底拡大によるプレートが運動したためできた火山群である。これはハワイ諸島から天皇海山群に至る一連の海山群の年代配列でほぼ認められている。ホットスポットは世界で140か所もあるとする学者もあり、海洋底プレートの絶対運動の規準を与える可能性の一つとして注目を集めている。
なお、これと似た現象に海底の熱水鉱床があるが、これは大洋の中央海嶺などで海底の割れ目にしみ込んだ海水が海底近くの熱源で熱せられ噴き出してできたもので、ホットスポットとはその存在する場所、成因が異なる。
[半澤正男]
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…ハワイ海嶺から天皇海山列にいたる海山の成因は,マントルプリュームとプレート運動により説明される。地球表面にはアセノスフェアからたえず熱対流が上昇している地点(マントルプリュームまたはホットスポット)があり,ここでは常にマグマが生産され火山活動がおこっている。この上をプレートが通過するとこの地点の上には火山が生じ,通過したプレートの上には死火山,さらにはサンゴ礁,環礁,ギヨーなどが順々に残されていく。…
※「ホットスポット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」