三界(読み)さんがい

精選版 日本国語大辞典 「三界」の意味・読み・例文・類語

さん‐がい【三界】

[1] 〘名〙
① 仏語。いっさいの衆生の生死輪廻(しょうじりんね)する三種の迷いの世界。すなわち、欲界・色界(しきかい)無色界をいう。
※万葉(8C後)五・七九四右詩序文「四生起滅方夢皆空 三界漂流喩環不一レ息」
※平家(13C前)三「三界広しといへども、五尺の身置き所なし」
③ 仏語。過去・現在・未来の三世をいう。
④ 三つのさかい。三つの方角。
※海道記(1223頃)鎌倉遊覧「東西北の三界は高卑の山屏風の如くに立廻りて所を餝れり」
[2] 〘接尾〙
① 遠く離れた場所の意を表わす。くんだり。界隈(かいわい)。多くは地名に添えて用いる。「江戸三界」「京三界」「唐三界」「郭(くるわ)三界」「親許三界」など。
※浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)上「かりそめに江戸三がいへ往かんして、いつ戻らんすことじゃやら」
② ある語に添えて、その意味を強める。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「茶は土瓶で拵(こしらへ)りゃ、一日さんがい余る」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三界」の意味・わかりやすい解説

三界
さんがい

仏教の世界観で、生きとし生けるものが生死流転(るてん)する、苦しみ多き迷いの生存領域を、(1)欲界(よくかい)、(2)色界(しきかい)、(3)無色界(むしきかい)の3種に分類したものをいう。(1)欲界はもっとも下にあり、性欲・食欲・睡眠欲の三つの欲を有する生きものの住む領域である。ここには地獄(じごく)・餓鬼(がき)・畜生(ちくしょう)・修羅(しゅら)・人・天の6種の生存領域(六趣(ろくしゅ)、六道(ろくどう))があり、欲界の神々(天)を六欲天という。(2)色界は前記の三欲を離れた生きものの住む清らかな領域をいう。絶妙な物質(色)よりなる世界なので色界の名があり、四禅天に大別される。(3)無色界は最上の領域であり、物質をすべて離脱した高度に精神的な世界である。ここの最高処を有頂天(うちょうてん)(非想非非想処)と称する。

坂部 明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三界」の意味・わかりやすい解説

三界
さんがい

仏教の宇宙論で,人々がその中にいる迷いの世界を3種に分けたもの。欲界,色界,無色界の3種の世界。 (1) 欲界とは淫欲と食欲がある衆生の住む世界で,地獄,餓鬼,畜生,修羅,人,天の6種の世界のこと。 (2) 色界とは「物質的な世界」の意味で,淫欲と食欲の2欲を離れている衆生の住む世界。ここには清らかで純粋の物質だけがある。 (3) 無色界とは物質的なものから完全に離れた衆生の住む世界。そこには物質が全然存在しない。

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デジタル大辞泉 「三界」の意味・読み・例文・類語

さん‐がい【三界】

[名]仏語。
一切衆生しゅじょうが、生まれ、また死んで往来する世界。欲界色界無色界の三つの世界。
三千大千世界」の略。
過去・現在・未来の三世。
[接尾]
地名に付いて、遠く離れた所の意を表す。くんだり。「江戸三界」「唐三界
ある語に添えて意味を強める。
「茶は土瓶でこしらへりゃ、一日―余る」〈滑・浮世風呂・四〉
[類語]二世にせ他生三世

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世界大百科事典 第2版 「三界」の意味・わかりやすい解説

さんがい【三界】

仏教思想における世界の空間的構造。またその構造をもつ世界。サンスクリットでトリ・ダートゥtri‐dhātu。三界とは欲界kāma‐dhātu,色界rūpa‐dhātu,無色界ārūpa‐dhātuの三つの界をいう。色とは物質のことである。界と訳されるサンスクリットdhātu‐はもともと〈層stratum〉を意味する。三界のうち最下の層は欲界で,欲望にとらわれた生物のすむ領域である。これは地獄(の生物),餓鬼,畜生,人間,天(神のこと)の5種の生物の居住空間(五趣)からなる(五趣に阿修羅を加えたものを六道(ろくどう)という)。

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世界大百科事典内の三界の言及

【宇宙】より

…このような上界と下界とをつなぐものとして聖樹,巨木のほかに世界山があり,これらはともにまた世界の中心だと表象されていることも多い。世界が上界,中界,下界の垂直的な三界からなり,上界と下界はそれぞれ複数の層をなしているという考えは,内陸アジア,北アジアに広く分布しているが,この地域のシャーマンの太鼓面に描かれた宇宙像では,ふつう横線の上に上界,下に下界がとくに層位の区分なしに示されている。北アメリカ南西部の諸民族は地下に数層(ふつう4層)の世界があり,先祖はそれらを次々に上って地上に出たという。…

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