デジタル大辞泉
「下る」の意味・読み・例文・類語
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くだ・る【下・降】
- 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 基本的には、物や道、川などに沿って人や物がおりることをいう。
- ① 高い所から低い所へ移り動く。雨などが降ることや、涙が落ちることについてもいう。
- [初出の実例]「雨、昨日のゆふべよりくだり」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
- 「猿を聞て実に下る三声のなみだといへるも」(出典:俳諧・曠野(1689)員外)
- 「くるまやに代をつかはし車をくだりて」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉六)
- ② 川の上流から下流へ移動する。
- [初出の実例]「朝なぎに 梶引きのぼり 夕潮に 棹さし久太理(クダリ)」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三六〇)
- 「もがみ川のぼればくだるいなふねのいなにはあらずこの月ばかり〈みちのくうた〉」(出典:古今和歌集(905‐914)東歌・一〇九二)
- ③ 神仏などが地上におりてくる。
- [初出の実例]「不軽菩薩はくたれるかたちなり」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
- ④ 都から地方へ行く。
- [初出の実例]「あをによし 奈良の都ゆ おし照る 難波に久太里(クダリ)」(出典:万葉集(8C後)一九・四二四五)
- 「京よりくだりしときに、みな人、子どもなかりき」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月九日)
- ⑤ ( 内裏が都城の北にあったところから ) 京都の内で、南へ行く。
- [初出の実例]「大宮の大路よりくだり給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)春日詣)
- ⑥ 目上の人または、公から下げ渡される。下賜される。また、人がつかわされる。
- [初出の実例]「中務の宮御かはらけ取りて舞ひ給へり。右のおとどに参り給ふ〈略〉かくて御かはらけくだるほどに」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
- 「おほやけより使くだりて追ふに」(出典:更級日記(1059頃))
- ⑦ 命令、判決などが申し渡される。「判決がくだる」
- [初出の実例]「今もおほせの くだれるは〈壬生忠岑〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇三)
- ⑧ 運命などの、人の力ではどうしようもないものの力が働く。「天罰が下る」
- [初出の実例]「数年の後、突然、此の禍が降(クダ)ったのである」(出典:李陵(1943)〈中島敦〉二)
- ⑨ 程度、地位などが低くなる。低くて劣る。また、官途から民間へ、一般社会から刑務所へというように、低く見られる所に移る。「野(や)にくだる」
- [初出の実例]「それよりくだれる際は、みなさやうにぞある」(出典:枕草子(10C終)七四)
- 「或人情をいふとても、今日のさかしきくまぐま迄探り求め、西鶴が浅ましく下れる姿あり」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)故実)
- ⑩ ( 助動詞「り」「たり」などを伴って ) 場所などが、低い状態である。さがる。
- [初出の実例]「低み下(クタレ)る処有らば、填て平くべし」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
- 「富の来る事〈略〉水のくだれるに従ふがごとくなるべし」(出典:徒然草(1331頃)二一七)
- ⑪ 戦いで、相手に負けて従う。降参する。
- [初出の実例]「うてば必ず伏し、せむれば必ずくだる」(出典:平家物語(13C前)七)
- 「左馬頭基氏、武威を失ひ人望に背き、我が軍門に降(クダラ)るべき事」(出典:太平記(14C後)三六)
- ⑫ でしゃばらないで、ひかえめな態度をとる。けんそんする。へりくだる。
- [初出の実例]「謙恕(クダリなだめ)温慈(やはらきうつくしひます)」(出典:日本書紀(720)仁賢即位前(図書寮本訓))
- 「ただ朝夕おのれを謹み人に下(クダ)り」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉九三)
- ⑬ ある時刻を過ぎる。時が移る。また、時がたって後の世・時代になる。→くだって。
- [初出の実例]「ひつじくだるほどに、南の寝殿に移りおはします」(出典:源氏物語(1001‐14頃)藤裏葉)
- 「其時に渡(わたらむ)としける仏法絶て不渡なりぬ。さてくだりて後漢には渡(わたる)也けり」(出典:打聞集(1134頃)尺迦如来験事)
- ⑭ つかえないですらすらと進む。
- [初出の実例]「詞つづきも哥めき、吟のくだりて理をつめず」(出典:正徹物語(1448‐50頃)下)
- ⑮ 下痢をする。
- [初出の実例]「巴豆(はづ)、大黄や牽牛子は、いづれも下る薬ぞかし」(出典:仮名草子・尤双紙(1632)下)
- ⑯ ある基準の数量より下になる。多く打消の表現を伴って、それ以上であることをいう。
- [初出の実例]「其期間は二个月を下ることを得ず」(出典:商法(明治三二年)(1899)七八条)
- 「別格聖書級(バイブルクラス)の二三を下(クダ)らぬ秀才として」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉一)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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