下る(読み)クダル

デジタル大辞泉 「下る」の意味・読み・例文・類語

くだ・る【下る/降る】

[動ラ五(四)]
上から下へ、高いところから低いところへ移る。⇔のぼる
下方へ向かって移動する。おりる。「坂を―・る」
川下の方へ進む。「船で川を―・る」

㋐中央から地方へ行く。「東海道を―・る」⇔のぼる
㋑《内裏が都の北にあったところから》京都の中で南に行く。
(「にくだる」の形で)官職をやめる。公の職務を離れて民間人になる。また、野党の立場になる。
(「ごくにくだる」の形で)牢獄に入って刑に服する。
「魚玄機が人を殺して獄に―・った」〈鴎外魚玄機

㋐高い地位の人から下げ渡される。下賜される。「恩賜金が―・る」
㋑判断や命令などが言い渡される。「判決が―・る」「辞令が―・る」
時、時代が移る。後世になる。「―・って明治御世みよになる」
(ふつう「降る」と書く)負けて降伏する。「敵の軍門に―・る」
(多く打消しの語を伴って用いる)ある基準の数値数量よりも下になる。下回る。「犠牲者は一千人を―・らないだろう」
程度・価値などが劣る。「数段―・る」「品が―・る」
「是れより―・っては、背皺せしわよると枕詞の付く『スコッチ』の背広」〈二葉亭浮雲
10
㋐薬などの作用によって体外へ出る。「虫が―・る」
㋑(「瀉る」とも書く)下痢をする。「腹が―・る」
11 涙が流れ出る。「声涙ともに―・る」
さるききじつに―・る三声のなみだ」〈曠野
12 雨などが降る。
「雨、昨日きのふ夕べより―・り」〈かげろふ・下〉
13 場所が低い状態である。
ひんがしのひさしの―・りたるかたに」〈椎本
14 へりくだる。謙遜する。
大人うしの―・り給ふこと甚し」〈読・雨月吉備津の釜〉
りる[用法]
[可能]くだれる
[下接句]軍門にくだ陣門に降る声涙ともに下る腹が下るに下る
[類語](7屈する伏する負ける破れる参る敗北する敗退する完敗する惨敗する大敗する惜敗するやられる土がつく一敗地にまみれる屈服するくじけるひざを屈する/(8割る割り込む下回る切る

お・る【下る/降る】

[動ラ上二]おりる」の文語形

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精選版 日本国語大辞典 「下る」の意味・読み・例文・類語

くだ・る【下・降】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 基本的には、物や道、川などに沿って人や物がおりることをいう。
  2. 高い所から低い所へ移り動く。雨などが降ることや、涙が落ちることについてもいう。
    1. [初出の実例]「雨、昨日のゆふべよりくだり」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
    2. 「猿を聞て実に下る三声のなみだといへるも」(出典:俳諧・曠野(1689)員外)
    3. 「くるまやに代をつかはし車をくだりて」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉六)
  3. 川の上流から下流へ移動する。
    1. [初出の実例]「朝なぎに 梶引きのぼり 夕潮に 棹さし久太理(クダリ)」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三六〇)
    2. 「もがみ川のぼればくだるいなふねのいなにはあらずこの月ばかり〈みちのくうた〉」(出典:古今和歌集(905‐914)東歌・一〇九二)
  4. 神仏などが地上におりてくる。
    1. [初出の実例]「不軽菩薩はくたれるかたちなり」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
  5. 都から地方へ行く。
    1. [初出の実例]「あをによし 奈良の都ゆ おし照る 難波に久太里(クダリ)」(出典:万葉集(8C後)一九・四二四五)
    2. 「京よりくだりしときに、みな人、子どもなかりき」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月九日)
  6. ( 内裏が都城の北にあったところから ) 京都の内で、南へ行く。
    1. [初出の実例]「大宮の大路よりくだり給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)春日詣)
  7. 目上の人または、公から下げ渡される。下賜される。また、人がつかわされる。
    1. [初出の実例]「中務の宮御かはらけ取りて舞ひ給へり。右のおとどに参り給ふ〈略〉かくて御かはらけくだるほどに」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
    2. 「おほやけより使くだりて追ふに」(出典:更級日記(1059頃))
  8. 命令、判決などが申し渡される。「判決がくだる」
    1. [初出の実例]「今もおほせの くだれるは〈壬生忠岑〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇三)
  9. 運命などの、人の力ではどうしようもないものの力が働く。「天罰が下る」
    1. [初出の実例]「数年の後、突然、此の禍が降(クダ)ったのである」(出典:李陵(1943)〈中島敦〉二)
  10. 程度、地位などが低くなる。低くて劣る。また、官途から民間へ、一般社会から刑務所へというように、低く見られる所に移る。「野(や)にくだる」
    1. [初出の実例]「それよりくだれる際は、みなさやうにぞある」(出典:枕草子(10C終)七四)
    2. 「或人情をいふとても、今日のさかしきくまぐま迄探り求め、西鶴が浅ましく下れる姿あり」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)故実)
  11. ( 助動詞「り」「たり」などを伴って ) 場所などが、低い状態である。さがる。
    1. [初出の実例]「低み下(クタレ)る処有らば、填て平くべし」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
    2. 「富の来る事〈略〉水のくだれるに従ふがごとくなるべし」(出典:徒然草(1331頃)二一七)
  12. 戦いで、相手に負けて従う。降参する。
    1. [初出の実例]「うてば必ず伏し、せむれば必ずくだる」(出典:平家物語(13C前)七)
    2. 「左馬頭基氏、武威を失ひ人望に背き、我が軍門に降(クダラ)るべき事」(出典:太平記(14C後)三六)
  13. でしゃばらないで、ひかえめな態度をとる。けんそんする。へりくだる。
    1. [初出の実例]「謙恕(クダリなだめ)温慈(やはらきうつくしひます)」(出典:日本書紀(720)仁賢即位前(図書寮本訓))
    2. 「ただ朝夕おのれを謹み人に下(クダ)り」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉九三)
  14. ある時刻を過ぎる。時が移る。また、時がたって後の世・時代になる。→くだって
    1. [初出の実例]「ひつじくだるほどに、南の寝殿に移りおはします」(出典:源氏物語(1001‐14頃)藤裏葉)
    2. 「其時に渡(わたらむ)としける仏法絶て不渡なりぬ。さてくだりて後漢には渡(わたる)也けり」(出典:打聞集(1134頃)尺迦如来験事)
  15. つかえないですらすらと進む。
    1. [初出の実例]「詞つづきも哥めき、吟のくだりて理をつめず」(出典:正徹物語(1448‐50頃)下)
  16. 下痢をする。
    1. [初出の実例]「巴豆(はづ)、大黄や牽牛子は、いづれも下る薬ぞかし」(出典:仮名草子・尤双紙(1632)下)
  17. ある基準の数量より下になる。多く打消の表現を伴って、それ以上であることをいう。
    1. [初出の実例]「其期間は二个月を下ることを得ず」(出典:商法(明治三二年)(1899)七八条)
    2. 「別格聖書級(バイブルクラス)の二三を下(クダ)らぬ秀才として」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉一)

お・る【下・降】

  1. 〘 自動詞 ラ行上二段活用 〙おりる(下)

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