仕掛(読み)シカケ

デジタル大辞泉 「仕掛」の意味・読み・例文・類語

し‐かけ【仕掛(け)/仕懸(け)】

相手にしかけること。先に攻撃などをすること。「敵の―を待つ」
目的のために巧みに工夫されたもの。
装置からくり。「自動的に閉まる―」「種も―もない」
策略。たくらみ。「まんまと―にはまる」「色―」
㋒釣りで、ねらう魚に応じて、糸・針・おもり・浮きなどを仕組んだもの。
物事をし始めて中途であること。やりかけ。「―の仕事を済ます」
仕掛け花火」の略。
もののやり方。手段。
「今の商売の―、世の偽りの問屋なり」〈浮・胸算用・一〉
食事などの用意。
流元ながしもとに明日の―してゐると」〈滑・膝栗毛発端
江戸時代、金貨銀貨銅貨換算相場をごまかすこと。
[類語](2㋐)機械機器機具器具利器装置機関からくりマシンメカニズム

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「仕掛」の意味・読み・例文・類語

し‐かけ【仕掛】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「しかける(仕掛)」の連用形名詞化 )
  2. 働きかけること。攻勢に出ること。また、そのしかた。
    1. [初出の実例]「将棊の上手は、敵味方馬之多少を勘がへ、或せんて、或しかけなどの宜しき行(てだて)出来ぬれば」(出典太閤記(1625)二一)
    2. 「弁慶は、かくぞとも白柄の長刀欄干に横たはし、しかけを待ば、牛若丸通りさまに長刀のゑもとをはっしとけあげたり」(出典:浄瑠璃・孕常盤(1710頃)一)
  3. 仕事に手をつけ始めること。また、し始めて中途であること。
    1. [初出の実例]「Shikakeno(シカケノ) シゴト」(出典:改正増補和英語林集成(1886))
  4. 作りこしらえた装置。また、特別な工夫をしてつくられたもの。しかけ物。
    1. [初出の実例]「難波は芝居大ぎゃうにして、京都舞台の仕掛(シカケ)ならば少くひかね可申候哉」(出典:評判記・難波立聞昔語(1686)市村四郎次)
    2. 「再三熟視なすにいたれば偶人師(にんぎょうつかい)の姿も見え、機関(シカケ)の工合もいとよく知られて」(出典:小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上)
  5. ものをつくりだすやり方。製法。つくり方。
    1. [初出の実例]「菓子、金餠糖(こんぺいとう)の仕掛(シカケ)、色々せんさくすれ共終に成がたく」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)五)
  6. 量目、品質、数、換算などをごまかすこと。
    1. [初出の実例]「銭の仕かけ銀(かね)のかる目もかまはず、拾ふた物の心ちして、手に握りながら門(かど)に走り出」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)五)
  7. 相手を自分の思いどおりにさせるやり方。うまいかけひき。だんどり。
    1. [初出の実例]「世之介はじめての遊女狂ひ、両人共に此善吉仕懸(シカケ)を見ならへと」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)四)
  8. 遊女が客をうまくあしらうこと。遊客の扱い方。てくだ。かけひき。
    1. [初出の実例]「友だちにあふ事のせんさく、其いひ分(わけ)・仕懸(シカケ)どの床(とこ)も替る事なし」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)三)
  9. 打掛(うちかけ)の称。江戸の遊里でいわれたが、遊女の着る小袖類をさしていうこともある。
    1. [初出の実例]「春、子ども屋から抱へにわたすしかけは、二袖二つづつさ」(出典:洒落本・古契三娼(1787))
    2. 「ちょんの間の幕で仕掛をねだり出し」(出典:雑俳・柳多留‐八四(1825))
  10. 炊事や、ふろなどの支度をすること。
    1. [初出の実例]「扨ても世話な、嫁御寮、是からしかけの伝授の段。素人の中(うち)真中へ、(しゃく)をかう立て見て、立った所が水かげん」(出典:浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)七)
  11. 店や家などの構え。規模。
    1. [初出の実例]「此宿の仕掛(シカケ)、面(おもて)住ゐなれ」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)六)
  12. 弓弦の部分の名。矢筈をあてる部分をいう。さぐり。
  13. 能楽で、両手を前に出すとともに右足を一歩出す型をいう語。
  14. 能楽で、囃子(はやし)の大鼓の手組の一つ。
  15. 魚を釣るための糸、針、錘(おもり)、浮(うき)などを仕組んだこしらえ。
    1. [初出の実例]「釣りの仕掛けをこしらえていた」(出典:試みの岸(1969‐72)〈小川国夫〉静南村)
  16. 将棋で、序盤の駒組が完了して戦いを開始すること。
  17. 穴あきの偽銭。銭さしなどに本物と混ぜ使用する。しかけぜに。
    1. [初出の実例]「高ひ物を買ふたと叱られふかと思ふて、銭はしかけでやりました」(出典:浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)中)
  18. しかけはなび(仕掛花火)」の略。

し‐かかり【仕掛】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「しかかる(仕掛)」の連用形の名詞化 ) 仕事に手をつけはじめること。また、しはじめて中途であること。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の仕掛の言及

【歌舞伎】より

…また,爽快でスピーディなテンポで行われる見世物的演出を劇の中で駆使し,奇抜な趣向を可能にした。たとえば《東海道四谷怪談》に見る提灯抜け,戸板返し,仏壇返し,忍び車など大道具の仕掛け,そのほか鬘や小道具の仕掛けを駆使している。だが,南北の才能も,個性の強烈な実力派の役者たちがいてこそ花開いたものである。…

【打掛】より

…袖丈は1m,身丈は約1.85m,身幅も大ぶりで量感があり裾と袖口に厚く綿(ふきわた)を入れて仕立て,裾を引いて着る。遊女の用いた打掛は仕掛(しかけ)と称し,絢爛豪華で歌舞伎衣装に残る。【山下 悦子】。…

※「仕掛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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