仕掛(け)/仕懸(け)(読み)シカケ

デジタル大辞泉の解説

し‐かけ【仕掛(け)/仕懸(け)】

相手にしかけること。先に攻撃などをすること。「敵の―を待つ」
目的のために巧みに工夫されたもの。
㋐装置。からくり。「自動的に閉まる―」「種も―もない」
㋑策略。たくらみ。「まんまと―にはまる」「色―」
㋒釣りで、ねらう魚に応じて、糸・針・おもり・浮きなどを仕組んだもの。
物事をし始めて中途であること。やりかけ。「―の仕事を済ます」
仕掛け花火」の略。
もののやり方。手段。
「今の商売の―、世の偽りの問屋なり」〈浮・胸算用・一〉
食事などの用意。
「流元(ながしもと)に明日の―してゐると」〈滑・膝栗毛・発端〉
江戸時代金貨銀貨銅貨の換算相場をごまかすこと。

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精選版 日本国語大辞典の解説

し‐かかり【仕掛】

〘名〙 (動詞「しかかる(仕掛)」の連用形の名詞化) 仕事に手をつけはじめること。また、しはじめて中途であること。

し‐かか・る【仕掛】

〘他ラ五(四)〙 (「し」はサ変動詞「する」の連用形の名詞化)
① しはじめる。とりかかる。しだす。
※日葡辞書(1603‐04)「カカル。〈略〉 Xicacatta(シカカッタ)〈訳〉し始めた」
② 仕事を中途までする。
※歌舞伎・お染久松色読販(1813)序幕「生中にひょんな仲人をしかかって、今ではどうやら聟殿へ気の毒半分」

し‐かけ【仕掛】

〘名〙 (動詞「しかける(仕掛)」の連用形の名詞化)
① 働きかけること。攻勢に出ること。また、そのしかた。
※太閤記(1625)二一「将棊の上手は、敵味方馬之多少を勘がへ、或せんて、或しかけなどの宜しき行(てだて)出来ぬれば」
※浄瑠璃・孕常盤(1710頃)一「弁慶は、かくぞとも白柄の長刀欄干に横たはし、しかけを待ば、牛若丸通りさまに長刀のゑもとをはっしとけあげたり」
② 仕事に手をつけ始めること。また、し始めて中途であること。
※改正増補和英語林集成(1886)「Shikakeno(シカケノ) シゴト」
③ 作りこしらえた装置。また、特別な工夫をしてつくられたもの。しかけ物。
※評判記・難波立聞昔語(1686)市村四郎次「難波は芝居大ぎゃうにして、京都舞台の仕掛(シカケ)ならば少くひかね可申候哉」
※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「再三熟視なすにいたれば偶人師(にんぎょうつかい)の姿も見え、機関(シカケ)の工合もいとよく知られて」
④ ものをつくりだすやり方。製法。つくり方。
浮世草子・日本永代蔵(1688)五「菓子、金餠糖(こんぺいとう)の仕掛(シカケ)、色々せんさくすれ共終に成がたく」
⑤ 量目、品質、数、換算などをごまかすこと。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)五「銭の仕かけ銀(かね)のかる目もかまはず、拾ふた物の心ちして、手に握りながら門(かど)に走り出」
⑥ 相手を自分の思いどおりにさせるやり方。うまいかけひき。だんどり。
※浮世草子・好色一代男(1682)四「世之介はじめての遊女狂ひ、両人共に此善吉仕懸(シカケ)を見ならへと」
⑦ 遊女が客をうまくあしらうこと。遊客の扱い方。てくだ。かけひき。
※浮世草子・好色一代男(1682)三「友だちにあふ事のせんさく、其いひ分(わけ)・仕懸(シカケ)どの床(とこ)も替る事なし」
⑧ 打掛(うちかけ)の称。江戸の遊里でいわれたが、遊女の着る小袖類をさしていうこともある。
※洒落本・古契三娼(1787)「春、子ども屋から抱へにわたすしかけは、二袖二つづつさ」
※雑俳・柳多留‐八四(1825)「ちょんの間の幕で仕掛をねだり出し」
⑨ 炊事や、ふろなどの支度をすること。
※浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)七「扨ても世話な、嫁御寮、是からしかけの伝授の段。素人の中(うち)は真中へ、(しゃく)をかう立て見て、立った所が水かげん」
⑩ 店や家などの構え。規模。
※浮世草子・好色一代女(1686)六「此宿の仕掛(シカケ)、面(おもて)住ゐなれ」
⑪ 弓弦の部分の名。矢筈をあてる部分をいう。さぐり。
⑫ 能楽で、両手を前に出すとともに右足を一歩出す型をいう語。
⑬ 能楽で、囃子(はやし)の大鼓の手組の一つ。
⑭ 魚を釣るための糸、針、錘(おもり)、浮(うき)などを仕組んだこしらえ。
※試みの岸(1969‐72)〈小川国夫〉静南村「釣りの仕掛けをこしらえていた」
⑮ 将棋で、序盤の駒組が完了して戦いを開始すること。
⑯ 穴あきの偽銭。銭さしなどに本物と混ぜ使用する。しかけぜに。
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)中「高ひ物を買ふたと叱られふかと思ふて、銭はしかけでやりました」

し‐か・ける【仕掛】

〘他カ下一〙 しか・く 〘他カ下二〙 (「し」はサ変動詞「する」の連用形)
[一] (「かける」は、覆うようにかぶせるの意)
① 物を用意して、それを他の物にかける。
※落窪(10C後)二「腹を立ちて、しかけたる衣どもも著ずて」
② 息を吹きかけたり、水を浴びせたりする。特に、尿などの汚物を相手にかける。かけてよごす。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「父君に尿(しと)(ふさ)にしかけつ」
※宇治拾遺(1221頃)三「息しかけなどして物くはす」
③ 煮たきするために、鍋、釜、やかんなどを、火の上に置く。火にかける。
※虎明本狂言・鱸庖丁(室町末‐近世初)「茶の湯にすいたれば、おくのまにしかけておいたが、いかにもりんりんりんと、たぎってある」
※浮世草子・好色貝合(1687)下「宿の女房は、鑵子(くんす)あらひて、茶をしかくれば」
④ 浴びせるように勢いよく飲む。ひっかける。
※洒落本・恵比良濃梅(1801)一「先いきやすめに一ッぱいしかけ、いきをひをつけんと、料理茶屋へづっとはいる」
[二] (「かける」は、動作や作用を相手に向ける意)
① 相手に対して、こちらから働きかける。行為をしむける。積極的に働きかける。
※枕(10C終)一四三「口をひき垂れて、『知らぬことよ』とて、さるがうしかくるに」
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初「きゃくにはなしをしかける」
② (①から転じて自動詞的に用いる) 強引に相手のところへ行く。押し掛ける。乗り込む。
※浮世草子・武道伝来記(1687)七「それより直に主膳屋形に仕掛(シカケ)案内申せば」
③ 相撲で、相手よりも先に技をかける。攻勢に出る。
④ 将棋で、序盤の駒組が完了して戦いを開始する。また、ある指し手に着手する。「千日手をしかける」
[三] (「かける」は設備する、設ける意)
① ある働きをさせるために、装置、工夫などを設けたり、準備をしたりする。しかけを作る。
※山上宗二記(1588‐90)「朝起、夜放し会朝は、寅一天より茶湯仕懸る也」
※くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉七「門柱に装置(シカ)けた電鈴の釦鉏(ボタン)を推しつつ」
② 相手を自分の考えにひき込むために、ある計画をする。たくらむ。
※浮世草子・好色一代男(1682)六「召連(めしつれ)の者、駕籠までも嵐ふく夜はわざとならぬ首尾に仕懸(シカケ)て」
③ 行儀、作法などを教え習わせる。しつける。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)五「随分厳敷(きびしく)(シ)かけても、大かたは母親ひとつになりて、ぬけ道をこしらへ」
④ 巧みに相手をごまかして扱う。相手をたくらみに乗せる。ごまかす。だます。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)五「油も壱升弐匁の折から弐匁三分に仕掛(シカケ)られ」
[四] (「かける」は、動作を始めそうになる。また、始めてその途中であるの意) 動作、作用をし始める。また、動作をし始めて、その途中である。
※太平記(14C後)二九「自害を半(なかば)にしかけて、路の傍に伏たりけるを」
※天草版金句集(1593)「Xicaqeta(シカケタ) コトノ スマヌ ウチニ マタ ベチノ ムツカシイ コトガ アル」
※三四郎(1908)〈夏目漱石〉三「もう帰らうと思って挨拶をしかける所へ」

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