(読み)コウ

デジタル大辞泉 「侯」の意味・読み・例文・類語

こう【侯】[漢字項目]

常用漢字] [音]コウ(漢)
封建時代の領主。大名。「王侯君侯諸侯・土侯・藩侯列侯
弓の的。「侯鵠こうこく
[名のり]きぬ・きみ・とき・よし

こう【侯】

大名・小名。諸侯。
「法にして―を失い現在の地位おとされて」〈中島敦李陵
五爵の第二位。侯爵

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精選版 日本国語大辞典 「侯」の意味・読み・例文・類語

こう【侯】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 大名や小名。諸侯。
    1. [初出の実例]「其ゑめる顔をみては〈略〉万戸の侯(コウ)を得たるが如く悦び」(出典太平記(14C後)二九)
    2. [その他の文献]〔易経‐屯卦〕
  3. 旧華族制度五等爵の第二位。ヨーロッパの貴族階級についても用いる。侯爵。
    1. [初出の実例]「バッキンハムの侯(コウ)となりける、英のジョウジ・ウビリヤアス」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)
    2. 「爵は公侯伯子男の五等とす」(出典:華族令(明治四〇年)(1907)二条)
    3. [その他の文献]〔孟子‐万章下〕
  4. 弓術で用いる的(まと)
    1. [初出の実例]「当御前少東射席西行三十六歩張第一侯」(出典:内裏式(833)十七日観射式)
    2. [その他の文献]〔儀礼‐郷射礼〕

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普及版 字通 「侯」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(異体字)
9画

[字音] コウ
[字訓] まと・うかがう

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
人+厂(かん)+矢。初形はに作り、屋下に矢を放って祓うこと、すなわち侯禳の儀礼を示す字である。〔説文五下に「は春に射る(まと)なり。人に從ひ、厂に從ふ。布を張りて、矢の其の下に在るに象る」とし、天子以下の射儀に及んでいる。卜辞にすでに「」の名がみえ、周初の〔大盂鼎(だいうてい)〕に殷の滅亡の因を論じて、「我聞くに、殷の(厥(そ)の)命を(おと)したるは、隹(こ)れ殷の邊甸と、殷の正百辟(氏族首長)と、ゐて酒に肄(なら)ひたればなり。故に師を喪(うしな)ひたるなり」とみえ、「邊甸」とは外服の諸侯をいう。侯とは、外服にあって、王朝のために外敵を侯禳することを職とするものであろう。のち公侯伯子男五等の爵制が行われ、その爵号となった。

[訓義]
1. まと、射のまと。
2. 矢を放ってはらう、邪気をはらう。
3. うかがう、邪気をうかがう、敵の動静をうかがう。
4. 外服にあって、外敵の様子をうかがい、はらう。
5. 外服にある諸侯、きみ。
6. 五等の爵の一。
7. 助詞、すなわち、ことに、これ。また、兮(けい)に通じ、終助詞

[古辞書の訓]
名義抄〕侯 キミ・コレ・シタガフ・イル 〔字鏡集〕侯 コトハ・キミ・ヨシ・ナンゾ・シタガフ・スナハチ・イル・コレ

[声系]
侯の初文は。のちに作る。〔説文〕に侯声として喉・・候など九字を収める。候は候望、侯と関連する行為を示し、候望して侯禳を行うのである。喉・は、みこむときの擬声語とみられる。

[熟語]
侯意侯衛侯王・侯亀・侯・侯国・侯氏・侯社・侯爵・侯禳・侯・侯甸・侯頭・侯道・侯波・侯伯・侯服・侯牧・侯門
[下接語]
王侯・干侯・坎侯・侯・君侯・群侯・建侯・懸侯・元侯・五侯・公侯・射侯・諸侯・大侯・張侯・徹侯・甸侯・藩侯・布侯・方侯・封侯・陽侯・列侯

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【爵位】より


[ヨーロッパ]
 古代ローマの貴族には,位階序列を表す称号はなく,ヨーロッパの爵位は,中世・近世においてその発達をみることができる。国と時代により差異はあるが,一般に知られている爵位は,公(デュークduke),侯(マーキスmarquis),伯(アールearl),子(バイカウントviscount),男(バロンbaron)の5位階である(かっこ内は英語)。これらのうち,公と伯の呼称が歴史的に見て最も古く,それぞれ古ゲルマンの軍事統率者であるドゥクスdux(ドイツ語はヘルツォーク,フランス語はデュクduc),フランク国王の統治権とりわけ裁判権を地方管区ごとに執行する役人としてのコメスcomes(ドイツ語はグラーフ,フランス語はコントcomte)とにさかのぼる。…

【封建】より

…封とは支配すべき領域の境界を定めること,建はその領域に国を建てること。周王は一族や功臣に領地とその住民を支配させて諸侯とし,諸侯を統制することによって全土を支配しようとした。その統制力は任命権と宗法とよばれる血縁関係によって保たれた。…

※「侯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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