デジタル大辞泉
「句」の意味・読み・例文・類語
く【句】
[名]
1 文中の言葉のひと区切り。
2 詩歌の構成上の単位。
㋐和歌・俳句などで、韻律上、5音または7音からなるひと区切り。また、その組み合わせでひとまとまりとなったもの。「上の句」
㋑漢詩で、4字・5字・7字などからなるひと区切り。
3 連歌・連句の発句。また、俳句。「句を詠む」
4 慣用句やことわざ。
5 言語単位の一。
㋐単語が連続して一つのまとまった意味を表し、文を形成するもの。また、それが文の一部分をなすもの。フレーズ。
㋑二つ以上の単語が連なって、あるまとまった意味を表し、一つの単語と似たような働きをなすもの。「副詞句」
㋒文の構成要素の一つで、一つの自立語、または、それに付属語のついたもの。文節。
[接尾]助数詞。連歌の各句や俳句などを数えるのに用いる。「一句浮かんだ」
[類語]フレーズ・語句・章句・字句・一字一句・熟語/(2)俳句・俳諧・十七文字
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
く【句】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 文章の中でひとまとまりをなしている、意味を持つことばのひと区切り。また、ことばのひとつづき。
- [初出の実例]「上古の時、言と意と並びに朴(すなほ)にして、文を敷き句を構ふること、字に即ち難し」(出典:古事記(712)序)
- 「甲野さんは句(ク)を切った。母は下を向いて答へない」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一九)
- [その他の文献]〔文心雕龍‐章句〕
- ② 詩歌の構成単位。
- (イ) 漢詩で、四字、五字または七字などをつづけたひとまとまり。
- [初出の実例]「ここら興あるくをおもしろき声に、多くの人誦する声にまじらず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
- [その他の文献]〔詩品‐総論〕
- (ロ) 和歌で、韻律上、五音節、七音節などで区切られたもの。
- [初出の実例]「かきつばたといふいつもじをくのかしらにすゑて」(出典:古今和歌集(905‐914)羇旅・四一〇・詞書)
- 「旋頭歌。三十一字に今一句を添へたる也。普通歌は五句、是は六句也」(出典:八雲御抄(1242頃)一)
- (ハ) 短歌、連歌などで、五七五、または、七七などの音節の組み合わせでまとめられるひと区切り。上の句、下の句、前句、付け句の類。
- [初出の実例]「いかにも前の句に思ひあはぬ句の出で来る折に」(出典:連理秘抄(1349))
- ③ 俳句。連句の発句をいう。
- [初出の実例]「季の言葉なし。雑の句といはんもあしからじ」(出典:俳諧・笈日記(1695)上)
- ④ 格言、または慣用句をいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- ⑤ 説いて聞かせることば。説明する事柄。
- [初出の実例]「その身うけの金の事にゃア、大ぶ句のある事さ」(出典:洒落本・遊婦里会談(1780))
- ⑥ 言語単位の一つ。
- (イ) 単語をつづって、ひとまとまりの思想を表わすもの。思想の言語的表現の最小のまとまり。学説によっては、主語、述語を備えたものとし、また、それが文の部分となっているものとする。
- [初出の実例]「Ikku(イック)〈訳〉一つの文」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
- (ロ) 二個以上の単語が続いて、一個の名詞または動詞、その他の単語と同様の働きをなすもの。〔日本俗語文典(1901)〕
- (ハ) 一個の自立語に助詞、助動詞を伴ったひとつづき。文節。
- ⑦ 平曲で、その語られる一章段。
- ⑧ 個々の単音を文(もん)、その文が連続して作られた事物の名称を名(みょう)といい、その名が連なってまとまった意を表わす章句を句という。「花は紅(くれない)」の類。また、能詮の教を句といい、所詮の理を義といい、合わせて句義という。〔倶舎論‐五〕〔金剛仙論‐一〕
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 連歌の各句や俳句などを数えるのに用いる。
- [初出の実例]「三句が内は可レ去レ病。四句五句がうちにも、同事は可二用意一」(出典:八雲御抄(1242頃)一)
- 「ただ此一句のみ『丈草、出来たり』との給ふ」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)先師評)
- ② 平曲の章段を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「椿一撿挍参。当時有二名望一堪能者也。則於二導場一平家三句申」(出典:看聞御記‐応永二三年(1416)六月八日)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
句
く
統語上の単位で、節よりも下位のもの。伝統的分類では、句は節と異なり、文の資格を備えた統語体を含まないものとされる。句は統語上の機能に応じて、名詞句、動詞句、形容詞句、副詞句の四つに分類されることが多い。名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞は単独でも句になりうるが、句は語連続からなるのが普通であり、一つの句が複数の句から構成されることも少なくない。たとえば、「赤い花」は、形容詞句「赤い」と名詞句「花」とがあわさった一つの名詞句である。
上記4種の句以外にも、句が認められる。「太郎は花子にダイヤの指輪をやった」の「花子に」は句であるが、これは副詞句とはいえない。これに対応する英語表現‘Taro gave a diamond ring to Hanako.’の‘to Hanako.’は前置詞句とよばれることがあるが、これは句の機能ではなく、句の構成要素の名に基づく名称である。これに倣うと、「花子に」は「助詞句」ということになるが、この名称は一般的ではない(国文法では、この種の句を「連用修飾語」とよぶことがある)。
以上の句と節とは、英文法でいうフレーズphraseとクローズclauseにほぼ対応する(英分法ではclauseを「主語、述語をもつ統語体」とし、それ以外をphraseとする)。なお、国文法では、句と節を以上とは逆の意味で使うことがある。また、生成文法では、文以外の任意の統語体を句とよび、節を含む構造、たとえば「彼が書いた本」などを名詞句とよぶので、注意を要する。
[山田 進]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
句 (く)
phrase
言語学の用語。単語が二つ以上つながったもので,全体としてまとまりを有するものをいう。ただし,従来通俗的には,そのようなもののうち,単語のあるもの(あるいはある品詞)と同じ機能を有するものをこう呼んできたようである。たとえば,名詞句(“a young lady”といったもの)とか動詞句といった呼び方が用いられている。もっとも,内部構造が文に類似しているものは〈節clause〉と呼ばれてきた。しかし,本質的にいうと,それと同じ機能を有する単語があるかどうかを句と呼ぶべきか否かの規準にすることも,内部構造の違いによって句,節といった区別をすることも問題がある。そうした単語連続が全体として統一性をもっているかどうかがまず最初の判断基準であり,また,統一性をもっている場合は,その全体としての文法的機能がどうであるのかが重要である。日本語では,従来はあまり句,節といった術語は用いられず,〈文節〉その他の用語が用いられてきた。
執筆者:湯川 恭敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
句【く】
文章中の一部分,一区切りで,言語学上は単語が二つ以上つながった,全体としてまとまりがあるものをいう。和歌,連俳,漢詩の用語としても用いられ,漢詩では5字または7字,和歌・俳諧では5音または7音を一区切りとしていう。和歌では上(かみ)の句,下(しも)の句と韻律上の区切りにも用い,俳句をそのまま略して句といい,1句2句と数えることもある。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
句
く
phrase
文法用語。言語単位の一つで,一般に,2つ以上の単語や付属形式が連結され,あるまとまった概念を表わし,そのままあるいは複合して文を構成するもの。英語では,2つ以上の単語がひとまとまりになって1個の単語 (いろいろの品詞に属する) に相当する作用をし,「主語+定動詞」を含まないもの。相当する品詞によって,名詞句 (例:how to swim) ,形容詞句 (water to drinkの to drink) ,副詞句 (at home) ,前置詞句 (in front of) ,接続詞句 (as well as) などに分けられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の句の言及
【段】より
…(1)雅楽では,近代では,1曲を章・節・段と細分したときの最小単位に用いる。これは文章の細目用語の応用で,楽章・楽節・楽段とも用い,そのまま洋楽のmovement,phrase,periodの訳語にも用いる。ただし楽段という訳語の用い方は場合によって一定していない。…
【シンタクス】より
… シンタクス上,まず留意されるのは語順すなわち[1]〈単語間の前後関係〉である。だが,実は,単語はただ1列に並んで文をなすわけではなく,ある連続した二つ(またはいくつか)の単語がまず密接に結びつき(これを[句]という),その全体がまた別の単語や句と結びついてさらに句を作る,というような関係が重なって一文をなしていると見られる。例えば,The boys have nice cars.という文は,(1) [[The boys] [have [nice cars]]]のような構造をなしている。…
※「句」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」