鶴林寺公園内にある。天台宗で刀田山と号する。本尊は薬師如来。西の法隆寺・
応永四年(一三九七)四月一五日には大講堂(本堂)が願主肥前阿闍梨覚芸らによって上棟され(本堂棟札)、同一三年四月二〇日に山王社の上棟が(行者堂棟札)、同一四年には鐘楼堂の修復がなされている(鐘楼木部銘)。
勝浦川流域より南の鶴林寺山(鶴ノ嶽)にある。高野山真言宗。山号は霊鷲山。本尊は地蔵菩薩。四国霊場八十八ヵ所の第二〇番札所で、御詠歌は「しけりつる鶴のはやしをしるへにて大師そいます地蔵帝釈」(四国遍礼道指南)。延暦一七年(七九八)空海が
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
兵庫県加古川市にある天台宗の寺。山号は刀田山(とださん)。〈刀田の太子〉と俗称され,揖保郡太子町の斑鳩寺(はんきゆうじ)の〈鵤(いかるが)の太子〉とともに,播磨の太子信仰を二分する。寺伝では,587年(用明天皇2)聖徳太子が秦河勝(はたのかわかつ)に命じて三間四面の精舎を建立,自作の釈迦三尊と四天王像を安置したのに始まり,718年(養老2)武蔵国大目身人部春則(みひとべのはるのり)が七堂伽藍を修造,刀田山四天王寺と号したという。747年(天平19)の〈法隆寺伽藍縁起幷流記資財帳〉および761年(天平宝字5)の〈法隆寺縁起資財帳〉に当寺の創建に関連するとされる記述がある。その後,852年(仁寿2)円仁(えんにん)が諸堂を修理して,法相宗から天台宗に改宗,鳥羽天皇の勅願寺となって宸筆の〈鶴林寺〉の扁額(重文)を賜ったという。しかし,現存最古の堂である太子堂は,1112年(天永3)に法華堂として建立されており,当寺の創建は平安中期をさかのぼらないとする説が有力である。寺のある賀古荘は京都青蓮院領で,青蓮院門主が四天王寺別当になることが多かったことから四天王寺との関係を強めて太子伝説が付会されたものらしく,その時期は法華堂が太子堂に改造される鎌倉時代のことらしい。当寺現存の文書記録は1263年(弘長3)の棟札,1268年(文永5)の寄進状を最古とするが,平安後期にはかなり壮大な大寺院であったことは確実で,鎌倉時代以後太子信仰と天台系念仏によって衆庶の崇仰を集めた。1580年(天正8)豊臣秀吉は寺領200石を寄進,江戸時代の朱印地は117石であった。戦国期に真言宗になったが,1660年(万治3)天台宗に復帰して日光輪王寺末寺となり,西園寺家とも関係が深かった。幕末になお8ヵ院の塔頭(たつちゆう)があったが,明治になって多く廃絶し,現在は真光院,宝生院,浄心院だけである。
執筆者:石田 善人
境内は南面する本堂(国宝,1397)と太子堂(国宝,1112)を中心に,重要文化財の常行堂(平安後期),行者堂(1406),鐘楼(1401),護摩堂(1563)などがある。本堂は桁行7間,梁間6間で,和様,禅宗様,大仏様の三つの様式を折衷した意匠になる。太子堂は一間四面前庇付の平面で平安時代末期の様式をもち,同時期の木造釈迦三尊を本尊とし,板壁に聖徳太子像などを描く。このほか《聖徳太子絵伝》8幅などの絵画,白鳳期の観音菩薩像(〈あいたた観音〉と俗称)などの彫刻,工芸品に重要文化財がある。
執筆者:益田 兼房
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
兵庫県加古川(かこがわ)市加古川町北在家(きたざいけ)にある天台宗の寺。刀田山聖霊院(とたさんしょうりょういん)と号する。通称刀田太子堂。「刀田の太子さん」「播磨(はりま)の法隆寺」といわれる。6世紀なかば、高句麗(こうくり)の僧恵便(えびん)が排仏の難を逃れてこの地に住していたところ、恵便の弟子聖徳太子がそれを聞いて開創、のち秦河勝(はたのかわかつ)に命じて堂を建立したのに始まるという。また、太子がこの地で百済(くだら)の日羅(にちら)と会い、その帰国を遮って刀を立てたことから刀田山というと伝える。奈良時代には法隆寺に属し、761年(天平宝字5)の『法隆寺縁起資財帳』に講法花経料として載る賀古郡一百町はこの地であるという。835年(承和2)円仁(えんにん)(慈覚(じかく)大師)が入唐(にっとう)に際し諸堂を修理して以来、天台宗となり、鳥羽(とば)天皇の勅願所となった。太子堂は様式上平安末期の建立、本堂は室町時代の建造で、いずれも国宝に指定されている。ほかに鐘楼、護摩(ごま)堂、行者堂、常行堂があり、絹本着色聖徳太子絵伝8幅、銅造聖観音(しょうかんのん)立像、木造釈迦(しゃか)三尊像などとともに国の重要文化財に指定されている。
[田村晃祐]
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