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中国近代の袁世凱系軍事集団の総称。北洋とは南洋にたいする語で,江蘇,山東,直隷(河北),遼寧の北方沿海諸省を包括する,清末に設けられた歴史地理区画である。直隷総督が兼任する北洋大臣がその地域での外国との交渉問題などを管轄した。かつて北洋常備軍ともいった新軍を北洋軍と簡称したことはあるが,北洋軍閥との呼称は民国以後のものである。それは袁世凱の新軍創建に起源し,新軍の拡充にともない,1905年(光緒31)には〈北洋6鎮(鎮は師団)〉を数えるにいたった。袁は新軍創建にあたり北洋武備学堂(李鴻章が1885年に天津に創立した兵学校)出身の段祺瑞,馮国璋らを抜擢した。かれらは実戦経験豊富な淮(わい)軍の旧式将領から軽視されてきたため,袁に恩義を感じて忠誠に励むこととなった。北洋6鎮は辛亥革命直前には全国の新軍の約3分の1にすぎなかったが,他の部隊が孤立分散的存在だったのにたいし,北洋系は袁を頂点とするピラミッド形の人脈集団を構成していたため,強固な勢力を誇りえたのである。なお,その軍事力としてはほかに北洋海軍(1875年創建,日清戦争後は振るわないが,海軍内の比重は大きい),警察(巡警),傍系の新軍,巡防営があった。
辛亥革命後,中華民国大総統となった袁世凱は〈北洋正統(北洋系こそ清朝の正統後継者)〉観念をふりかざして独裁を強化したが,その帰着点は悪名高い帝制だった。帝制とそれに反対する第三革命以後,北伐完成までの10余年間は南北分裂の時代である。非北洋系軍閥が広東など西南5省に割拠したのにたいし,北洋ないしその傍系の諸軍閥がそれ以外の大部分の地方を押えた。北京の中央政府は北洋系の最有力者の掌握するところとなり,戦国時代そのままの軍事力による争奪戦がくりひろげられた。ただ前近代の戦国乱世とちがうのは,半植民地の近代中国にあっては各軍閥の背後に帝国主義列強の支援があったことである。
袁の没後,まず中央政府を握ったのは日本に後押しされた段祺瑞の安徽派であるが,これは1920年夏の安直戦争で直隷派と奉天派の連合軍に敗れて政権を投げだした。直奉の連合もすぐ破れ,22年春には第1次奉直戦争が勃発,直隷派が勝利を収めた。しかし直隷派も,日本の後押しをうけた張作霖の奉天軍との24年秋の第2次奉直戦争において,自軍内部の馮玉祥の裏切りで敗れた。張馮の連合もすぐ破れ,26年春,形勢不利を悟った馮玉祥の国民軍が北京を退出するにおよび中央政府は張作霖の手中に帰した。そして国民革命軍の北伐に連戦連敗した張作霖が28年6月,満州へと逃げ帰って北洋軍閥の時代は終わるのであるが,さらにその子張学良が同年末に〈易幟(えきし)(中華民国政府の国旗五色旗をおろし,新しい国民政府の国旗青天白日旗を掲げること)〉を断行したことにより,北洋軍閥はいったん消滅し,新たに国民党軍閥の一部となるのである。
→軍閥
執筆者:狭間 直樹
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中華民国初期、袁世凱(えんせいがい)を源流とし、北京(ペキン)政権を形成した軍閥の総称。その政府を北洋政府、その時代(1913~28)を北洋時代ともいう。日清(にっしん)戦争(1894~95)の敗北後、袁世凱によって育成された北洋新軍が北洋軍閥の基盤となった。1911年の辛亥(しんがい)革命の成果を奪い、第二革命(1913)の武力弾圧による袁の独裁化に伴って北洋派の支配が確立された。袁の死(1916)後、北洋軍閥は直隷(ちょくれい)派、安徽(あんき)派に分裂し、それに北洋の傍系である奉天(ほうてん)派の三派を主軸に対立、抗争を深めていった。軍閥相互の勢力関係の変転は、帝国主義列強相互の利害対立抗争を反映したもので、国際政治の変動と密接に関係していた。軍閥の財政基盤は、外国の借款と農民からの収奪にあった。26年に始まる国民革命軍の北伐により北洋派は事実上崩壊した。
[南里知樹]
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
袁世凱(えんせいがい)の流れをくみ,北京の政権に参与した軍閥の総称。袁の率いる新軍(北洋軍)は袁の権力の基盤であったが,袁の死後,北洋軍閥は安徽(あんき)派,直隷派および傍系的存在である奉天派に分裂した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…ゆえに地盤争奪のための戦争は不可避とされ,中華民国の前半20年間に大小数千回の内戦があったとされる。 中華民国となって最初に中央権力を掌握したのは,淮軍の流れをくむ袁世凱の北洋軍閥である。北洋軍閥は華北・華中の要衝をおさえることにより,周辺の諸軍閥をしたがえたのである。…
※「北洋軍閥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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