十悪(読み)ジュウアク

デジタル大辞泉 「十悪」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐あく〔ジフ‐〕【十悪】

仏語。身・口・意の三業さんごうがつくる10種の罪悪。殺生偸盗ちゅうとう邪淫妄語綺語きご悪口あっく両舌貪欲とんよく瞋恚しんい邪見総称。十悪業。十不善業。→十善
古代中国で、特に重く罰せられた10種の罪。謀反むへん謀大逆謀叛むほん悪逆不道大不敬不孝・不睦・不義内乱の総称。

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精選版 日本国語大辞典 「十悪」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐あくジフ‥【十悪】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 大化前代、国家社会の秩序を乱すものとして、特に重く罰せられた一〇種の罪。謀反、謀大逆、謀叛、悪逆、不道、大不敬、不孝、不睦、不義、内乱の総称。中国の隋、唐の律によっている。〔唐六典‐尚書刑部〕
  3. 仏語。身、口、意の三業(さんごう)が作る一〇種の罪悪。すなわち、殺生(せっしょう)偸盗(ちゅうとう)・邪淫(じゃいん)の「身三」、妄語(もうご)・両舌(りょうぜつ)・悪口(あっく)綺語(きご)の「口四」、貪欲(とんよく)瞋恚(しんい)・邪見(じゃけん)の「意三」の総称。十悪業。
    1. [初出の実例]「離為十悪」(出典:勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章)
    2. [その他の文献]〔南斉書‐高逸伝論〕

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改訂新版 世界大百科事典 「十悪」の意味・わかりやすい解説

十悪 (じゅうあく)
Shí è

中国,隋・唐以後の律で,国家,社会の秩序を乱す罪としてとくに重く罰せられた〈謀反〉〈謀大逆〉〈謀叛〉〈悪逆〉〈不道〉〈大不敬〉〈不孝〉〈不睦〉〈不義〉〈内乱〉の総称。漢律にもすでに〈不道〉〈不敬〉といった名目があり,北斉律にいたって重罪十条という規定が設けられていた。ちなみに〈謀反〉というのが積極的に天子や国家に危害を加えようと謀ることであるのに対し,〈謀叛〉は消極的に正統なる現王朝から離脱して外国もしくは偽政権への寝返りを謀ること,〈悪逆〉とは祖父母父母をなぐり殺さんと謀ったり近親尊長を殺すこと,〈内乱〉とは近親相姦を指した。これら十悪は儒教倫理という価値基準に照らしてとくに指定されたわけで,十悪に該当する罪に対する刑罰は死刑とは限らなかったが,裁判や行刑を厳しくし,しばしば恩赦の対象から除外された。日本律では,十悪から〈不睦〉と〈内乱〉の名目を除いた八虐が掲げられている。
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普及版 字通 「十悪」の読み・字形・画数・意味

【十悪】じゆうあく

人の大悪、十。

字通「十」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の十悪の言及

【舌】より

…舌は再び生え,直ちに繰り返し抜かれる等の責苦にあうとされる。仏教でいう十悪のうち,うそをつく,二枚舌をつかう,悪口を言う,無駄口をたたくの四つが舌または口に関係し,《大集経》によれば阿弥陀仏はこの四つの過ちを犯さぬようにと広く長い舌(広長舌。長話をする意で使われる〈長広舌をふるう〉の長広舌はこれが転じたもの)を得た。…

【十善】より

…10種類の善行を総称した仏教用語。十悪に対する。十善業(じゆうぜんごう),十善道(じゆうぜんどう),十善業道(じゆうぜんごうどう)などともいう。…

【罪】より

… 仏教における罪は法(ダルマ)にそむく行為,戒律に反する行為であり,その代表的なものが〈五逆〉ないし〈五逆罪〉である。すなわち(1)母を殺すこと,(2)父を殺すこと,(3)僧(阿羅漢)を殺すこと,(4)仏の身体を傷つけること,(5)教団の和合一致を破壊することの5種の罪をいい,無間(むげん)地獄に堕ちる罪であるから〈五無間業(ごむげんごう)〉ともいうが,これは基本的には同じ仏教でいう〈五悪〉(または〈十悪〉)や,キリスト教でいう〈七大罪seven deadly sins〉などと同じく道徳的規範に反する罪悪に属する。ところがのちになると,人間存在そのものが罪に覆われたものであるとの自覚があらわれ,それが極楽や地獄などの他界観や応報思想と結びついて浄土教的な罪業観が生じた。…

【八虐】より

…したがって八虐に当たる罪に対する刑罰がすべて重いとは限らない。日本律の八虐は,唐律の十悪を模したものであるが,十悪の不睦に当たる罪の大半を不道に移し,また十悪の内乱に当たる罪の一部を不孝に加えて,唐律の不睦,内乱を削って八虐としたものである。八虐の法的効果は,八虐の罪を犯すと,六議(ろくぎ)に当たる者,高級官吏,およびそれらの親族に許される議・請・減の特典が剝奪されること,有位者は除名に処せられること,八虐による死罪は,老親の扶養の問題を顧慮されることなく刑を執行されること,また悪逆以上による死罪は,時節にかかわらず直ちに執行されること,恩赦にあっても,悪逆はゆるされず,謀反,大逆はなお近流に処せられること等である。…

※「十悪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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