山口県南部の市。2003年4月新南陽(しんなんよう)市,徳山(とくやま)市と鹿野(かの)町,熊毛(くまげ)町が合体して成立した。人口14万9487(2010)。
周南市北部の旧町。旧都濃(つの)郡所属。人口4520(2000)。中国山地にあり,中央を錦川が南流する。鹿野盆地にある中心地の鹿野上は,萩へ通じる山代街道が通じており,江戸時代以降市場町として発達した。山林が町域の大部分を占める林業地帯で,シイタケ,エノキタケ,ワサビの栽培が盛んであり,梨,桃の栽培も行われる。漢陽寺の境内には潮音洞と呼ばれる約300年前に作られた水洞があり,せき止められた渋川の水がこれをくぐりぬけて,段丘上の水田をうるおしている。町の中央を中国自動車道が通じ,鹿野インターチェンジがある。
周南市南東部の旧町。旧熊毛郡所属。人口1万6038(2000)。北部は烏帽子岳などの山地や八代盆地からなり,南部は周南丘陵が広がる。古くから開けた地で,島田川中流には弥生時代の高地性集落として知られる天王遺跡,岡山遺跡,石光遺跡がある。中心集落の呼坂(よびさか)は古代山陽道の周防駅の所在地に比定され,近世は山陽道の宿駅として発達し本陣,脇本陣が置かれた。島田川沿いの低地では米作,野菜栽培,八代盆地ではハウス園芸,梨,ブドウの栽培が行われている。近年,周南工業整備特別地域に含まれ,機械,電子,縫製の工場が進出している。島田川畔には国民温泉の三丘(みつお)温泉があり,八代はナベヅルの飛来地として,特別天然記念物に指定されている。JR岩徳線が通り,山陽自動車道の熊毛インターチェンジがある。
執筆者:清水 康厚
周南市西部の旧市で,瀬戸内海西部の徳山湾に臨む重工業都市。1970年市制。人口3万2153(2000)。富田(とんだ)川河口の小平野を占める旧富田町は,古くから瀬戸内海沿岸の交通要地に当たり,古代の富田郷の地で,山陽道の平野駅が置かれた。中世は東大寺領であった。夜市(やじ)川河口の旧福川町は漁港で,近世には富田とともに山陽道に沿う宿駅,市場町として栄えた。また近世以降盛んに干拓地の開発が進められ,第2次大戦前まで製塩業地としても知られた。現在ではかつての干拓地や埋立地にトクヤマ,日新製鋼,徳山石油化学(現,昭和電工),東ソー,保土谷化学などの工場が立地し,周南石油化学コンビナートの一環をなす。自動化操車場をもつJR新南陽駅は県下の山陽本線で最大の貨物量を扱っている。旧徳山市をはさんで北方に位置する飛び地の旧和田村はシイタケ,ワサビ,茶を産する山間農村で,有効貯水容量1960万m3の島地川ダムがある。
周南市中西部の旧市で,徳山湾に臨む商工業都市。1935年市制。人口10万4672(2000)。1949年,新南陽市にあたる地区を分離したため市域の中央部を失い,ドーナツ状の市域をもつが,面積は339km2で県下第2の広域都市であった。市街地の主要部は栄谷(さかえだに)地区から徳山湾岸にひろがる狭い東川扇状地の上に発達している。沿岸部をJR山陽本線と国道2号が通り,山陽新幹線の徳山駅が設置され,特定重要港湾徳山下松(くだまつ)港をもつ交通の要地を占める。また内陸部を通って岩国に至るJR岩徳線が分岐し,山陽自動車道のインターチェンジがある。1905年海軍煉炭所(のちの燃料厰)の開設によって工業が興り,第1次大戦以降徳山曹達,徳山鉄板(現,日新製鋼),日本精蠟などの大工場が設置され,第2次大戦前すでに重化学工業都市として発展をみた。戦災で市街地の80%を焼失したが,新都市計画によって復興を遂げ,軍用地跡に出光興産の製油所が設置されて,次々に沿岸埋立地に関連工場が進出し,巨大な石油化学コンビナートが成立した。工業製品出荷額が県下第1の工業都市に成長し,商業活動も近年著しく伸び,販売額が下関市・宇部市に次ぐ第3の商業都市となった。人口も1950年(7万8713人)以降年々増加し,市街地の東方の丘陵地225haをきりひらいて西日本屈指のマンモス住宅団地周南団地が形成された。風光にすぐれた徳山湾を囲む大島半島の太華山(362m)や黒髪島は瀬戸内海国立公園の一部をなし,第2次大戦中特殊潜航艇(人間魚雷〈回天〉)基地のあった大津島には回天記念館がある。
執筆者:三浦 肇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
山口県中東部にある市。2003年(平成15)徳山市、新南陽市(しんなんようし)、熊毛町(くまげちょう)、鹿野町(かのちょう)が合併して成立。北部を島根県に接し、南部は瀬戸内海に望む広域市で、面積は656.29平方キロメートル。海岸線に沿って工業地帯が立地し、下松(くだまつ)市、光市にかけての徳山下松港は国際拠点港湾。北部に丘陵地帯が広がり、島根県境の山間地には農山村が散在する。瀬戸内海の大津島(おおづしま)、黒髪島(くろかみじま)も市域に含み、大島半島の太華(たいか)山などとともに瀬戸内海国立公園の一部をなす。JR山陽本線、国道2号、東海道・山陽新幹線、山陽自動車道がほぼ並行して走る。ほかにJR岩徳(がんとく)線、国道315号、376号、434号、489号、中国自動車道が通る。美術博物館、郷土美術資料館、徳山動物園などの文化施設がある。八代(やしろ)のツル(ナベヅル)およびその渡来地は国の特別天然記念物に、飛龍八幡宮(ひりゅうはちまんぐう)にある樹齢1200年余りの大玉スギは国の天然記念物に指定されている。三丘(みつお)、湯野(ゆの)、呼鶴(よびづる)、石船などの温泉もある。人口13万7540(2020)。
[編集部]
『『誕生周南市』(2003・周南市)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…これらの多くが臨海の装置型工業であるため,関連産業が少なく,したがって地域への波及効果が低い体質をもっている。工業の分布は地域的に偏り,内海沿岸に全県の事業所の60%(1994),出荷額の93%が集中し,なかでも徳山市,新南陽市,下松市,光市を含む周南地区が,事業所数は15%であるが,出荷額では39%を占めている。近年,宇部・小野田地区の埋立地に新しく石油化学工業,防府地区の塩田跡地に自動車工業が進出し,下関市長府の海岸埋立地にも新工業団地が形成されつつある。…
※「周南」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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